
学びは学校を出たあとも続く ― 生涯学習論:生涯学習の理念、社会教育施設、学校と地域の協働
生涯学習論の講義で学んだ、ラングランの生涯教育から教育基本法第3条までの生涯学習の歩み、学校教育・家庭教育・社会教育の関係、公民館・図書館・博物館の役割、学びを人と人の関係や地域の自治と結び付けて捉え直す考え方、PDCAとAARのサイクル、地域学校協働活動と教員自身の学びをまとめる。
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生涯学習論の講義では、人が生涯にわたって学ぶことを社会がどう支えるか、その中で学校や公民館・図書館などの社会教育施設がどんな役割をもつかを学んだ。テキストは牧野篤 編『社会教育新論 ― 「学び」を再定位する』(ミネルヴァ書房、2022年)である。
レポートの課題は「生涯学習の意義について」で、科目修得試験では、身近な生涯学習施設を一つ取り上げ、その理念や計画と、自分の学びとの関わりを論じた。
生涯学習という考え方
生涯教育から生涯学習へ
人は学校を卒業したら学ぶことを終えるわけではない。こうした考え方を国際的に広めたのが、1965年にユネスコの会議でポール・ラングランが示した「生涯教育」の理念である。教育を大人になるための準備に限らず、人の一生を通じて続くものとして捉え直した。
日本では、1981年の中央教育審議会答申「生涯教育について」でこの考え方が本格的に取り入れられた。1984年から1987年の臨時教育審議会は「生涯学習体系への移行」を打ち出し、1990年には生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(生涯学習振興法)が作られた。1981年の答申は、生涯学習を一人一人が自発的に行う学習、生涯教育をそれを支えるための教育の仕組みと整理していた。その後、学ぶ人の自発的な学びを重視する立場から、政策の上でも「生涯学習」という語が広く使われるようになった。
2006年に改正された教育基本法は、第3条に生涯学習の理念を置いた。国民一人一人が、自分を高め豊かな人生を送れるよう、生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所で学ぶことができ、その成果を生かせる社会の実現を目指すという内容である。
学校教育・家庭教育・社会教育
生涯学習は、学校の中だけで起きるものではない。家庭での教育、学校での教育、そして社会教育が、生涯の様々な段階で互いに関わりながら人の学びを支える。社会教育法は、社会教育を、学校の教育課程として行われる教育活動を除いた、主に青少年と成人に向けた組織的な教育活動(体育とレクリエーションを含む)としている。
学校は、その一部である。学校で教えることは、子どもが生涯にわたって学び続けるための土台になる。学習指導要領が資質・能力の柱の一つに挙げる「学びに向かう力、人間性等」は、学んだことを人生や社会に生かそうとする力であり、生涯にわたって学ぶ基盤にもなる。
学びを人と人の関係から捉え直す
テキストの問題意識
テキストは、学びを知識や技能を身に付けることだけに限らず、人々が互いを認め合い、社会とつながっていく過程として捉え直すことを求めていた。人口の減少や高齢化で地域のつながりが弱まる中、公民館や図書館は、行政のサービスを受け取る場所であると同時に、世代を超えて人が出会い、学び合い、地域のことを自分たちで考える自治の拠点になりうる、という見方である。
レポートでは、地域のつながりが弱まった場所で、外から来た人との対話や住民同士の話し合いを通して、人々が自分を地域の当事者として捉え直していく過程に注目した。たとえば、ある集落で、住民が公民館に集まって地域の困り事を出し合い、訪れた大学生と一緒に昔の写真を集める会を企画し、終わったあとに次は何をするかを話し合う、という場面を思い浮かべてほしい(地域を特定しない仮の例)。外から事業を持ち込むのとは別に、住民自身の学びの積み重ねが地域を変える力になる、という考え方である。
PDCAとAAR
レポートで手がかりにしたのが、PDCAサイクルとAARサイクルの違いである。
