教材研究ラボ
夕方の山奥、すすきの揺れる林の中に建つ小さな西洋風の家の前で、狩りの服装をした二人の紳士がうれしそうに戸を指さしている。家の裏の暗がりに、光る猫の目がかすかに見える

国語5年単元「注文の多い料理店」

国語国語・5年・注文の多い料理店

注文の多い料理店 ― 「食べる客」が「料理」に変わる、言葉と構成のおもしろさを解説する

5年「注文の多い料理店」(宮沢賢治)の教材研究。戸の言葉が二通りに読める仕掛け、現実から不思議な世界へ入って戻る構成、反復・音・色・たとえの効果、二人の紳士の人物像を整理し、物語のおもしろさを解説する7時間の単元計画・第3時の展開・発問・つまずき・板書計画をまとめる。

作成

目次
  1. 1. 単元の位置づけ
  2. 学習指導要領のねらい
  3. 教材について
  4. 2. 教材の本質
  5. 2-1. 「食べる客」から「食べられる料理」へ
  6. 2-2. 戸の言葉が二通りに読める
  7. 2-3. 現実から不思議な世界へ入り、戻る構成
  8. 2-4. 表現の工夫と効果
  9. 2-5. 二人の紳士の人物像
  10. 2-6. 主題は一つに決めない
  11. 3. 単元計画(例)
  12. 4. 第3時の展開:戸の言葉を二つの立場から読む
  13. 5. 発問集
  14. 6. 想定されるつまずきと手立て
  15. 7. 評価規準(例)
  16. 8. 板書計画(第3時)
  17. 9. 特別支援の視点
  18. 10. 実践に向けたメモ

1. 単元の位置づけ

学習指導要領のねらい

小学校学習指導要領(平成29年告示)国語の第5学年及び第6学年では、次の指導事項が中心になる。

指導事項 本単元での具体
〔知識及び技能〕(1)ク「比喩ひゆや反復などの表現の工夫に気付くこと」 戸の言葉の二重の意味、反復、色、音を表す言葉、たとえを見つけ、その働きを考える
〔思考力、判断力、表現力等〕C 読むこと (1)エ「人物像や物語などの全体像を具体的に想像したり,表現の効果を考えたりすること」 離れた叙述を結び付けて二人の人物像と物語の構成をとらえ、表現が笑いや恐怖を生む効果を考える
言語活動例 C (2)イ「詩や物語,伝記などを読み,内容を説明したり,自分の生き方などについて考えたことを伝え合ったりする活動」 物語のおもしろさを、根拠を挙げて解説する文章にまとめ、読み合う

評価の中心はC(1)エに置く。解説文を書く活動は、どう読んだかを見取るための器として使う。読み合いの中では、C(1)オ(考えをまとめる)やカ(考えを広げる)に関わる活動も取り入れるが、文章の書き方そのものを評価するなら「書くこと」の指導事項を別に立て、時間を確保する。

東京書籍の5年の教科書では、物語のおもしろさを解説する単元の教材として載っている。単元名や配当時間は版によって違うので、使う教科書と年間計画で確かめる。ここでは7時間で計画する。

教材について

「注文の多い料理店」は宮沢賢治の童話で、1924年に刊行された同名の童話集の表題作である。山奥へ狩りに来た二人の若い紳士が道に迷い、「西洋料理店 山猫軒」に入る。扉を進むたびに注文が書かれていて、二人はそれを都合よく解釈しながら従ううちに、自分たちが料理される側だと気づく。犬に助けられて現実に戻るが、紙くずのようになった顔だけは元に戻らない。

この記事での本文の引用は青空文庫(新潮文庫を底本)による。教科書とは表記が違うところがあるので、授業では教科書の本文を使う。

2. 教材の本質

2-1. 「食べる客」から「食べられる料理」へ

この物語のいちばん大きな仕掛けは、二人の立場が反転することである。二人は狩る者、買う者、注文する者として山へ入る。山猫軒では、自分たちが値踏みされ、下ごしらえされ、食べられる側になっていく。

