教材研究ラボ
研究授業「重さの計算」の板書(めあて、800g+600g=1400g=1kg400g、1kg100g-200g=900g、みかんのかごの絵、まとめ)の前で、手を挙げる子どもたちに語りかける男性の教育実習生

実習の振り返り小学校

実習の振り返り実習の振り返り・小学校

小学校の教育実習 ― 事前に立てた課題と、実習で学んだこと

初めての小学校実習。事前に立てた「子どもとの距離感」「発問と個別支援」という課題と、研究授業「重さの計算」、特別支援学級の参観、同じ日に明暗が分かれた1日担任から学んだ授業づくりの考え方をまとめる。

作成 更新

目次
  1. 初めての教壇へ
  2. 実習で学びたい3つのこと
  3. 課題1:子どもとの距離感
  4. なぜ課題なのか
  5. どう取り組むか
  6. 課題2:授業の進め方・発問・個別支援
  7. なぜ課題なのか
  8. どう取り組むか
  9. 事前指導で学んだ「先生の一日」の見方
  10. 実習生としての約束
  11. 学び続ける教員になるために
  12. 実習を終えて
  13. 5つの自己課題の現在地
  14. 名前を覚えて、初日を迎えた
  15. 休み時間の関わりは、指導の土台になる
  16. 研究授業:算数「重さの計算」
  17. 特別支援学級の参観から
  18. 1日担任:同じ日に、うまくいかなかった授業とうまくいった授業
  19. 実習の終わりに、メッセージカードを
  20. 実習を終えて見えた課題

初めての教壇へ

観察実習も含めて、学校現場に立った経験はなかった。不安がないと言えばうそになる。けれど、不安を理由に動かない実習にはしたくない。先生方から積極的に助言をもらい、その日のうちに実習日誌で振り返り、翌日に修正する。このサイクルを実習の土台にすると決めた。

実習中の毎日のサイクル(観察する→記録する→振り返る→翌日に修正)と、授業参観で書き留める3点(問いの言葉・タイミング・子どもの反応)を示した図

実習で学びたい3つのこと

学びたいこと 見るところ
1 子どもが「自分で考え、自分の言葉で答える」姿の引き出し方 学年の発達段階に合った発問と関わり方
2 教師が一日をどう設計し、学級をどう動かしているか 朝の会から帰りの会までの流れ
3 理解に時間がかかる子どもへの個別支援 その子の「わかりかけている部分」

課題1:子どもとの距離感

なぜ課題なのか

大人どうしの接し方に慣れていると、意識しないまま一方的に指示したり、距離を置きすぎて冷たい印象を与えたりするおそれがある。親しみやすさと、一貫した約束や対応を、どう両立させるかが課題だと考えた。

どう取り組むか

  1. 発達段階を先に学ぶ:学習指導要領の解説や発達心理学の入門書で、担当学年の子どもがどう考え、どう感じるかを理解してから臨む。
  2. まず観察する:初日から、子どもの言動・表情・反応をよく見る。指導教員がどんな言葉をかけ、どんな距離で接しているかを具体的に記録する。
  3. 毎日「今日の関わり」を振り返る:うまくいった場面と、うまくいかなかった場面を書き留め、自分の言葉や態度のどこを直せるかを言葉にする。

課題2:授業の進め方・発問・個別支援

なぜ課題なのか

発問は「わかりやすい問いを投げかければよい」という単純なものではない。子どもの思考を引き出し、学び合いにつながる問いの組み立てが求められる。理解に時間がかかる子どもへの声かけは、かけ方ひとつで子どもの自信を傷つけることもある。

どう取り組むか

  1. その時間の中心となる問いを一つ決める:指導案を作る段階から、「子どもが自分の言葉で答えられるか」という視点で問いを練る。
  2. 参観では3点をセットで記録する:問いの言葉・タイミング・子どもの反応を書き留め、よい問いかけの型を自分の中に積み重ねる。
  3. 「わかりかけている部分」に声をかける:「なぜわからないのか」ではなく「どこまでわかっているか」を確かめる問いかけを身につけたい。

