
注文の多い料理店 ― 「食べる客」が「料理」に変わる、言葉と構成のおもしろさを解説する
5年「注文の多い料理店」(宮沢賢治)の教材研究。戸の言葉が二通りに読める仕掛け、現実から不思議な世界へ入って戻る構成、反復・音・色・たとえの効果、二人の紳士の人物像を整理し、物語のおもしろさを解説する7時間の単元計画・第3時の展開・発問・つまずき・板書計画をまとめる。
作成
目次
1. 単元の位置づけ
学習指導要領のねらい
小学校学習指導要領(平成29年告示)国語の第5学年及び第6学年では、次の指導事項が中心になる。
| 指導事項 | 本単元での具体 |
|---|---|
| 〔知識及び技能〕(1)ク「比喩や反復などの表現の工夫に気付くこと」 | 戸の言葉の二重の意味、反復、色、音を表す言葉、たとえを見つけ、その働きを考える |
| 〔思考力、判断力、表現力等〕C 読むこと (1)エ「人物像や物語などの全体像を具体的に想像したり,表現の効果を考えたりすること」 | 離れた叙述を結び付けて二人の人物像と物語の構成をとらえ、表現が笑いや恐怖を生む効果を考える |
| 言語活動例 C (2)イ「詩や物語,伝記などを読み,内容を説明したり,自分の生き方などについて考えたことを伝え合ったりする活動」 | 物語のおもしろさを、根拠を挙げて解説する文章にまとめ、読み合う |
評価の中心はC(1)エに置く。解説文を書く活動は、どう読んだかを見取るための器として使う。読み合いの中では、C(1)オ(考えをまとめる)やカ(考えを広げる)に関わる活動も取り入れるが、文章の書き方そのものを評価するなら「書くこと」の指導事項を別に立て、時間を確保する。
東京書籍の5年の教科書では、物語のおもしろさを解説する単元の教材として載っている。単元名や配当時間は版によって違うので、使う教科書と年間計画で確かめる。ここでは7時間で計画する。
教材について
「注文の多い料理店」は宮沢賢治の童話で、1924年に刊行された同名の童話集の表題作である。山奥へ狩りに来た二人の若い紳士が道に迷い、「西洋料理店 山猫軒」に入る。扉を進むたびに注文が書かれていて、二人はそれを都合よく解釈しながら従ううちに、自分たちが料理される側だと気づく。犬に助けられて現実に戻るが、紙くずのようになった顔だけは元に戻らない。
この記事での本文の引用は青空文庫(新潮文庫を底本)による。教科書とは表記が違うところがあるので、授業では教科書の本文を使う。
2. 教材の本質
2-1. 「食べる客」から「食べられる料理」へ
この物語のいちばん大きな仕掛けは、二人の立場が反転することである。二人は狩る者、買う者、注文する者として山へ入る。山猫軒では、自分たちが値踏みされ、下ごしらえされ、食べられる側になっていく。
題名も同じ反転を抱えている。初めは「客からたくさん注文が来る、はやっている料理店」と読める。物語が進むと、「店のほうが客にたくさん注文する店」、さらに「客を料理にする店」という意味が前に出てくる。題名を「山猫軒」にしなかったことで、読み終えたあとに題名を読み返すおもしろさが生まれている。
2-2. 戸の言葉が二通りに読める
扉の言葉は、初めから山猫側のねらいどおりに書かれている。ところが二人は「自分たちは歓迎される客だ」という前提で読み、毎回自分たちに都合のよい意味に置き換える。結末を知って読み返すと、同じ言葉がまったく別の意味に見えてくる。
| 戸の言葉(青空文庫版から抜粋) | 二人の解釈 | 結末まで読んでから読める意味 |
|---|---|---|
| 「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」 | 誰でも歓迎してくれる。「ただでご馳走するんだぜ」 | どんな人間でもいいから、疑わずに奥へ入ってほしい |
| 「ことに肥ったお方や若いお方は、大歓迎いたします」 | 若くて太った自分たちは、特によい客だ | 若くて太った人間は、食べごたえのあるごちそうだ |
| 「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」 | 客の注文が多い、はやっている店だ | 店が二人に多くの注文を出す店だ |