題名も同じ反転を抱えている。初めは「客からたくさん注文が来る、はやっている料理店」と読める。物語が進むと、「店のほうが客にたくさん注文する店」、さらに「客を料理にする店」という意味が前に出てくる。題名を「山猫軒」にしなかったことで、読み終えたあとに題名を読み返すおもしろさが生まれている。

2-2. 戸の言葉が二通りに読める

扉の言葉は、初めから山猫側のねらいどおりに書かれている。ところが二人は「自分たちは歓迎される客だ」という前提で読み、毎回自分たちに都合のよい意味に置き換える。結末を知って読み返すと、同じ言葉がまったく別の意味に見えてくる。

戸の言葉(青空文庫版から抜粋) 二人の解釈 結末まで読んでから読める意味
「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」 誰でも歓迎してくれる。「ただでご馳走するんだぜ」 どんな人間でもいいから、疑わずに奥へ入ってほしい
「ことに肥ふとったお方や若いお方は、大歓迎いたします」 若くて太った自分たちは、特によい客だ 若くて太った人間は、食べごたえのあるごちそうだ
「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」 客の注文が多い、はやっている店だ 店が二人に多くの注文を出す店だ
「壺つぼのなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」 外が寒く、部屋が暖かいので、ひびが切れないようにする予防だ 料理の下ごしらえ
「すぐたべられます。」(香水の注文と同じ戸に書かれた一文) 自分たちがすぐ食事にありつける 山猫が二人をすぐ食べられる

この表には、二種類の仕掛けが混ざっている。「注文の多い」「すぐたべられます」は、言葉そのものが二通りに読める例である。クリームを塗る注文は、言葉の意味ははっきりしているが、その目的を二人が「寒さでひびが切れないための予防」と取り違えている例である。酢のようなにおいがする香水についても、二人は「下女が風邪でも引いてまちがえた」と都合よく説明してしまう。どちらの仕掛けかを分けて考えると、二人がなぜ気づかなかったのかを説明しやすくなる。

注文は、店の奥へ進むにつれて、料理の準備らしさがはっきりしてくる。

山猫軒の戸の注文を、左から右へ本文の順に並べた図。入り口の「お入りください」「大歓迎」などの誘い込み、鉄砲や帽子、上着、金物を外させる身支度、クリームを塗らせる下ごしらえ、香水を振りかけさせる注文と続き、塩をもみ込むよう求められたところで二人は従わずにおかしいと気づく。最後の扉の鍵穴からは青い目玉がのぞき、声が聞こえる。上の帯には二人の解釈(親切な案内、店の決まり、寒さの予防、もうすぐ食事ができる)、下の帯には結末まで読んでから読める意味(奥へ誘い込む、食べにくい物を外させる、料理の下ごしらえ、味付け)が並んでいる

この仕掛けから、子どもは次のことを具体的に学べる。

  • 言葉の意味は、前後の文脈や読む人の立場によって変わる
  • 読み手の思い込みが、解釈を左右する
  • 伏線は、後の展開から読み返したときに働きが見える

授業では、二人の解釈と山猫側の意味のどちらかを正解として選ばせるより、同じ言葉がなぜ二通りに読めるのかを説明させたい。

2-3. 現実から不思議な世界へ入り、戻る構成

物語は、現実の山奥から不思議な山猫軒へ入り、再び現実に戻る。その前後には、同じ一文が二回置かれている。

風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。

一回目は、道に迷った二人の周りで風が吹く場面で、このあと空腹を訴える会話があって、ふと振り返ると山猫軒が建っている。二回目は、山猫軒が消えて二人が草の中に立ち、上着や財布が枝にぶら下がっているのを見たところで出てくる。同じ一文が山猫軒の出現の前と消えた後に置かれていることで、場面の境目を音で感じさせていると読める。ただし、どこからが不思議な世界かは一通りに決まらない。犬が倒れたこと、風の一文、山猫軒の出現など、どの叙述を境目と考えるかを根拠つきで比べること自体が、構成のおもしろさを考える活動になる。

