教材研究ラボ
算数の時間の教室で、男性の先生が男の子の机の横にしゃがみ、鉛筆・本・挙手の絵が並んだ小さなカードを机に置いている。男の子はほっとした表情でカードを見ている

講義まとめ教職の基礎特別支援教育特別の支援を必要とする幼児・児童・生徒の理解全般発達障害自立活動:心理的な安定(1)自立活動:人間関係の形成(1)

講義まとめ講義まとめ・特別の支援を必要とする幼児・児童・生徒の理解

「困難さ」から手立てを考える ― 特別の支援を必要とする幼児・児童・生徒の理解:背景の見立て、指導の工夫、二つの計画

特別の支援を必要とする幼児・児童・生徒の理解の講義で学んだ、学習の遅れや集団へのなじみにくさの背景を多面的に見る視点、「困難さ・意図・手立て」で指導を工夫する考え方、個別の教育支援計画と個別の指導計画、外国につながる子どもへの日本語の支援、校内外の連携をまとめる。

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目次
  1. 背景を一つに決めつけない
  2. 「困難さ」から手立てを考える
  3. 二つの計画で支援をつなぐ
  4. 外国につながる子どもと日本語
  5. 一人で抱えず、役割を分けて連携する
  6. 教員として考えたいこと

特別の支援を必要とする幼児・児童・生徒の理解の講義では、通常の学級にいる「特別な配慮が必要な子ども」をどう理解し、どう支えるかを学んだ。テキストは阿部利彦・岩澤一美『これだけは知っておきたい 発達が気になる児童生徒の理解と指導・支援』(金子書房、2019年)で、あわせて小学校学習指導要領解説 総則編の「児童の発達の支援」も確かめた。

対象は障害のある子どもだけに限らない。学習指導要領の総則では、障害のある子どもに加えて、海外から帰国した子どもや外国につながる子ども、日本語の習得に困難のある子ども、不登校の子どもへの配慮も、同じ「特別な配慮を必要とする児童への指導」の中で示している。

背景を一つに決めつけない

講義の課題に、「学習に遅れがあり、集団にもうまくなじめない子どもがいる。その原因と対応を考える」というものがあった。考えていくと、原因は一つに決まらないことが分かる。

学習の遅れの背景には、知的な発達の遅れや学習障害(LD)のような発達や認知の特性がある場合もあれば、家庭で学習習慣が作られにくい、経済的な事情や家族関係のストレスで学習に集中できない、といった生活の状況がある場合もある。不安やストレス、周りの人を信頼できないといった心理的な状態も、学習に影響する。日本語の力が学習に追いついていない子どももいる。

授業や学級の環境も背景の一つになる。説明の速さや指示の出し方、教材の使いやすさ、学級の人間関係によって、同じ子どもでも参加しやすさが変わる。集団へのなじみにくさにも、人と関わるスキルがまだ育っていないこと、自信のなさなど、いくつかの背景がある。そして二つの困難は、互いに影響し合うことがある。

学習の遅れと集団へのなじみにくさが重なる経路の一例の図。左に背景にあるもの(一つとは限らない)として、発達や認知の特性(知的な遅れ・LD・ADHD・ASDなど)、授業や学級の環境(説明の速さ・指示の出し方・人間関係)、家庭や生活の状況(学習習慣・経済的な事情・家族関係)、言葉や文化の違い(学習に必要な日本語・生活習慣)、心理的な状態(不安・ストレス・人への信頼)。右に循環として、学習につまずく、「できない」経験が重なり自信が下がる、人との関わりに消極的になる、集団で孤立し学ぶ意欲が下がる、がつながっている。授業や関わりを見直し、困難が軽くなるかを確かめる(分かる授業・小さな成功の承認・関わり方の練習・安心できる相手)

たとえば、テストで点が取れない経験が重なると自己評価が下がり、人との関わりに消極的になる。孤立すると学校で学ぶ意欲も下がり、さらに学習が遅れる。全ての子どもがこの経路をたどるわけではないが、授業や関わり方のどこを見直せるかを考え、困難が軽くなるかを確かめていくのが支援の出発点になる。