| 「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」 | 外が寒く、部屋が暖かいので、ひびが切れないようにする予防だ | 料理の下ごしらえ |
| 「すぐたべられます。」(香水の注文と同じ戸に書かれた一文) | 自分たちがすぐ食事にありつける | 山猫が二人をすぐ食べられる |
この表には、二種類の仕掛けが混ざっている。「注文の多い」「すぐたべられます」は、言葉そのものが二通りに読める例である。クリームを塗る注文は、言葉の意味ははっきりしているが、その目的を二人が「寒さでひびが切れないための予防」と取り違えている例である。酢のようなにおいがする香水についても、二人は「下女が風邪でも引いてまちがえた」と都合よく説明してしまう。どちらの仕掛けかを分けて考えると、二人がなぜ気づかなかったのかを説明しやすくなる。
注文は、店の奥へ進むにつれて、料理の準備らしさがはっきりしてくる。
この仕掛けから、子どもは次のことを具体的に学べる。
- 言葉の意味は、前後の文脈や読む人の立場によって変わる
- 読み手の思い込みが、解釈を左右する
- 伏線は、後の展開から読み返したときに働きが見える
授業では、二人の解釈と山猫側の意味のどちらかを正解として選ばせるより、同じ言葉がなぜ二通りに読めるのかを説明させたい。
2-3. 現実から不思議な世界へ入り、戻る構成
物語は、現実の山奥から不思議な山猫軒へ入り、再び現実に戻る。その前後には、同じ一文が二回置かれている。
風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
一回目は、道に迷った二人の周りで風が吹く場面で、このあと空腹を訴える会話があって、ふと振り返ると山猫軒が建っている。二回目は、山猫軒が消えて二人が草の中に立ち、上着や財布が枝にぶら下がっているのを見たところで出てくる。同じ一文が山猫軒の出現の前と消えた後に置かれていることで、場面の境目を音で感じさせていると読める。ただし、どこからが不思議な世界かは一通りに決まらない。犬が倒れたこと、風の一文、山猫軒の出現など、どの叙述を境目と考えるかを根拠つきで比べること自体が、構成のおもしろさを考える活動になる。
結末の一文、紙くずのようになった顔だけは「もうもとのとおりになおりませんでした」は、物語を完全な安心で閉じない。恐怖の跡が残ったのか、二人は何も変わっていないことへの皮肉なのか、読み手に考えさせる余白になっている。
2-4. 表現の工夫と効果
| 工夫 | 本文での現れ方 | 読み手への効果 |
|---|---|---|
| 反復 | 扉と注文が次々に現れる。後半では「がたがたがたがた」と震える | 前半はリズムとおかしさを生み、後半は緊張と恐怖を強める |
| 音を表す言葉 | 風、草、木の葉、木の音。「にゃあお、くゎあ、ごろごろ」 | 耳から場面を立ち上げ、不穏な空気や場面の変わり目を感じさせる |
| 色 | 「白い瀬戸の煉瓦」の玄関、金文字、水いろの戸、黒い台、「立派な青い瀬戸の塩壺」など | 二人が「実に立派なもん」と感じる店の豪華さを見せる。豪華な店の中で料理の準備が進むことが、ちぐはぐな不気味さを感じさせるとも読める |
| たとえ | 冒頭の「イギリスの兵隊のかたち」「白熊のような犬」。恐怖の場面の「顔がまるでくしゃくしゃの紙屑のようになり」 | 冒頭では二人の姿をくっきりさせ、恐怖の場面では崩れていく様子を目に見えるようにする。冒頭と比べると、落差が大きく感じられる |
| 会話の途切れ | 「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」 | 説明しなくても、二人の心が崩れていく様子が伝わる |
| 伏線 | 「肥ったお方や若いお方は、大歓迎」、店の名前と題名、扉の注文 | 初めは歓迎や案内に見えた言葉が、結末を知ると料理の準備を表していたと分かる。読み返したくなる |
空腹は二人が判断を急ぐ理由として、犬が倒れて最後に戻ってくることは物語の不思議さとして、伏線とは分けて考えるとよい。
技法の名前とあわせて、その働きを言葉にさせる。「反復がある」で止めず、「注文が続くことで、読み手は二人と一緒に奥へ引き込まれ、だんだん逃げられなくなる怖さを感じる」のように、読み手への働きまで言葉にさせる。
2-5. 二人の紳士の人物像