物語の出来事を本文の順に左から並べた図。山奥での狩り、犬が倒れて帰り道が分からなくなる場面、一回目の風の一文、空腹の会話、山猫軒が現れる、扉と注文、犬が飛び込み店が消える、草の中に立ち持ち物が散らばっている、二回目の風の一文、猟師に会って東京へ帰る、と続く。山猫軒が現れてから消えるまでが不思議な世界として色付けされ、その左右の端は、境目の候補が複数あることを示す点線になっている。二つの風の一文が同じであることが線で結ばれ、最後に、顔だけは元に戻らないと添えられている

結末の一文、紙くずのようになった顔だけは「もうもとのとおりになおりませんでした」は、物語を完全な安心で閉じない。恐怖の跡が残ったのか、二人は何も変わっていないことへの皮肉なのか、読み手に考えさせる余白になっている。

2-4. 表現の工夫と効果

工夫 本文での現れ方 読み手への効果
反復 扉と注文が次々に現れる。後半では「がたがたがたがた」と震える 前半はリズムとおかしさを生み、後半は緊張と恐怖を強める
音を表す言葉 風、草、木の葉、木の音。「にゃあお、くゎあ、ごろごろ」 耳から場面を立ち上げ、不穏な空気や場面の変わり目を感じさせる
色 「白い瀬戸の煉瓦」の玄関、金文字、水いろの戸、黒い台、「立派な青い瀬戸の塩壺つぼ」など 二人が「実に立派なもん」と感じる店の豪華さを見せる。豪華な店の中で料理の準備が進むことが、ちぐはぐな不気味さを感じさせるとも読める
たとえ 冒頭の「イギリスの兵隊のかたち」「白熊のような犬」。恐怖の場面の「顔がまるでくしゃくしゃの紙屑のようになり」 冒頭では二人の姿をくっきりさせ、恐怖の場面では崩れていく様子を目に見えるようにする。冒頭と比べると、落差が大きく感じられる
会話の途切れ 「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」 説明しなくても、二人の心が崩れていく様子が伝わる
伏線 「肥ふとったお方や若いお方は、大歓迎」、店の名前と題名、扉の注文 初めは歓迎や案内に見えた言葉が、結末を知ると料理の準備を表していたと分かる。読み返したくなる

空腹は二人が判断を急ぐ理由として、犬が倒れて最後に戻ってくることは物語の不思議さとして、伏線とは分けて考えるとよい。

技法の名前とあわせて、その働きを言葉にさせる。「反復がある」で止めず、「注文が続くことで、読み手は二人と一緒に奥へ引き込まれ、だんだん逃げられなくなる怖さを感じる」のように、読み手への働きまで言葉にさせる。

2-5. 二人の紳士の人物像

二人の人物像は、離れた叙述を結び付けて考える必要がある。

本文の叙述 読み取れること
イギリスの兵隊のような格好で、ぴかぴかする鉄砲と白熊のような犬を連れている 高価な装備や犬を持つ、都会の裕福な若者と読める
「鹿の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞もうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ」 狩りを、動物の命より自分の楽しみとしてとらえている
犬が倒れると「二千四百円の損害だ」と言う 犬の死を、まず金銭の損失として語っている
「山鳥を拾円じゅうえんも買って帰ればいい」 獲物がとれなくても、買ってすませればよいと考えている
扉の言葉を毎回都合よく読み、互いにうなずき合う。「貴族とちかづきになるかも知れない」と期待する 思い込みが強く、えらい人に近づきたいという気持ちもある。二人で同調し合うので、立ち止まれない
帰り道に「十円だけ山鳥を買って」東京へ帰る 行動が変わったとは言い切れない