事前指導で学んだ「先生の一日」の見方

事前指導では、学校の一日を場面ごとに学んだ。実習では、それぞれの場面で次の点を観察したい。

場面 観察するポイント
中休み・昼休み 休み時間ではなく、子どもの人間関係を見る観察時間
朝の会・帰りの会 連絡・注意だけの会にしない工夫。先生の話は簡潔に、温かく、明日につながる言葉で
給食・清掃 先生が子どもと一緒に加わるタイミングと、離れるタイミング
教室の掲示 掲示物から読み取れる担任の方針。発達障害のある子どもへの刺激量の配慮
学級づくり 年度の初めに作ったしくみが、どう定着し、どう修正されているか
生徒指導 実習生は独断で対応を進めず、安全の確保と速やかな報告をしたうえで、指導教員の指示のもとで関わる。大人の論理ではなく、子どもの発達段階に応じた言葉を学ぶ

子どもが安心して過ごすには、安全や、見通しの持てる生活、尊重される関係が欠かせない。そのうえで、分かる・参加できる授業があることが大きいと学んだ。だから準備の時間の多くは、授業の準備に使いたい。

実習生としての約束

学び続ける教員になるために

事前指導で「学び続ける教員像」という言葉に出会った。学び続けるとは、一人で自習することではない。先生方の授業を見合い、話し合い、子どもから学ぶ。開かれた学びの中に身を置くことだと思う。

授業は、立てた問いを試し、子どもの反応で確かめ、次の時間に直していく営みだ。仮説を立て、試し、確かめ、直す。その積み重ねを、この実習から始めたい。

実習を終えて

参観から始まり、授業実習、研究授業、最後の1日担任へと、段階を追って学ばせていただいた。ここからは、実習で学んだ授業づくりの考え方を中心にまとめる。

5つの自己課題の現在地

実習では、事前の2つの課題を広げて、5つの自己課題を立てた。終えてみての現在地は次のとおりだ。

自己課題 学べたこと 残った課題
1. 学級経営 一日の流れを見通し、よい姿を価値づけながら学級を営む姿 給食など生活場面まで含めて、授業と並行して段取りする力
2. 授業の組み立て 発問・板書・机間指導・時間管理の技術 「この1時間で必ず押さえること」を事前に明確にする
3. 児童理解 日々の関わりと観察から、一人ひとりを知ること 観察を記録に残し、気になる姿の背景まで考える
4. 生徒指導 叱る前に、普段からの信頼関係が土台になること 自分が学級全体に指導する経験
5. 支援を必要とする子との接し方 その子が落ち着いて学べる状態を先に整えること 学んだ手立てを、自分の授業で使える形にする

名前を覚えて、初日を迎えた

実習前の打ち合わせで、担当の先生から「自己紹介のときに、クラス全員の名前を覚えて披露してみては」と提案をいただいた。そこで、全員の名前を覚えてから初日を迎えた。

自己紹介で一人ひとりの名前を呼べたことで、子どもたちに受け入れてもらえたような気がする。事前の課題1に挙げた「子どもとの距離感」は、実習前にいちばん不安だったことだ。その最初の一歩が、名前を覚えることだった。

休み時間の関わりは、指導の土台になる

休み時間は、できるだけ子どもたちと一緒に過ごした。外で鬼ごっこをしたり、教室で折り紙をしたりした。事前指導で、休み時間は「子どもの人間関係を見る観察時間」だと学んでいた。授業中には見えない姿に触れられたことで、一人ひとりへの理解が深まった。

指導教諭の先生からは、普段からの信頼関係があってこそ、必要なことを伝えたときに子どもに届くのだと教わった。休み時間の関わりは、遊びであると同時に、指導の土台づくりでもあった。

研究授業:算数「重さの計算」

研究授業は、算数「重さ」の単元の「重さの計算」の時間だった。

授業の流れは次のとおり。

  1. 導入:けんばんハーモニカを見せる。毎日使っていて重さを手で知っているうえに、本体とケースに分かれているので、「合わせた重さ」を考えるのにちょうどよい。いつもははかりで量るのに、今日ははかりがない。どうしたらよいかを考えるきっかけにした。
  2. 第1問 800g+600g:まず式だけを書かせ、「800とだけ書いたら、800gか800kgか分かる?」と問い、式に単位を付けることを押さえる。答えの1400gを1kg400gと表した考えを取り上げ、「なぜそう書いたの?」と理由を言わせる。
  3. 第2問 1kg100g-200g:みかんとかごの絵で、かごと中身の重さを分けて考える場面を示す。gの部分だけを見ると、100gから200gはひけない。長さの計算の振り返りカードを出して、「同じ単位どうしで計算した」ことを思い出させ、1kgを1000gに直して計算する。
  4. まとめと練習:「同じ単位の数どうしを計算する」とまとめ、教科書、デジタルドリル、紙のドリルへと、それぞれのペースで練習する。