二人の人物像は、離れた叙述を結び付けて考える必要がある。
| 本文の叙述 | 読み取れること |
|---|---|
| イギリスの兵隊のような格好で、ぴかぴかする鉄砲と白熊のような犬を連れている | 高価な装備や犬を持つ、都会の裕福な若者と読める |
| 「鹿の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞もうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ」 | 狩りを、動物の命より自分の楽しみとしてとらえている |
| 犬が倒れると「二千四百円の損害だ」と言う | 犬の死を、まず金銭の損失として語っている |
| 「山鳥を拾円も買って帰ればいい」 | 獲物がとれなくても、買ってすませればよいと考えている |
| 扉の言葉を毎回都合よく読み、互いにうなずき合う。「貴族とちかづきになるかも知れない」と期待する | 思い込みが強く、えらい人に近づきたいという気持ちもある。二人で同調し合うので、立ち止まれない |
| 帰り道に「十円だけ山鳥を買って」東京へ帰る | 行動が変わったとは言い切れない |
二人を「悪い人」「欲ばりだから罰を受けた」と読む子は多い。それも根拠のある読みだが、その読みだけで閉じると、言葉や構成のおもしろさが見えにくくなる。「顔が戻らないことは、二人への罰と読めるだろうか。ほかの読み方はできるだろうか」と問い、帰り道に山鳥を買う行動などと結び付けて、複数の読みを比べさせたい。
2-6. 主題は一つに決めない
この物語から何を受け取るかは、一つに固定しないほうがよい。
- 動物の命を軽く扱う人間への皮肉
- 自分に都合よく言葉を解釈することの怖さ
- 見栄やお金を重んじる人への風刺
- 食べる者と食べられる者の立場の入れ替わり
どの読みも、本文のどの叙述で支えられるかを示すことが条件になる。「作者が伝えたかったこと」を教師が先に一つに決めると、授業が答え合わせの叙述探しになってしまう。
3. 単元計画(例)
| 時 | 主な学習活動 | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 1 | 全文を読みながら、「変だ」「怖い」と最初に感じたところに印を付ける。読み終えてから、「おもしろい」と感じたところに線を引く。そのあと解説文の完成例を見て、単元の見通しをもつ | 初読の驚きや疑問を、具体的な言葉と結び付けて記録する |
| 2 | 新出漢字と語句(遠慮、当軒、承知など)を確かめ、場面の区切りを意識して音読する | 読解の前提となる語句を、文脈に合わせて確かめる |
| 3 | あらすじをとらえ、戸の言葉を二人の解釈と山猫側の意味で比べる | 同じ言葉が二通りに読める仕掛け(本時の例を後述) |
| 4 | 物語をおもしろくしている表現の工夫を見つけ、読み手への効果を考える | 反復・音・色・たとえ・会話の途切れ。工夫と効果を組にする |
| 5 | 冒頭・山猫軒・結末の言動を比べて二人の人物像をとらえ、物語から受け取ったことを考える | 顔だけが戻らない結末の意味。複数の読みを根拠で比べる |
| 6 | 自分が選んだおもしろさを、根拠・工夫・効果・全体とのつながりで解説する文章にまとめ、少人数で説明し合う | 交流を受けて加筆・修正する |
| 7 | 解説文を読み合い、異なる見方や共通点を伝え合う。単元を振り返る | 自分の読みがどう変わったか |
解説文は、次の型を手がかりにすると書きやすい。
4. 第3時の展開:戸の言葉を二つの立場から読む
めあて:あらすじをつかみ、戸の言葉が二人と山猫側でどうちがって読めるか考えよう
| 学習活動 | 予想される子どもの反応 | 教師の手立て |
|---|---|---|
| 1. 場面の絵(教師が用意した、物語の流れを表す4枚)を並べて見て、それぞれの出来事を隣同士で説明し、物語の大きな流れを確かめる(5分) | 「山で道に迷った」「客だと思って入った」「注文に従った」「料理だと気づいて、犬に助けられた」 | 教師が先に筋を説明しない。「食べる側から食べられる側になった」という変化を子どもの言葉で引き出す |