PDCAサイクルは、計画を立てて実行し、その結果を評価して、計画や方法の改善につなげる。AARサイクルは、OECDが「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」で示した、見通し(Anticipation)・行動(Action)・振り返り(Reflection)を繰り返す学びの過程である。見通しの段階では、自分の行動が自分や周りの人にどんな影響を及ぼすかも考える。もともとは子どもの学びについての枠組みだが、レポートでは、住民自身の見通しや振り返りに注目したいと考え、上の仮の例の「困り事を出し合う(見通し)→会を開く(行動)→終わったあとに話し合う(振り返り)」という流れに当てはめてみた。この当てはめは、レポートでの自分の考察である。
社会教育施設の役割
公民館・図書館・博物館
| 施設 | 主な根拠となる法律 | 役割の例 |
|---|---|---|
| 公民館 | 社会教育法 | 住民の生活に即した教育・学術・文化の事業を行う。講座やサークル活動、地域の集まりの場になる |
| 図書館 | 図書館法 | 資料を集めて提供する。調べものの相談(レファレンス)、地域の資料の収集・保存、学校との連携も行う |
| 博物館 | 博物館法 | 資料を集めて保存し、調査研究の成果を展示や体験、学習の支援に生かす |
図書館を自分の学びに生かす
試験では、身近な図書館を一つ選び、その運営の方針を調べた。図書館の運営方針を読むと、市町村の図書館や学校図書館と連携して本を取り寄せられるようにするネットワーク、地域の歴史や文化の資料の収集・保存・発信、レファレンスや講座で住民の「調べたい」「学びたい」に応えること、などが柱として書かれていることが多い。大活字本や音声で聞ける資料、来館しにくい人への宅配など、障害のある人や高齢の人が利用しやすくするサービスもある(提供の状況は図書館によって違う)。
働きながら通信制の大学で学ぶ立場から見ると、電子書籍や公開されたデジタル資料は、来館しなくても使える場合がある学びの資源になる(利用の登録や閲覧の条件は図書館やサービスによって違う)。答案では、今はまだ十分に使えていないが、教育の課題を地域の歴史や文化と結び付けて考えるときに、図書館の資料とネットワークが大きな助けになると考察した。
学校と地域が一緒に学ぶ
地域学校協働活動
学校も、生涯学習の場の一つとして地域とつながっている。2017年の社会教育法の改正で、地域の住民や保護者、NPO、企業などが学校と連携・協働して行う「地域学校協働活動」が法律に位置づけられた。教育委員会は、地域と学校をつなぐ地域学校協働活動推進員を委嘱できる。同じ年には、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正で、公立学校に学校運営協議会を置くこと(コミュニティ・スクール)が教育委員会の努力義務になった。学校運営協議会が学校運営について協議する仕組みであるのに対し、地域学校協働活動は、地域と学校が一緒に行う活動そのものである。

読み聞かせや登下校の見守り、総合的な学習の時間での地域の人の話など、地域の人が学校に関わる活動は、子どもの学びを広げ、関わる大人にとっても学びの機会になる。子どもと住民が一緒に学ぶ形もある。たとえば、総合的な学習の時間に子どもが通学路の危ない所を調べ、地域の見守りの人たちが日ごろ気づいていることを持ち寄って、一緒に改善の案を考え、実際に試したあとで振り返る。公共図書館が学校にまとめて本を貸し出す団体貸出も、学校の授業を支える社会教育の働きである。図書館や公民館を子どもに紹介するときは、家からの距離や開館時間、家族の事情などで使いにくい子どももいることに気を配る。
教員自身の生涯学習
教員もまた、学び続ける人である。教育基本法第9条は、教員に、自分の使命を自覚し、絶えず研究と修養に励むことを求めている。研修や授業研究に加え、地域の図書館で教材の資料を探したり、博物館の学習支援を授業に取り入れたりすることも、教員の学びになる。
教員として考えたいこと
子どもに「自分で調べる」力を育てたいなら、教員自身が地域の学びの場を知っておく必要がある。担任になったら、学校の近くの公立図書館で団体貸出やレファレンスの使い方を確かめ、次の単元で使えそうな本や地域の資料を相談してみる。
参考:牧野篤 編『社会教育新論 ― 「学び」を再定位する』(ミネルヴァ書房、2022年)/教育基本法 第3条・第9条/社会教育法 第2条・第5条・第9条の7・第20条/地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第47条の5/図書館法 第3条/博物館法 第2条・第3条/OECD「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」