二人を「悪い人」「欲ばりだから罰を受けた」と読む子は多い。それも根拠のある読みだが、その読みだけで閉じると、言葉や構成のおもしろさが見えにくくなる。「顔が戻らないことは、二人への罰と読めるだろうか。ほかの読み方はできるだろうか」と問い、帰り道に山鳥を買う行動などと結び付けて、複数の読みを比べさせたい。

2-6. 主題は一つに決めない

この物語から何を受け取るかは、一つに固定しないほうがよい。

  • 動物の命を軽く扱う人間への皮肉
  • 自分に都合よく言葉を解釈することの怖さ
  • 見栄やお金を重んじる人への風刺
  • 食べる者と食べられる者の立場の入れ替わり

どの読みも、本文のどの叙述で支えられるかを示すことが条件になる。「作者が伝えたかったこと」を教師が先に一つに決めると、授業が答え合わせの叙述探しになってしまう。

3. 単元計画(例)

時 主な学習活動 押さえどころ
1 全文を読みながら、「変だ」「怖い」と最初に感じたところに印を付ける。読み終えてから、「おもしろい」と感じたところに線を引く。そのあと解説文の完成例を見て、単元の見通しをもつ 初読の驚きや疑問を、具体的な言葉と結び付けて記録する
2 新出漢字と語句(遠慮、当軒、承知など)を確かめ、場面の区切りを意識して音読する 読解の前提となる語句を、文脈に合わせて確かめる
3 あらすじをとらえ、戸の言葉を二人の解釈と山猫側の意味で比べる 同じ言葉が二通りに読める仕掛け(本時の例を後述)
4 物語をおもしろくしている表現の工夫を見つけ、読み手への効果を考える 反復・音・色・たとえ・会話の途切れ。工夫と効果を組にする
5 冒頭・山猫軒・結末の言動を比べて二人の人物像をとらえ、物語から受け取ったことを考える 顔だけが戻らない結末の意味。複数の読みを根拠で比べる
6 自分が選んだおもしろさを、根拠・工夫・効果・全体とのつながりで解説する文章にまとめ、少人数で説明し合う 交流を受けて加筆・修正する
7 解説文を読み合い、異なる見方や共通点を伝え合う。単元を振り返る 自分の読みがどう変わったか

解説文は、次の型を手がかりにすると書きやすい。

4. 第3時の展開:戸の言葉を二つの立場から読む

めあて:あらすじをつかみ、戸の言葉が二人と山猫側でどうちがって読めるか考えよう

学習活動 予想される子どもの反応 教師の手立て
1. 場面の絵(教師が用意した、物語の流れを表す4枚)を並べて見て、それぞれの出来事を隣同士で説明し、物語の大きな流れを確かめる(5分) 「山で道に迷った」「客だと思って入った」「注文に従った」「料理だと気づいて、犬に助けられた」 教師が先に筋を説明しない。「食べる側から食べられる側になった」という変化を子どもの言葉で引き出す
2. 誰が・どこで・何をして・どうなったかで、一・二文のあらすじにまとめる(3分) 「二人の紳士が山猫軒の注文を案内だと思って従ううちに、料理される側だと気づき、犬に助けられた」 完成度を競わせない。書けない子には4つの観点のカードを渡す
3. 最初の戸の言葉で、表の書き方を全体で確かめる(4分) 二人:「誰でも歓迎する親切な店」、山猫側:「疑わせずに奥へ誘い込む言葉」 二人の考えは直後の会話から、山猫側の意味は後の出来事から探すことを示す
4. 戸の言葉を一つ選び、一人で「二人の解釈/山猫側から読める意味/根拠」を書く(10分) 「若いお方は大歓迎=自分たちはよい客/食べごたえのあるごちそう」 全部の戸を扱わない。4つ程度に絞る。書く量より、二つの立場と根拠が分かれているかを見る
5. ペアで説明し合い、友達の根拠を色ペンで書き足す(6分) 「同じ意味だけど根拠が違った」 聞き手は「どの言葉や出来事からそう考えたの?」と一つだけ問う
6. 全体で比較表を完成させ、第1時に印を付けた「おかしい」と気づいた場所を付箋で示す(7分) 「後になるほど料理の準備だと分かる」「気づいた場所は人によって違う」「前に読んだことがあって、初めから知っていた」 気づいた早さを競わせない。気づいた根拠を価値付ける。物語を知っていた子には、どの言葉が初めて読む人を引っかけるかを考えさせる
7. 二人が気づきにくかった理由を考える(4分) 「客だと思い込んでいた」「おなかがすいていた」「言葉がていねいだった」「二人でうなずき合った」 「二人がおろかだから」で終わらせず、言葉の書き方の仕掛けにも目を向けさせる
8. 意味がいちばん変わった戸の言葉を一つ選び、二つの意味と根拠を書く(6分) 「『注文の多い』は客の注文だと思ったが、店から二人への注文だった。後で何度も指示が出るから」 個人の記述を本時の主な評価資料にする