| 2. 誰が・どこで・何をして・どうなったかで、一・二文のあらすじにまとめる(3分) | 「二人の紳士が山猫軒の注文を案内だと思って従ううちに、料理される側だと気づき、犬に助けられた」 | 完成度を競わせない。書けない子には4つの観点のカードを渡す |
| 3. 最初の戸の言葉で、表の書き方を全体で確かめる(4分) | 二人:「誰でも歓迎する親切な店」、山猫側:「疑わせずに奥へ誘い込む言葉」 | 二人の考えは直後の会話から、山猫側の意味は後の出来事から探すことを示す |
| 4. 戸の言葉を一つ選び、一人で「二人の解釈/山猫側から読める意味/根拠」を書く(10分) | 「若いお方は大歓迎=自分たちはよい客/食べごたえのあるごちそう」 | 全部の戸を扱わない。4つ程度に絞る。書く量より、二つの立場と根拠が分かれているかを見る |
| 5. ペアで説明し合い、友達の根拠を色ペンで書き足す(6分) | 「同じ意味だけど根拠が違った」 | 聞き手は「どの言葉や出来事からそう考えたの?」と一つだけ問う |
| 6. 全体で比較表を完成させ、第1時に印を付けた「おかしい」と気づいた場所を付箋で示す(7分) | 「後になるほど料理の準備だと分かる」「気づいた場所は人によって違う」「前に読んだことがあって、初めから知っていた」 | 気づいた早さを競わせない。気づいた根拠を価値付ける。物語を知っていた子には、どの言葉が初めて読む人を引っかけるかを考えさせる |
| 7. 二人が気づきにくかった理由を考える(4分) | 「客だと思い込んでいた」「おなかがすいていた」「言葉がていねいだった」「二人でうなずき合った」 | 「二人がおろかだから」で終わらせず、言葉の書き方の仕掛けにも目を向けさせる |
| 8. 意味がいちばん変わった戸の言葉を一つ選び、二つの意味と根拠を書く(6分) | 「『注文の多い』は客の注文だと思ったが、店から二人への注文だった。後で何度も指示が出るから」 | 個人の記述を本時の主な評価資料にする |
まとめ:二人は、戸の言葉の意味や注文の目的を、客である自分たちに都合よく受け取っていた。結末から読み返すと、料理するための注文だったと読める。二通りに読めるところに、物語のおもしろさと怖さがある。
ここでいう「山猫側から読める意味」は、結末まで読んでから読み返すと見えてくる意味として扱い、教師が教える唯一の正解にはしない。
5. 発問集
6. 想定されるつまずきと手立て
| つまずき | 考えられる背景 | 手立て |
|---|---|---|
| あらすじは分かるが、工夫を見つけられない | どこに目を向ければよいか分からない | 「同じ言葉」「音が聞こえる言葉」「色」「たとえ」「後から意味が変わる言葉」の5つから探させる |
| 技法の名前だけを書き、効果を説明できない | 効果を言葉にする経験が少ない | 「その言葉がなかったら?」「読み手はどう感じる?」の2つの問いで比べさせる |
| 二人を「悪い人」と決めて終わる | 一つの場面から判断している | 冒頭・店の中・結末の三場面から根拠を一つずつ集め、変化があるかを考えさせる |
| 戸の言葉の「本当の意味」を教師の答えとして待つ | 正解を当てる課題だと思っている | 三列の表で複数の読みを本文で比べる。根拠があれば読みを認める |
| 不思議な世界の境目を一つに決められず、不安になる | 答えが一つに決まるはずだと考えている | どの叙述を境目と考えたかを説明する課題だと伝える |
| 解説文が感想文になる | 根拠と効果のつながりを書く型がない | 「根拠―工夫―効果―全体」を色分けした型を使う |
| 引用が長くなる | どこまで抜き出せばよいか分からない | 必要な語句だけを短く抜き出し、そのあとに自分の説明を書く手本を示す |
7. 評価規準(例)
学習指導要領の内容を基に作成した例。
| 観点 | 評価規準 | 見取る場面の例 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 比喩や反復などの表現の工夫に気付いている | 第4時の工夫カード、ノート |