背景をつかむには、担任の観察だけでは足りないことが多い。講義では、知能や学力、生活の中での行動、身体の状態などの情報を集めて見立てる心理教育アセスメントを学んだ。保護者や、医療機関・心理の専門家から情報を得て、いろいろな角度から子どもを見る。

担任にできるのは、どの場面で何が起きたかという事実を書き留めること、本人に困っていることを聞くこと、うまく参加できている場面の条件を探すことである。そこから見立てを立てて手立てを試し、その後の変化を見る。検査や診断を待たなくても、校内で相談しながら授業の工夫は始められる。

「困難さ」から手立てを考える

平成29年告示の学習指導要領では、各教科の解説に、障害のある子どもなどが学習するときに生じる「困難さ」と、それに対する「指導上の工夫の意図」、具体的な「手立て」の例が示されるようになった。困難さの例として、見えにくさ、聞こえにくさ、道具の操作の困難さ、心理的な不安定、人間関係を作ることの困難さ、読み書きや計算の困難さ、注意の集中を続けることの苦手さなどが挙げられている。

障害の種類や程度で、指導の内容や方法が一律に決まるわけではない。総則編の解説は、同じ障害でも一人一人学習上・生活上の困難が違うことに留意し、その子の状態に応じて工夫を考えるよう求めている。障害名や国籍から手立てを決めるのではなく、その子が何に困っているかから考える。

困難さから手立てを考える図。算数の文章題の例で、①困難さ(何に困っているか)は、文章を読み取って数量の関係を式に表すことが難しい。②指導上の工夫の意図(何ができるようにするか)は、数量の関係をイメージできるようにする。③手立て(具体的に何をするか)は、経験に基づく場面や興味のある題材を使う、具体物で動作化する、文章を一部分ずつ示す、図に表す。下に、教科の目標や内容の趣旨、活動のねらいを踏まえ、学習内容の変更や活動の代わりを安易に行わない、学習の負担や心理面にも気を配る、必要な配慮は個別の指導計画に書いて引き継ぐ、とある

算数編の解説の例では、文章題で数量の関係を式に表すことが難しい子どもに対して、関係をイメージできるようにする意図から、経験に基づく場面を取り上げる、具体物で動作化する、文章を一部分ずつ示す、図に表すといった手立てを挙げている。あわせて解説は、算数科の目標や内容の趣旨、学習活動のねらいを踏まえ、学習内容の変更や活動の代わりを安易に行わないよう注意している。

講義で学んだ手立てを、困難さ・意図・手立ての形で整理すると次のようになる。

困難さ 工夫の意図 手立ての例
全体への指示が伝わりにくい 何をするかが分かって活動に入れるようにする 短く具体的な言葉で伝える。口頭の指示にメモや絵を添える。全体に指示したあと個別に確かめる
板書と手元を見比べながら写すことが難しい 写す作業より内容の理解に力を使えるようにする 写す量を減らす。板書の写しや見本を手元に置く
計算などの手順を覚えておくことが難しい 手順を確かめながら自分で解けるようにする 活動の手順を示したシートを手元に配る
課題を最後までやり通せない 見通しをもち、達成を実感できるようにする 課題を小さなステップに分け、一つ終えるごとに達成を確かめる
学級の決まりや人との関わり方が分かりにくい どう振る舞えばよいかを具体的に分かるようにする 決まりを具体的な言葉で説明する。ロールプレイで関わり方を練習する
自信をなくしている 安心して挑戦できるようにする 努力した点や得意なことを認める。失敗しても大丈夫だと思える場面を作る

これらは学級全体への授業の工夫にもなるし、障害のある子どもの個別の必要に応じた合理的配慮にもなる。合理的配慮として行う場合は、本人・保護者と話し合って内容を決め、個別の教育支援計画に記録しておく。

二つの計画で支援をつなぐ

支援を一人の担任の工夫で終わらせないために、二つの計画がある。

個別の教育支援計画は、学校・家庭・医療・福祉などが協力して、就学前から卒業後まで長い目で支えるための計画である。本人・保護者の願いを踏まえて支援の目標を立て、それぞれの機関が何をするかを整理する。多くの関係者が関わるので、保護者の同意を前もって得るなど、個人情報の扱いに気をつける。

