教材研究ラボ
3年生の教室で、男性の先生が手元のペンを持ち上げながら、子どもの机の上のペンを指さしている。子どもたちは興味深そうに見つめ、一人が手を挙げている

国語3年単元「こそあど言葉」

国語国語・3年・こそあど言葉

こそあど言葉 ― 「近い・遠い」の使い分けから、文章の中で指すものを見つける力へ

3年「こそあど言葉」の教材研究。こ・そ・あ・どの体系と、話し手・聞き手からの距離による使い分け、目の前の物を指す使い方と文章の中で前の内容を指す使い方の違いを整理し、2時間の授業の組み立て・発問・つまずき・板書計画・特別支援の視点をまとめる。

作成

目次
  1. 1. 単元の位置づけ
  2. 学習指導要領のねらい
  3. 系統
  4. 2. 教材の本質
  5. 2-1. 知っているのに説明できない言葉
  6. 2-2. こそあど言葉の体系と、距離による使い分け
  7. 2-3. 目の前を指す使い方と、文章の中で指す使い方
  8. 2-4. 指すものの見つけ方
  9. 2-5. こそあど言葉のよさ
  10. 3. 単元計画(例)
  11. 4. 授業の展開
  12. 第1時:先生の言葉から、こそあどのひみつを見つける
  13. 第2時:文章の中のこそあど言葉が指すものを見つける
  14. 5. 発問集
  15. 6. 想定されるつまずきと手立て
  16. 7. 評価規準(例)
  17. 8. 板書計画
  18. 9. 特別支援の視点
  19. 10. 実践に向けたメモ

1. 単元の位置づけ

学習指導要領のねらい

小学校学習指導要領(平成29年告示)国語の第3学年及び第4学年〔知識及び技能〕(1)カに、「主語と述語との関係,修飾しゅうしょくと被修飾ひしゅうしょくとの関係,指示する語句と接続する語句の役割,段落の役割について理解すること」とある。

解説では、指示する語句を「物事を指し示す役割をもつ語句」とし、いわゆる「こ・そ・あ・ど言葉」がこれに当たると説明している。指示する語句を適切に使うと、文や文章をより簡潔に表したり、文と文との内容のつながりをはっきり示したりできる。また、「このようなことから」のように、複数の語でできた語句にも同じような働きをするものがあることから、「指示する語句」という示し方をしているとされる。

光村図書の3年上の教科書では、「こそあど言葉を使いこなそう」という言葉の単元として扱われている。配当時間や表の作り方は教科書と学校の年間計画で確かめる。ここでは2時間で計画する。

系統

学年 内容
1・2年 文の中の主語と述語との関係に気付く
3・4年 指示する語句と接続する語句の役割を理解する(本単元)。同じ(1)カで、段落の役割も学ぶ
5・6年 文と文との接続の関係、話や文章の構成や展開を理解する
中学1年 単語の類別とともに、指示する語句と接続する語句の役割について理解を深める

こそあど言葉の働きは、中学年以降の説明文の読みで、段落と段落のつながりをとらえるときに何度も使う。同じ(1)カにある接続する語句(つなぎ言葉)とも、文と文をつなぐ言葉として並べて扱える。

2. 教材の本質

2-1. 知っているのに説明できない言葉

多くの子は入学前から「これ取って」「あそこに行こう」と、こそあど言葉を日常的に使っている(使い分けや理解には差がある)。この単元の価値は、無意識に使っている言葉を見直し、「使える」を「仕組みが分かって使える」に引き上げることにある。こ・そ・あ・どの音の並びはきれいにそろっていて、表に整理すると体系が一目で見える。表が完成すること自体に、発見の楽しさがある。

2-2. こそあど言葉の体系と、距離による使い分け

観点 こ そ あ ど
物事 これ それ あれ どれ
場所 ここ そこ あそこ どこ
方向 こちら(こっち) そちら(そっち) あちら(あっち) どちら(どっち)
様子 こんな そんな あんな どんな
名前の前に付く この その あの どの

教科書によって、観点の名前や、「こう・そう・ああ・どう」を表に入れるかどうかが違う。授業では使う教科書の表に合わせる。

こそあど言葉の使い分けを、向かい合った場面の例で示した図。左に話し手、右に向かい合う聞き手がいる。話し手のすぐ近くの物は「これ」、聞き手のすぐ近くの物は「それ」、二人から離れた遠くの物は「あれ」と矢印で示されている。下には、指すものをたずねるときなどに「どれ」を使い、「どれ?」と聞かれたら「これ」と答えられることが添えられている

