
講義まとめ知的障害教育指導法知的障害自立活動:心理的な安定(1)自立活動:心理的な安定(2)自立活動:人間関係の形成(4)自立活動:コミュニケーション(5)
講義まとめ講義まとめ・知的障害教育指導法生活の中で、繰り返し学ぶ ― 知的障害教育の指導法と、自立活動の計画の立て方
知的障害教育指導法で学んだ、知的障害教育の歩みと学習上の特性、各教科等を合わせた指導の4つの形態、学習環境の整え方、自立活動の目標と、実態把握から指導内容を決めるまでの流れをまとめる。
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目次
知的障害教育指導法の講義では、知的障害のある子どもの学び方の特性と、それに合わせた授業の形、自立活動の計画の立て方を学んだ。講義の資料は、文部科学省の特別支援学校学習指導要領解説(各教科等編、自立活動編)を基にしていた。
知的障害教育の歩み
講義の初めに、知的障害教育の指導の歴史を確認した。
講義によれば、第二次世界大戦の後しばらくは、子どもの生活や学び方の特性を十分に踏まえず、通常の教育の教科の枠組みのまま、下の学年の内容を薄めて時間をかけて教える指導が多く、「水増し教育」と批判された。その後、アメリカの経験主義の影響も受け、教科書による学習より、栽培、宿泊学習、製品づくりと販売など、さまざまな経験を通して生活について学ぶ、生活を中心とした教育が広がった。
1963年に作られた知的障害教育の最初の学習指導要領(養護学校小学部・中学部学習指導要領 精神薄弱教育編)は、通常の教育と同じく国語・算数などの教科で内容を分けた一方、教科や領域を合わせて指導することも認めた。この「各教科等を合わせた指導」は、今も知的障害教育で行われている。
学び方の特性と、教育的な対応
学習指導要領解説では、知的障害のある子どもの学習上の特性として、学習によって得た知識や技能が断片的になりやすく、実際の生活の場面で生かしにくいことが挙げられている。そのため、実際の生活場面に即して、繰り返し学習することで身に付けられるようにする、継続的・段階的な指導が大切にされる。
講義で最も重要だと強調されたのは、子どもの実態を確実につかむことである。家庭や地域、関わっている支援者からも情報を集める。
成功経験が少なく、自分から取り組む意欲が十分に育っていないことが多いため、解説には次のような対応が挙げられている。
- 頑張っているところや、できたところを細かく認めて褒める
- 日課や学習環境を分かりやすくし、見通しをもって自分から動けるようにする
- 生活に結び付いた具体的な活動を中心にし、できる限り成功経験を多くする
- 興味・関心や得意なことに目を向け、教材・教具や補助具、材料を固定したり作業の位置をそろえたりする道具(ジグ)を工夫する
- 集団の中で一人一人に役割があるようにし、活動の後に達成感が得られるようにする
- 生活年齢に合った指導をする
最後の点は見落としやすい。発達の段階に合わせることと、幼い子ども向けの扱いをすることは違う。中学部や高等部の生徒には、年齢にふさわしい題材や言葉で接する。
各教科等を合わせた指導
4つの形態
知的障害のある子どもを教育する特別支援学校では、各教科、道徳科、特別活動、自立活動などの一部または全部を合わせて授業を行うことができる(学校教育法施行規則第130条第2項)。講義では、これは「合わせてよい」であり、「合わせなければならない」ではないことが確かめられた。子どもに合わせて、教科ごとの指導と組み合わせて選べる。
例えば買い物学習なら、「お店で好きなお菓子を買う」という生活上の目標の中で、ある子はお金を数えること(算数)、別の子は店員さんに「これをください」と伝えること(国語)を目標にする、というように、同じ活動の中で子どもごとに学ぶことを決める。買い物に行くだけで学習になるわけではなく、教科の目標と一人一人の評価を結び付けておく必要がある。
合わせた指導には、主に次の4つの形態がある。
| 形態 | どんな指導か | 内容の例 |
|---|---|---|
| 日常生活の指導 | 日常生活が充実し高まるように、毎日の生活の動きを計画的に指導する | 着替え、歯磨き、食事、身だしなみ、あいさつ |
| 遊びの指導 | 主に小学部で、遊びを学習の中心に据え、体の動きや仲間との関わり、意欲を育てる | 校庭や砂場での自由遊び、的当てゲームなどの設定した遊び |
| 生活単元学習 | 生活上の目標を達成したり課題を解決したりする一連の活動を通して、自立や社会参加に必要なことを実際的・総合的に学ぶ | 校外学習、買い物学習、宿泊学習、文化祭 |
| 作業学習 | 作業活動を中心に、働く意欲を育て、将来の職業生活や社会自立に必要なことを総合的に学ぶ | 農園芸、木工、陶芸、手芸、清掃、接客 |
目標は見て分かる行動で書く
講義では、合わせた指導を計画するときのポイントとして、次のことが挙げられた。
- 各教科の目標との関係をはっきりさせる。合わせた指導でも、どの教科の何を学ぶのかを押さえる
- 目標は、見て確かめられる行動で書く。「〜と伝えることができる」「手順カードを見ながら、磨く場所を順に変えて歯を磨くことができる」など
- 手だてを具体的に書く。「言葉かけをする」で済ませず、「『○○』と言う」と、言う言葉まで書く
- 複数の教職員で指導するので、目標と手だてをチームでそろえる
評価も、目標に照らして、できたことや伸びたところを見る。どのくらいの支援でできたか、どんな条件でつまずいたかも記録し、手だてが合っていたかを確かめて次の指導を直す。一人の見方に偏らないよう、多くの教職員で意見を交わし、子どもの良い部分や頑張った部分を個別の指導計画に反映させる。