| 思考・判断・表現 | 「読むこと」において、人物像や物語の全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えたりしている | 第3時の比較表と出口カード、第5時の人物像の比較、第6時の解説文 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 学習の見通しをもって表現の工夫を見つけ、交流で得た見方を基に、自分の根拠や説明を確かめ直そうとしている | 交流を受けた解説文や振り返りの加筆・修正 |
思考・判断・表現の記述の見取りの例を示す。
- おおむね満足できる:「『大歓迎』を、二人はよい客だから喜んだが、後から食べられるからだと分かって怖くなった」のように、叙述と読み手の感じ方を結び付けて書いている
- 支援が必要:「怖かった」など感想だけで、叙述が挙がっていない。または叙述は挙げたが、読み手への効果が書けていない。前者には線を引いた言葉から一つ選ばせ、後者には「その言葉がなかったら、どう感じ方が変わる?」と問う
発言の回数や文章の長さは評価しない。根拠と効果のつながり、交流を受けて読みを見直したかを、ノートや解説文の書き直し、振り返りから見取る。
8. 板書計画(第3時)
国語の板書は縦書きなので、右端から書き始め、左へ進む。下の表も、右・中央・左の順に並べている。
| 右(書き始め):あらすじ | 中央:戸の言葉の比較 | 左:まとめ |
|---|---|---|
| めあて | 縦書きの戸の言葉の短冊を、右から本文の順に並べる。それぞれの短冊の下に「二人の解釈」「山猫側から読める意味」「根拠」を書く | 食べる客 → 食べられる料理(反転) |
| 4枚の場面の絵と一・二文のあらすじ | 子どもが気づいた位置に付箋を貼る | 二人が気づきにくかった理由 |
| 根拠となる叙述と解釈を線で結ぶ | まとめ |
戸の短冊を右から左へ本文の順に並べると、店の奥へ進むにつれて料理の準備らしさが増していく流れが、黒板を読み進める向きと重なって見える。技法の名前は、必ず読み手への効果と組にして残す。比較表は次の時間以降も使うので、模造紙にしておくとよい。
9. 特別支援の視点
この教材は、二つの立場を行き来しながら読むこと、離れた場面の叙述を結び付けること、答えが一つに決まらない問いを考えることを求める。それぞれに負担を感じる子がいる。困難の出方は一人一人違うので、その子がどこでつまずいているかを見て手立てを選ぶ。
| 困難の例 | 手立て |
|---|---|
| 長い文章の中で今どこを読んでいるか分からなくなる | 6つ程度の場面に分け、現在地を示す帯や付箋を使う。全文から探させず、扱う場面を絞る |
| 読み書きに負担がある | 範読や音声の読み上げを使う。引用は短冊を貼って使えるようにする |
| 答えが一つに決まらない課題に不安を感じる | 「本文の根拠があれば、複数の答えが成り立つ」と評価の条件をはっきり伝える |
| 「効果」が抽象的で分かりにくい | 「笑える」「変だと思う」「先を読みたくなる」「怖くなる」「後から意味が変わる」など、読み手の反応カードから選ばせる |
| 二つの立場を同時に考えにくい | 「二人の意味」と「山猫の意味」の二列だけに分けて考え、枠「初めは( )と思ったが、後から( )と分かった」で説明させる |
書く、話す、カードを並べる、図で示すなど、考えの表し方を選べるようにし、評価の観点はそろえる。
10. 実践に向けたメモ
この物語のおもしろさは、読み手も二人と一緒にだまされかけるところにあると私は考える。初めて読む子の中には、途中で「あれ?」と思いながらも、二人と同じように先へ進んでしまう子もいるだろう。その「あれ?」と感じた瞬間を、第1時の初読のうちに印一つでいいから記録させておきたい。早く気づく子も、結末まで気づかない子も、すでに読んだことがある子もいる。単元の最後に、自分がどの戸で、どの言葉から気づいたのかを見返すと、それがそのまま解説文の根拠になる。
関連する読書として、同じ作者の「どんぐりと山猫」「雪渡り」などを並べて置くと、山猫や不思議な世界の描かれ方を比べる手がかりになる。
参考:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編(文部科学省)第3章第3節「第5学年及び第6学年の内容」〔知識及び技能〕(1)ク、〔思考力、判断力、表現力等〕C 読むこと (1)エ、(2)イ/宮沢賢治「注文の多い料理店」(青空文庫)