  • こ:話し手に近いもの
  • そ:聞き手に近いもの
  • あ:どちらからも遠いもの
  • ど:どれ・どこのように、指すものをたずねたり、まだはっきり決まっていないものを表したりするとき

話し手と聞き手が並んで同じ方を見ているときは、近いものを「こ」、少し離れたものを「そ」、遠いものを「あ」で指すこともある。授業では、まず向かい合った場面で確かめ、並んだ場面は、子どもから疑問が出たときなどに取り上げるとよい。

2-3. 目の前を指す使い方と、文章の中で指す使い方

こそあど言葉には、会話の場で目の前の物を指す使い方と、文章や話の中で前に出てきた内容を指す使い方がある。

目の前の物を指す 文章の中の内容を指す
例 「このペン、取って」 「公園で白い花を見つけました。それを家に持って帰りました」
手がかり 指さしや視線、位置 前に書かれた言葉
よく使う系列 こ・そ・あ・ど そ(こ も使う)

文章の中では、前に出た内容を「そ」で指すことが多い。書き手が自分の話題として示すときは「この」「これ」も使う。会話で「あの日のこと、覚えてる?」と言うときの「あ」は、話し手と聞き手が二人とも知っていることを指す。3年生では深入りせず、質問が出たら「二人とも知っていることを指すときに使う」と返すくらいでよい。

目の前の物を指すときは指さしが手がかりになるが、前に出た内容を指すときは言葉が手がかりになる。会話でも「昨日、花を買ったんだ。それを飾ったよ」のように前に話した内容を指すことがあり、文章ではこちらの使い方がほとんどになる。だから、言葉の中を探して指すものを見つける。この橋渡しが、2時間目の中心になる。

2-4. 指すものの見つけ方

前に出た内容を指すこそあど言葉は、次の手順で見つけられる。「これを持ってきてください。赤い鉛筆です」のように、後ろの文で指すものが分かる場合もあるが、2時間目ではまず、前に出た内容を指す例を扱う。

文章の中のこそあど言葉が指すものを見つける手順を示す図。例文「きのう、公園で白い花を見つけました。それを家に持って帰りました。」の「それ」から、前の文の「白い花」へ赤い矢印が戻っている。下に、1 こそあど言葉より前を探す、2 見つけた言葉をこそあど言葉のところに入れて読む、3 前後の内容と合えばよい、という手順が並ぶ。口で答えるなら「花」でも分かるが、書き抜くときは「白い花」まで書くと前の文と同じものを指していることがはっきりする、と添えられている

  1. こそあど言葉より前を探す
  2. 見つけた言葉を、こそあど言葉のところに入れて読む
  3. 入れて読み、前後の内容と合えば、それが指すもの

「それ」が何かを口で答えるなら、「花」でも理解できていると認めてよい。文章から書き抜く問題では、「白い花」のように、どこまでを書き抜くかを設問で示しておく。入れて読む確かめ方は、書き抜く範囲を考えるときにも役立つ。

指すものは、1つの言葉とは限らない。文全体や、段落の内容を指すこともある。この計画では、まず短い語句を指す例を扱い、教科書や子どもの理解に応じて、一文の内容を指す例も取り上げる。

2-5. こそあど言葉のよさ

「白い花を見つけました。白い花を家に持って帰りました。白い花を花びんにさしました」と、こそあど言葉を全部使わずに書くと、同じ言葉が繰り返されてくどくなる。こそあど言葉を使うと、同じ言葉を繰り返さずに、文と文のつながりをはっきりさせられる。これは書くことの学習にもつながる。一方で、指すものが遠すぎたり、何を指すか分かりにくくなったりするときは、こそあど言葉を使わずに書いたほうが読み手に親切なこともある。

3. 単元計画(例)

時 主な学習活動 押さえどころ
1 先生の実演からこそあど言葉に出会い、表に整理する。話し手・聞き手からの距離で使い分けていることを見つける 目の前の物を指す使い方。こ・そ・あ・どの規則と距離の使い分け
2 文章の中のこそあど言葉が指すものの見つけ方を考え、使ってみる 文章の中の内容を指す使い方。前を探す、入れて読んで確かめる。こそあど言葉のよさ