学習環境を整える
講義では、「うるさく、必要な物がなく、何をしていいか分からない教室」と「静かで、必要な物がそろい、やるべきことが分かりやすい教室」のどちらが学びの場として適当かを考えた。学習環境を整える視点として、物の面では教室の片付けと学習場所の設定、人の面では教職員の立ち位置と言葉が挙げられていた。
教室を構造化するとは、どこで何をするのか、どんな手順で進め、いつ終わって次に何をするのかが、見て分かるように場所や物、予定の示し方を整えることである。ただし、「片付ければよい」「教室を構造化すればよい」という形だけの整備ではいけないと注意された。教室にはさまざまな子どもがいて、必要な支援は一人一人違う。子どもの目線で、必要に応じて工夫することが大切である。
自立活動の目標と、3つの捉え方
自立活動の目標は、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(2017年告示)の第7章で次のように示されている(引用)。
講義では、この目標を捉えるポイントとして3つが示された。
- 自立は、何でも一人でできるようになることではない。困ったときに、困ったことを周りの人に伝えて解決できれば、それも一つの自立の形である。重い荷物を誰かに頼んだり、電車の時刻をスマートフォンで調べたりするように、大人もすべてを一人でしているわけではない
- 子どもが「主体的に」取り組むことを大切にする。教師の指示に従うだけの「させる」指導では、子ども自身の力になりにくい。必要な練習を繰り返すときも、本人が目的を分かり、選んだり気持ちを伝えたりできる場面を組み込む
- できることにも目を向ける。得意なところを伸ばすことが、苦手な部分を補うことにつながる
自立活動の内容は、健康の保持、心理的な安定、人間関係の形成、環境の把握、身体の動き、コミュニケーションの6区分27項目である。すべてを扱う必要はなく、子どもの実態から必要な項目を選び、関連付けて指導する。また、自立活動は「自立活動の時間」に限らず、登校から朝の会、休み時間、給食、各教科の時間まで、学校の教育活動全体を通して行う。
実態把握から指導内容を決めるまで
講義では、架空の事例を使って、自立活動の指導内容を決めるまでの流れをたどった。学習指導要領解説(自立活動編)が示す流れ図の例を参考にしたもので、決まった手順を順に処理するというより、実態をいくつもの観点から整理して課題を絞り込んでいく過程である。
事例は、小学部4年生の男の子である。身の回りのことは一人ででき、生活リズムも安定している。人と関わるのが好きで、教員とよく話すが、一方的に話してしまい、相手の話を聞くのは難しい。周りに気が散りやすいが、見通しがもてると席で活動できる時間が長くなる。友達とゲームをするのは好きだが、負けると不安定になる。教員が気持ちを聞き取ると、短い時間で切り替えられる。指先を使う作業は苦手だが、体を大きく動かす運動は好きである。全体への指示より個別の言葉かけで分かり、文字より写真やイラストに注目する。
ここから、課題どうしの関係に注目して、中心的な課題を次のように整理した。写真やイラストで見通しがもてれば、学習に参加できる時間が長くなる。教員との会話は好きなので、教員とのやりとりから、相手の話も聞く双方向のやりとりに広げる。好きな運動の中で教員の助言を受け止める関係を作り、勝ち負けにこだわらずに活動することや、ペアで協力することを目指す。
そのうえで、「活動に見通しをもち、教員の言葉を受け止めながら、ルールを守って活動できる」という目標を立て、心理的な安定の(1)情緒の安定と(2)状況の理解と変化への対応、人間関係の形成の(1)他者とのかかわりの基礎と(4)集団への参加の基礎、コミュニケーションの(2)言語の受容と表出と(5)状況に応じたコミュニケーションの項目を選んで関連付けた。指導内容は、完成の形が見て分かる箱積みゲーム、教員の言葉を聞いて答える3ヒントクイズ、協力とルールを学ぶ2人1組のボール運びリレーである。ゲームや教員との会話、体を動かす運動など、本人の好きなことを入口にしている。
実際の計画では、この目標を長期目標とし、短期目標は「写真の手順表で次の活動を確かめてから取りかかる」「負けて困ったときに、言葉やカードで気持ちを伝える」のように、確かめられる姿に分けて立てることになるだろう。
流れの中で気をつけることとして、講義では次のことが示された。
- 実態は「〜できない」で終わらせず、「〜は難しいが、○○ならできる」と書く。指導のヒントになることも一緒につかむ
- 自分の見立てに加えて、家庭や関係機関、前の担任からの情報を大切にする
- 一つの実態が複数の区分に関わることがある(「一方的に話す」は人間関係の形成にもコミュニケーションにも関わる)。迷ったら教職員どうしで確かめ合う
- 課題を抜き出すときは、できないことを並べる作業にせず、「こんな力を育てて、地域で生き生きと暮らしてほしい」という願いをもつ。本人の希望や好み、保護者の願いも確かめる。言葉で伝えにくい子は、活動を選ぶ様子や日々の反応から読み取る
- 卒業時などの長期目標に向けて、短期目標を小さな段階で設定する
問題となる行動を、その行動の前後から理解するABC分析も講義で扱った。行動の機能の考え方は、知的障害の心理・生理・病理の記事にまとめている。
教員として考えたいこと
実習や学級で子どもの姿を書き留めるときに、私は「〜できない」で終わらせず、「〜は難しいが、写真を見せると取りかかれる」のように、できる条件まで書くことから始めたい。その一行が、次の手だてと、自立活動の目標を考える手がかりになる。