教材研究ラボ
教室の机で、鉛筆やひもを並べて長さを比べる高校生くらいの生徒たちと、隣で見守る男性の教育実習生

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特別支援学校の教育実習 ― 高等部で学んだ「待つこと」と「支えること」

知的障害のある生徒が通う特別支援学校の高等部での実習。5つの自己課題、先生方の手立て、数学「物の長さを比べよう」の研究授業、どこまで手伝うかの迷いから学んだ、待つことと支えることの考え方をまとめる。

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目次
  1. 小学校の次は、特別支援学校の高等部へ
  2. 5つの自己課題と、終えての現在地
  3. 先生方の手立てから学んだこと
  4. どこまで手伝い、どこから任せるか
  5. 関係づくりは、短い声かけの積み重ね
  6. 研究授業:数学「物の長さを比べよう」
  7. 授業のねらい
  8. 振り返り
  9. 1日担任で見えた、担任の仕事の広さ
  10. 実習を終えて

小学校の次は、特別支援学校の高等部へ

小学校の教育実習では、特別支援学級を参観し、「その子が落ち着いて学べる状態を先に整える」ことを学んだ。その学びを持って、特別支援学校での実習に臨んだ。

実習校は、知的障害のある子どもと、知的障害に肢体不自由を併せ有する子どもが通う特別支援学校で、配属は高等部だった。参観した授業の多くに、卒業後の生活や仕事を見すえた学習が組み込まれていた。

実習中に聞いた講話で、教育基本法第1条の「人格の完成を目指し」という言葉が取り上げられた。講話を聞いて、私はこの言葉を、完成させると言い切るのではなく、生涯をかけて目指し続けることだと受け止めた。教員もまた未完成な存在であり、だからこそ子どもや保護者に謙虚でありたい。そう考えながら実習を過ごした。

5つの自己課題と、終えての現在地

自己課題 学べたこと・できたこと 残った課題
1. 生徒との接し方 反応を見ながら、声をかけるタイミングや距離を考えるようになった 障害の状態や本人の意思に応じた援助の判断
2. 授業づくり 数学の指導案を作り、研究授業を実践した 生徒の実態に合った課題の難しさを見極める
3. 具体物・視覚的な手立て 先生方の授業から多くの方法を学び、研究授業でも具体物を使った 教材を用意するだけでなく、どこを見てほしいかを伝える
4. 気持ちが乱れた場面への対応 周囲の先生と役割分担を事前に確かめておく大切さ 変化を早めに捉え、安全を確保しながら連携して対応する
5. よさを認める関わり 先生方が、結果だけでなく生徒の工夫や行動を認める姿 気づいたよさを、具体的な言葉で返す

先生方の手立てから学んだこと

参観した授業では、生徒が「何を・どうすればよいか」を分かって動けるように、いくつもの手立てが重ねられていた。

授業 見た手立て
生活単元学習 全体に説明したあと、必要な生徒にだけ個別に作業内容を補う
音楽 隊列を画面に映し、一人ずつ位置を確かめてから、実際に動いて練習する
国語 言葉探しは、最初の一問を全員で考えてからプリントへ。早口言葉では「間違えないように読む」と目標を示す
国語 場面に合った声の大きさを0〜4の5段階で選び、選んだ理由も発表する
保健体育 人との関わり方を、身近な人物の写真やイラストを使った具体的な場面で考える
作業学習 テーブルを拭く方向を矢印で示す。最初から正解を教えず、生徒が考えて試す経験を大切にする

作業学習では、失敗したときにすぐ報告することを、先生方が認めていた。失敗しないことだけでなく、困ったときに人に伝え、相談することも学習になっている。作業や作品を自分で選ぶ機会もあった。製品を仕上げる過程そのものに、卒業後の生活や仕事につながる学びがあった。

生活単元学習では、毎月くり返し取り組む活動があった。役割を分け、見通しを持って取り組める形にしたうえで、生徒が自分でできる部分を少しずつ広げていく。支援を減らすかどうかは、安全や負担、本人の思い、目標から判断する。くり返す活動の中で、支援のあり方を見直していく。そのための活動の組み立て方を学んだ。

どこまで手伝い、どこから任せるか

作業学習で支援に入ったとき、いちばん迷ったのは、どこまで手伝い、どこから本人に任せるかだった。

ある場面では、うまくいかない様子を見て、自分が手を出して整えてしまった。別の場面では、ポイントを短く伝えて励ますと、本人が最後までやり遂げた。準備や段取りの一部だけを支援すると、そのあとは自分のペースで進められることもあった。