4. 授業の展開

第1時:先生の言葉から、こそあどのひみつを見つける

めあて:こそあど言葉のつかい分けのひみつを見つけよう

学習活動 予想される子どもの反応 教師の手立て
1. 先生の実演を見る(約5分)。自分のペンを持って「このペン、百円でした」、子どもの机のペンを指して「そのペン、取って」、遠くのペンを指して「あのペン、取って」 「このペン!」「そのペン!」「あのペン!」 1場面ごとに「先生、なんて言いました?」と聞き、板書に「この・その・あの」を残す
2. 遠くの同じ場所に何本もペンがある場面で「あのペン、取って」と言われる 「どのペン?」「どれ?」「赤いペン?」 「同じ場所に何本もあって、これだけでは伝わらないね。どう聞き返せばいいかな」と問う。出た聞き返しを認め、「どの」「どれ」を取り上げて板書する
3. 板書の4つの言葉を見て、気づいたことを言う 「最初の字が、こ・そ・あ・ど」 頭の文字に赤で丸を付けて読ませ、「こそあど言葉」という名前を教える
4. 表のなかまを集めて整理する(約15分) 「これ・それ」「ここ・そこ」「こっち」 出た言葉をカードにして並べ替え、行(物事・場所・方向・様子・名前の前に付く)と列(こ・そ・あ・ど)を一緒に見つける。導入の「この・その・あの・どの」も表に入れる。空いたマスを予想させる
5. ペンの場所と言葉の関係を振り返る 「先生の近くは『この』」「〇〇さんの近くは『その』」「二人とも遠いと『あの』」 実演した場面をその場で再現しながら整理する
6. こそあど言葉を使って、ペアで短い会話を作る(約10分) 「トイレはどこですか」「あちらです」 口頭だけでよい。いろいろな観点の言葉を使ったペアを発表に指名する

まとめ:こそあど言葉は、自分や相手とのきょりや、何をさすかによってつかい分ける。

第2時:文章の中のこそあど言葉が指すものを見つける

めあて:こそあど言葉がさすものの見つけ方を考えよう

学習活動 予想される子どもの反応 教師の手立て
1. 前時の表でこそあど言葉クイズをする 「先生の近くだから『これ』」 前時の表を掲示したまま使う
2. 例文「きのう、公園で白い花を見つけました。それを家に持って帰りました」を読み、「それ」が何かを考える 「白い花!」 答えが出ても「どうやって分かったの?」と見つけ方に焦点を移す
3. 見つけ方を一人で考え、ペアで言葉にし、全体で共有する(約12分) 「前に戻って探した」「入れて読むと分かる」 子どもの言葉をそのまま手順①②③として板書に残す
4. 練習問題で、指すものを見つける(約10分) 「『そこ』は図書館だ」 当てはめて読む確かめを全員で声に出して行う。書き抜く問題では、どこまでを書き抜くかを設問で示す
5. こそあど言葉を全部使わずに書き直した文と読み比べる 「同じ言葉ばかりでくどい」「すっきりする」 書き直した文を事前に用意しておき、実際に読み比べさせる
6. 繰り返しのある文を、こそあど言葉で書き直す(約8分) 「『公園に行きました。そこで』」 書き直した文を、指すものに戻して確かめさせる。時間が足りないときは、活動3と4を優先し、6は次の時間の初めに回す

まとめ:前に出たものをさすこそあど言葉は、前をさがして、入れて読んでたしかめる。こそあど言葉をつかうと、同じ言葉をくりかえさずにすむ。

5. 発問集

6. 想定されるつまずきと手立て

つまずき 考えられる背景 手立て
前に出たものを指す「それ」なのに、後ろの文から探す 指示語が前に出たものを指すことを意識していない 「それ」の多くは、もう出てきたものをもう一度言わなくてすむための言葉だと働きから説明し、まず前を探すことを板書に残す
見つけても勘で答え、確かめられない 確かめる方法を知らない 当てはめて読む確かめを手順として固定し、全員で声に出して行う
書き抜く問題で、範囲を取り違える どこまでを書き抜けばよいかがあいまい 設問で書き抜く範囲を示し、入れて読ませて「どこからどこまで入れると一番ぴったりか」と問う
「この」と「これ」の違いが分からない 後ろに名前が続くかどうかを意識していない 「この、取って」は言えるか、口で試させる。「これ、取って」との違いに気づかせる
「そ」の使い分けがあいまい 話し手と聞き手の両方の立場を同時に考えるのが難しい 子どもを話し手役・聞き手役として前に立たせ、物を動かしながら言葉が変わることを体で確かめる
目の前を指す使い方と、前に出た内容を指す使い方が、別のものに見える 手がかりの違いを意識していない 「目の前の物は指さしで分かるけれど、前に出た内容は指さしできない。だから言葉の中を探す」と橋渡しを言葉にする