個別の指導計画は、学校で一人一人の指導目標・指導内容・指導方法をはっきりさせるための計画である。個別の教育支援計画で立てた長期的な支援の目標を、学校での具体的な指導に落とし込む役割をもつ。指導して評価し、その結果を両方の計画の見直しに生かす。前の節の「困難さ」と「手立て」も、ここに書いて翌年度の担任に引き継ぐ。

二つの計画の違いの図。個別の教育支援計画は、長い時間・広い範囲で支える計画で、期間は就学前から卒業後まで、関わるのは学校・家庭・医療・福祉・労働などの関係機関、中身は本人・保護者の願い、支援の目標、各機関の役割、注意として保護者の同意を得るなど個人情報を適切に扱う。個別の指導計画は、学校での具体的な指導を計画するもので、学年などの区切りで、学校(担任・通級担当・コーディネーターなど)が作り、中身は一人一人の指導目標・指導内容・指導方法、評価して見直し、翌年度の担任に引き継ぐ。下に、特別支援学級の子どもと、障害に応じた通級による指導を受ける子どもは全員に作成、通常の学級にいるそれ以外の障害のある子どもなども作成・活用に努める、とある

平成29年告示の学習指導要領では、特別支援学級の子どもと通級による指導を受ける子どもには、二つの計画を全員について作ることになった。通常の学級にいる障害のある子どもなどについても、作成と活用に努めるとされている。

外国につながる子どもと日本語

外国から来た子どもや、両親のどちらかが外国籍の子どもなど、外国につながる子どもの中には、日常の会話はできても、学習に必要な日本語の力が十分でないために、授業に参加しにくくなっている場合がある。

教室の一角で、男性の先生がご飯と汁物の給食の絵カードを見せながらゆっくり話し、外国につながる女の子が絵を指さして笑っている。近くの席の男の子と女の子が身を乗り出して手伝っている

総則編の解説は、通常の学級の担任ができる配慮として、ゆっくりはっきり話す、子どもの日本語での発話を促す、絵や図を使う、学習の目的や流れが分かるワークシートを使う、といった例を挙げている。2014年の学校教育法施行規則の改正で、日本語の力に応じた特別の指導を、特別の教育課程として在籍学級以外の教室などで行えるようになった(通級による日本語指導)。名前は似ているが、障害に応じた通級による指導とは別の制度である。この場合も、日本語指導の担当者と担任が連携して個別の指導計画を作る。

言葉の問題に加えて、生活習慣の違いから学校になじみにくくなることもある。総則編の解説は、担任がその子の言葉や文化の背景に関心をもち、周りの子どもとの関係を温かいものにするよう、学級経営で配慮することを挙げている。異なる文化で暮らした経験は、学級の子どもにとっても学びになる。

一人で抱えず、役割を分けて連携する

総則編の解説は、校長が校内委員会を置き、特別支援教育コーディネーターを指名して、学校全体で取り組む体制を作るよう求めている。担任が孤立しないようにすることも明記されている。

講義では、保護者、スクールカウンセラー、医療や福祉の専門家などとの多職種連携も学んだ。それぞれの専門性を尊重して情報を共有し、支援の方向をそろえる。そのとき、自分の役割を越えて関わりすぎないことも大切だと学んだ。たとえば教員が医療の診断に当たるようなことを言わない、といったことである。

子どもの状態は、成長や環境の変化で変わっていく。支援も一度決めたら終わりにせず、効果を見ながら見直す。

教員として考えたいこと

通常の学級には、障害のある子ども、発達障害の可能性のある子ども、日本語の支援が必要な子ども、家庭の事情を抱えた子どもなど、様々な子どもがいる。総則編の解説は、通常の学級にも教育上特別の支援を必要とする子どもがいることを前提に、全ての教職員が特別支援教育を理解する必要があるとしている。

気になる子どもがいたら、その子がどの場面で何に困っているかを書き出してみる。困難さが言葉にできれば、意図と手立てを考え、校内委員会やコーディネーターに相談し、個別の指導計画につなげることができる。

参考:阿部利彦・岩澤一美『これだけは知っておきたい 発達が気になる児童生徒の理解と指導・支援』(金子書房、2019年)/文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編』第3章第4節、『同 算数編』第4章