まとめ:二人は、戸の言葉の意味や注文の目的を、客である自分たちに都合よく受け取っていた。結末から読み返すと、料理するための注文だったと読める。二通りに読めるところに、物語のおもしろさと怖さがある。

ここでいう「山猫側から読める意味」は、結末まで読んでから読み返すと見えてくる意味として扱い、教師が教える唯一の正解にはしない。

5. 発問集

6. 想定されるつまずきと手立て

つまずき 考えられる背景 手立て
あらすじは分かるが、工夫を見つけられない どこに目を向ければよいか分からない 「同じ言葉」「音が聞こえる言葉」「色」「たとえ」「後から意味が変わる言葉」の5つから探させる
技法の名前だけを書き、効果を説明できない 効果を言葉にする経験が少ない 「その言葉がなかったら?」「読み手はどう感じる?」の2つの問いで比べさせる
二人を「悪い人」と決めて終わる 一つの場面から判断している 冒頭・店の中・結末の三場面から根拠を一つずつ集め、変化があるかを考えさせる
戸の言葉の「本当の意味」を教師の答えとして待つ 正解を当てる課題だと思っている 三列の表で複数の読みを本文で比べる。根拠があれば読みを認める
不思議な世界の境目を一つに決められず、不安になる 答えが一つに決まるはずだと考えている どの叙述を境目と考えたかを説明する課題だと伝える
解説文が感想文になる 根拠と効果のつながりを書く型がない 「根拠―工夫―効果―全体」を色分けした型を使う
引用が長くなる どこまで抜き出せばよいか分からない 必要な語句だけを短く抜き出し、そのあとに自分の説明を書く手本を示す

7. 評価規準(例)

学習指導要領の内容を基に作成した例。

観点 評価規準 見取る場面の例
知識・技能 比喩ひゆや反復などの表現の工夫に気付いている 第4時の工夫カード、ノート
思考・判断・表現 「読むこと」において、人物像や物語の全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えたりしている 第3時の比較表と出口カード、第5時の人物像の比較、第6時の解説文
主体的に学習に取り組む態度 学習の見通しをもって表現の工夫を見つけ、交流で得た見方を基に、自分の根拠や説明を確かめ直そうとしている 交流を受けた解説文や振り返りの加筆・修正

思考・判断・表現の記述の見取りの例を示す。

  • おおむね満足できる:「『大歓迎』を、二人はよい客だから喜んだが、後から食べられるからだと分かって怖くなった」のように、叙述と読み手の感じ方を結び付けて書いている
  • 支援が必要:「怖かった」など感想だけで、叙述が挙がっていない。または叙述は挙げたが、読み手への効果が書けていない。前者には線を引いた言葉から一つ選ばせ、後者には「その言葉がなかったら、どう感じ方が変わる?」と問う