7. 評価規準(例)

学習指導要領の内容を基に作成した例。この計画は〔知識及び技能〕(1)カを主な指導事項とし、評価規準を2つの観点に絞る。

観点 評価規準 見取る場面の例
知識・技能 指示する語句(こそあど言葉)の役割を理解し、文章の中の指示語が指す内容を見つけたり、話や文章の中で適切に使ったりしている 第1時の表の整理と会話づくり、第2時の練習問題と書き直し
主体的に学習に取り組む態度 進んでこそあど言葉の仕組みや役割を見つけようとし、学習課題に沿って使おうとしている 入れて読む確かめ方を使って答えを考え直す姿、相手に伝わるかを確かめて言葉を選ぶ姿(発言、ワークシート、振り返りの記述)

8. 板書計画

第1時

左:出会い 中央:表 右:ひみつとまとめ
この・その・あの・どの(頭の文字に赤丸) こ・そ・あ・どの列と、物事・場所・方向・様子・名前の前に付くの行の表(カードで作る) こ…自分に近い そ…相手に近い
めあて「こそあど言葉のつかい分けのひみつを見つけよう」 空いたマスを予想して埋める あ…どちらからも遠い ど…はっきりしない
まとめ:きょりや何をさすかで使い分ける

話し手・聞き手・物の位置を簡単な絵で添え、距離の使い分けを言葉と絵の両方で残す。表は模造紙で作っておくと、第2時や説明文の学習でも掲示できる。

第2時

左:例文 中央:見つけ方 右:よいところ
例文の「それ」から「白い花」へ、赤い矢印で前に戻る ① 前をさがす ② 入れて読む ③ 前後と合えば○ 同じ言葉をくりかえさなくてすむ → 文がすっきり
めあて「こそあど言葉がさすものの見つけ方を考えよう」 子どもの言葉で手順を書く 読み比べた文

9. 特別支援の視点

こそあど言葉だけでは、何を指すかを特定できないことが多く、場面や前後の言葉を手がかりにする必要がある。前の文の内容を覚えておきながら今の文を読み、戻って当てはめる操作に、負担を感じる子もいる。「これ」と「それ」が立場によって入れ替わる使い分けは、相手の視点に立って考えることが苦手な子には混乱のもとになることがある。困難の出方は一人一人違うので、その子がどこでつまずいているかを見て手立てを選ぶ。

困難の例 手立て
話し手・聞き手の立場を切り替えにくい 人物2人と物の位置を示したカードを手元に置き、物を動かしながら言葉を確かめる
戻って探す途中で注意がそれる 例文を1文ずつ短冊で示す。指で押さえながら前に戻る「指たどり」を、学級全体のやり方にする
文章を読むこと自体に負担がある 例文にふりがなを付け、文節ごとに区切った版を用意する。先生や友達の音読を聞いて考えてよいことにする
「指す」という考え方がつかみにくい 実物を「これ」「それ」と指し合う遊びを十分に行い、文章で扱う言葉を「これ・それ」に絞る

書いて答える方法に加えて、選択肢から選ぶ、線で結ぶ、口で言うといった答え方も同じように認める。答え方を変えても、役割の理解や、指すものを見つけ、使えるかという評価の対象はそろえる。手順をカードにして手元に置いておくと、毎回同じ手順で取り組めて安心しやすい。

10. 実践に向けたメモ

私は教育実習で、この単元の2時間を担当した。1時間目は、ペンの実演から「どのペン?」を子どもから引き出す導入を計画した。ただ、丸付けや辞書を使う場面の段取りを決めておらず、授業の流れが止まった。また、黒板に貼った模造紙に答えを書かせたときには、子どもが一斉に前に出て混雑した。2時間目は準備が足りず、指すものを前に戻って確かめるという、本時でいちばん押さえたいことを授業の中で押さえきれなかった。

次にこの単元を教えるときは、板書計画と一緒に「この1時間で必ず押さえること」を1枚に書き出してから授業に臨む。2時間目なら、例文の「それ」から前に矢印を引き、入れて読んで確かめる場面だけは、時間が押しても削らない。

参考:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編(文部科学省)第3章第2節「第3学年及び第4学年の内容」〔知識及び技能〕(1)カ