研究授業「重さの計算」の板書の流れ。めあて「重さの計算のしかたを考えよう」、第1問 800g+600g=1400g=1kg400g、第2問 1kg100g-200g はgの部分だけでは100gから200gがひけないので1kgを1000gに直して1100g-200g=900g、まとめ「同じたんいの数どうしを計算する」

授業のあとにいただいた助言をもとに、自分の授業を次のように振り返った。

手ごたえを感じたこと 次に直したいこと
身近な具体物や絵が、問題場面をつかむ手がかりになった 大事な説明の前に、全員が聞ける状態を整えてから話す
長さの計算の振り返りが、「同じ単位どうし」につながった 前を行き来するだけでなく、机の間に入って一人ひとりの手元を見る
子どものつぶやきを拾い、全体に返すことができた 指示を聞き逃した子や、手が止まっている子に早く気づく
発表の前にペアで確かめる時間をとった 考えを説明する場面を、子どもに任せる
まとめのキーワードを板書に残す

具体物は、問題場面をつかむ助けになったと感じている。一方で、一人ひとりのつまずきをその場で見取ることは、まだできていなかった。

特別支援学級の参観から

特別支援学級の担任を目指していることから、知的障害学級や自閉症・情緒障害学級など、複数の特別支援学級を参観させていただいた。少人数の学級に、先生と支援員の方が入り、次のような手立てが重ねられていた。

  • 見て分かる提示:モニターに教科書を映し、作業を説明する。数を数える学習では、10のまとまりで囲ませてから数えさせる。
  • 行動がイメージできるめあて:「何を・どうするか」が分かる、短くやさしい言葉で示す。
  • 自分で気持ちを整える仕組み:イライラしたときに落ち着くためのグッズを用意しておく。

通常の学級の授業でも、ノートのどこに書くかを黒板にマスを描いて示す先生がいた。「どこに・何を書くか」を見せる手立ては、支援が必要な子だけでなく、学級全員の安心につながる。

1日担任:同じ日に、うまくいかなかった授業とうまくいった授業

1日担任として、一日の授業を受け持つ機会もいただいた。準備の差が、授業の手ごたえの差として表れることを強く感じた。

国語「こそあど言葉」第2時(うまくいかなかった)

文章の中のこそあど言葉が、どの言葉や部分を指しているのかをとらえる時間だった。準備が足りず、本時で押さえるべき核である「指している内容を、文章にもどって確かめる」ことを押さえ忘れてしまった。

算数「重さ」のまとめ(うまくいった)

導入で、重さ・長さ・かさの単位の関係、式に単位を付けること、1000g=1kg の関係を使って kg と g で表すことを押さえた。そのうえで、確認問題が解けた子から、デジタルドリル、紙のドリル、数種類のプリントへと自分のペースで練習を続けられる教材を用意しておいた。ただ、練習を続けられたことと、理解が深まったことは同じではない。次は、誤答の傾向や子どもの説明から、理解を確かめる場面もつくりたい。

研究授業の事後研で、「計算の意味が分かれば、あとは経験。終わったら次の問題へと、たくさん解かせるのがよい」という趣旨の助言をいただいていたことも生かせた。

一方で、給食指導などの生活場面では手が回らず、担任の先生に場を整えていただく場面が多かった。授業をすることと、生活まで含めて学級をまわすことの間には、大きな差があった。

実習の終わりに、メッセージカードを

実習の終わりに、一人ひとりに宛てたメッセージカードを手渡した。その子だけの姿を具体的な言葉にして渡すことは、子どもにとっても、書く自分にとっても、関わりを振り返る機会になると感じた。

夕方の教室の机の上に、花や星の絵で飾られた色とりどりのメッセージカードが並び、ひまわりが飾られている

休み時間に遊び、話を聞くという小さな関わりの積み重ねが、別れの場面の重みをつくるのだと感じた。

実習を終えて見えた課題

実習前は、最後まで勤め上げられるのか、子どもたちに受け入れてもらえるのかという不安のほうが大きかった。終えた今は、「教師になりたい」とはっきり言える。

これから伸ばしたいことは、次の3つだ。

  1. 生活場面まで含めた学級経営の力:授業と給食・移動・時間管理を同時に段取りする。
  2. 本時の核を明確にした授業準備:必ず押さえることを事前に書き出す。
  3. 支援を必要とする子と、学級全体を同時に見る力:参観で学んだ手立てを、自分の授業で使う。

3つめの課題は、次の特別支援学校の教育実習に持ち越した。