同じ作業の中にも、本人が進められる部分と、支援が必要な部分がある。その見極めは、すぐに手を出さず、まず見ることから始まるのだと思う。

作業日誌に担当者としてコメントを書く機会もあったが、うまく書けなかった。目の前で見ていたのに、何がよかったのかを短い言葉にできなかった。よさに気づいたら、本人に伝わる言葉や方法で返したい。

関係づくりは、短い声かけの積み重ね

実習生が授業に加わること自体が、生徒にとっては環境の変化になる。そのことを意識して、授業の合間に短く声をかけたり、本人が好きなことの話を聞いたりと、小さな関わりを重ねることを心がけた。関係づくりは、先生方が日ごろから積み上げてきた関わりと連携の上に成り立っていることも実感した。

また、自分一人では対応しきれない場面があることも知った。研究授業の前には、さまざまな場面を想定した役割分担を、担当の先生と事前に確かめた。一人で抱えず、先に分担を決めておくことの大切さを学んだ。

研究授業:数学「物の長さを比べよう」

授業のねらい

研究授業は、習熟度別グループの数学。指導案では、特別支援学校小学部の算数(C 測定)の2段階「二つの量の大きさについて、一方を基準にして相対的に比べる」と、3段階「長さなどの量を直接比べる方法を理解し、比較する」の内容をもとにした。鉛筆のような硬い物や、ひもの長さを比べ、正しく比べるためには片方の端をそろえること、ひもはまっすぐにすることが必要だと気づけるようにする。

長さを比べる力は、卒業後の家庭生活や仕事の中で、目的に合った道具を選んだり、材料を確かめたりすることにつながる。

長さを正しく比べるための2つのポイントを示した図。①片方の端をそろえる:端がずれていると見た目で迷うが、左の端をそろえると反対の端を見て長いほうが分かる。②ひもはまっすぐにのばして比べる

研究授業の前に、生徒の取り組みを確かめる時間をもらい、課題の内容を見直した。ただ、その場面で説明や実演をしてしまい、どこまでを支援なしで、どこからを支援があればできるのかを、十分に確かめられなかった。

振り返り

授業のあとにいただいた助言をもとに、自分の授業を次のように振り返った。

手ごたえを感じたこと 次に直したいこと
鉛筆やひもなど、具体物を使った導入 活動と活動をつなげ、流れを途切れさせない
生徒のペースに合わせて机の間を回れた 「よーい、スタート」など、開始の合図をはっきりさせる
時間で区切らず、取り組みを待てた 活動のあとに答え合わせをし、答えにフィードバックする
本時のポイントを振り返りで確かめた 大事なポイントは、注目を集めてから板書する
机の配置(横並びや扇形)で、机間指導の動線をつくる

自分では、用意した課題の難しさが、生徒一人ひとりの実態に十分に合っていなかったと感じている。鉛筆だけでは50分もたないと考えてひもの課題を加えたが、鉛筆に絞って「端をそろえて比べる」ことを丁寧に扱ったほうがよかったのではないか。その迷いは、まだ結論が出ていない。

1日担任で見えた、担任の仕事の広さ

1日担任として、朝の会から帰りの会までを担当する機会もいただいた。授業を進めることに加え、生活面の指導や、ほかの先生との連絡など、自分では対応しきれないことも多く、指導教諭の先生に助けていただいた。

小学校の実習でも、1日担任で生活場面の指導に手が回らなかった。授業と生活の場を同時に動かす力は、二つの実習を通して見えた、いちばん大きな課題である。

実習の終わりには、一人ひとりにメッセージカードを手渡した。関係ができてきて、これからというときに終わるのが残念だった。

実習を終えて

生徒の力を生かすためには、待つことと必要な支援をすることの両方が求められる。実習で学んだいちばん大きなことは、これだった。

これから取り組みたいこと。

  1. すぐに手を出さずに、見て待つ:何をしようとしているかを見て、安全に配慮しながら待つ。援助したときは、その内容と後の反応を記録する。
  2. 本人ができたことと、支援したことを分けて記録する:そのうえで、何がよかったのかをその場で具体的に伝える。
  3. 身につけてほしいことを短い言葉にしてから、教材と活動を選ぶ:開始の合図、注目を集めてからの板書、答え合わせまで含めて授業の流れを考える。
  4. 一人で抱えず、小さな変化も共有する:一日の予定だけでなく、生徒の状態や変更点、誰に何を伝えるかを確かめる習慣をつける。
  5. 本人の思いを確かめる:言葉だけでなく、選択や表情、身ぶりからも本人の意思を受け止め、指導教員と目標や有効な支援を共有しながら関わる。