発言の回数や文章の長さは評価しない。根拠と効果のつながり、交流を受けて読みを見直したかを、ノートや解説文の書き直し、振り返りから見取る。

8. 板書計画(第3時)

国語の板書は縦書きなので、右端から書き始め、左へ進む。下の表も、右・中央・左の順に並べている。

第3時の板書のイメージ。縦書きで、右端に日付と題名、めあて「あらすじをつかみ、戸の言葉が二人と山猫側でどうちがって読めるか考えよう」。その左に、山・西洋館・鍵穴の目がのぞく戸・犬の4枚の場面の絵と、あらすじ。中央に、戸の言葉の短冊4本が右から本文の順に並び、それぞれの下に、二人の解釈、山猫側から読める意味、根拠が書かれ、短冊には子どもが気づいた位置の付箋が貼られている。左に「食べる客」から「食べられる料理」への矢印、二人が気づきにくかった理由、左端の黄色の枠にまとめ

右(書き始め):あらすじ 中央:戸の言葉の比較 左:まとめ
めあて 縦書きの戸の言葉の短冊を、右から本文の順に並べる。それぞれの短冊の下に「二人の解釈」「山猫側から読める意味」「根拠」を書く 食べる客 → 食べられる料理(反転)
4枚の場面の絵と一・二文のあらすじ 子どもが気づいた位置に付箋を貼る 二人が気づきにくかった理由
根拠となる叙述と解釈を線で結ぶ まとめ

戸の短冊を右から左へ本文の順に並べると、店の奥へ進むにつれて料理の準備らしさが増していく流れが、黒板を読み進める向きと重なって見える。技法の名前は、必ず読み手への効果と組にして残す。比較表は次の時間以降も使うので、模造紙にしておくとよい。

9. 特別支援の視点

この教材は、二つの立場を行き来しながら読むこと、離れた場面の叙述を結び付けること、答えが一つに決まらない問いを考えることを求める。それぞれに負担を感じる子がいる。困難の出方は一人一人違うので、その子がどこでつまずいているかを見て手立てを選ぶ。

困難の例 手立て
長い文章の中で今どこを読んでいるか分からなくなる 6つ程度の場面に分け、現在地を示す帯や付箋を使う。全文から探させず、扱う場面を絞る
読み書きに負担がある 範読や音声の読み上げを使う。引用は短冊を貼って使えるようにする
答えが一つに決まらない課題に不安を感じる 「本文の根拠があれば、複数の答えが成り立つ」と評価の条件をはっきり伝える
「効果」が抽象的で分かりにくい 「笑える」「変だと思う」「先を読みたくなる」「怖くなる」「後から意味が変わる」など、読み手の反応カードから選ばせる
二つの立場を同時に考えにくい 「二人の意味」と「山猫の意味」の二列だけに分けて考え、枠「初めは( )と思ったが、後から( )と分かった」で説明させる

書く、話す、カードを並べる、図で示すなど、考えの表し方を選べるようにし、評価の観点はそろえる。

10. 実践に向けたメモ

この物語のおもしろさは、読み手も二人と一緒にだまされかけるところにあると私は考える。初めて読む子の中には、途中で「あれ?」と思いながらも、二人と同じように先へ進んでしまう子もいるだろう。その「あれ?」と感じた瞬間を、第1時の初読のうちに印一つでいいから記録させておきたい。早く気づく子も、結末まで気づかない子も、すでに読んだことがある子もいる。単元の最後に、自分がどの戸で、どの言葉から気づいたのかを見返すと、それがそのまま解説文の根拠になる。

関連する読書として、同じ作者の「どんぐりと山猫」「雪渡り」などを並べて置くと、山猫や不思議な世界の描かれ方を比べる手がかりになる。

参考:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編(文部科学省)第3章第3節「第5学年及び第6学年の内容」〔知識及び技能〕(1)ク、〔思考力、判断力、表現力等〕C 読むこと (1)エ、(2)イ/宮沢賢治「注文の多い料理店」(青空文庫)