教材研究ラボ
放課後の職員室で、何人かの先生がホワイトボードを囲んでいる。ボードには色とりどりのカードが年間の計画のように並び、男性の先生がカードの一枚を別の場所に動かしながら話し合っている

講義まとめ教職の基礎教育課程論

講義まとめ講義まとめ・教育課程論

学校が作る「教育の計画」 ― 教育課程論:教育課程の基準と標準授業時数、カリキュラム・マネジメント、編成の課題

教育課程論の講義で学んだ、教育課程の意味と編成の三つの要素、教育基本法から学習指導要領までの基準のしくみと「基準性」、小学校の標準授業時数、カリキュラム・マネジメントの三つの側面と社会に開かれた教育課程、小学校の教育課程編成が抱える課題をまとめる。

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目次
  1. 教育課程とは
  2. 教育課程の基準
  3. 法令と学習指導要領
  4. 学習指導要領の「基準性」
  5. 標準授業時数
  6. カリキュラム・マネジメント
  7. 三つの側面
  8. 社会に開かれた教育課程
  9. 小学校の教育課程編成の課題
  10. 教員として考えたいこと

教育課程論の講義では、学校の教育活動の土台になる教育課程(カリキュラム)とは何か、誰がどのように作るのか、そして今の小学校でどんな課題があるのかを学んだ。課題のレポートでは小学校を取り上げ、「教育課程編成の課題」について考えた。制度の部分は、『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編』で確かめた。

教育課程とは

総則編の解説は、教育課程を、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を子どもの心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した各学校の教育計画だと説明している。

編成の基本になる要素は三つある。学校の教育目標を決めること、指導する内容を組み立てること、授業時数を配当することである。時間割や年間指導計画は、この教育課程を具体的な形にしたものになる。

教育課程は国から配られるものではなく、学校が子どもや地域の実態に合わせて作る計画である。校長が責任者となり、全ての教職員が協力して編成する。ただし、学校が自由に決めてよいわけでもない。国が定める基準があり、公立学校では教育委員会の規則などにも従いながら、その範囲の中で学校が創意工夫する。

教育課程の基準

法令と学習指導要領

小学校は義務教育で、公の性質をもつ。全国どこでも一定の水準の教育を受けられるよう、国は法令と学習指導要領で教育課程の基準を定めている。

教育課程を決めるしくみの図。上から、教育基本法(教育の目的・目標、義務教育の目的)、学校教育法(義務教育の目標、小学校の目的・目標)、学校教育法施行規則(教育課程を作る教科等、標準授業時数)、学習指導要領(教育課程の基準を大綱的に示す)、各学校の教育課程(学校が編成し、実施する)と矢印でつながる。右に、国が決めることとして、全国どこでも一定の教育水準を保てるよう法令と学習指導要領で基準を定めること、学習指導要領の基準性として、示された内容は全ての児童に指導し、必要があれば、目標や内容の趣旨を逸脱せず負担過重にならない範囲で、示されていない内容を加えて指導することもできること、学校が決めることとして、児童・学校・地域の実態に合わせて目標、内容の組み立て、授業時数の配当を考え、創意工夫して編成することが書かれている

教育基本法が教育の目的と目標を、学校教育法が義務教育の目標と小学校の目的・目標を定める。学校教育法施行規則は、小学校の教育課程を各教科、特別の教科である道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動で編成すること(第50条)や、標準授業時数(第51条・別表第1)を定めている。そして第52条で、教育課程の基準として文部科学大臣が公示する学習指導要領によることとしている。

学習指導要領の「基準性」

学習指導要領は、教育の内容などを大綱的に示したもので、指導をどう具体化するかは学校や教師の創意工夫に任される。示された内容は全ての児童に確実に指導しなければならないが、子どもの実態に応じて必要があれば、示されていない内容を加えて指導することもできる。これを学習指導要領の「基準性」という。加えるときは、各教科等の目標や内容の趣旨から外れたり、子どもの負担が過重になったりしないようにする。

標準授業時数

学校教育法施行規則は、学年ごとの年間の標準授業時数を定めている。標準授業時数は、45分を1単位時間として数える。実際の1コマの長さは、年間の授業時数を確保したうえで、学校が適切に決める。

学年 1年 2年 3年 4年 5年 6年
年間の標準総授業時数 850 910 980 1015 1015 1015

表の数字は「標準」で、学校はこれを踏まえて計画を立てる。子どもの負担が過重にならない範囲で上回ることもできる。災害や学級閉鎖などやむを得ない事情で下回った場合に、それだけで法令違反とされるわけでもない。また、特別活動の時数(各学年35単位時間、1年は34単位時間)は学級活動の分で、児童会活動・クラブ活動・学校行事の時間は、学校が別に適切な時数を充てる。

平成29年告示の学習指導要領で、3・4年に外国語活動(年間35単位時間)、5・6年に教科としての外国語(年間70単位時間)が置かれ、3年以上の総授業時数がそれぞれ35単位時間増えた。授業は年間35週(1年は34週)以上にわたって行うよう計画する。

時数の配当は、学校の工夫が問われる部分でもある。総則では、各教科等の特質に応じて10分から15分程度の短い時間を活用したり、45分と15分を組み合わせた60分の授業にしたりすることも認められている。ただし、短い時間の学習を授業時数に数えるには、単元全体を見通して、指導内容の決定や成果の把握・活用を教師が責任をもって行う体制が必要になる。

なお、プログラミング教育は新しい教科として加わったわけではない。算数や理科、総合的な学習の時間など、既存の教科等の中で、プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付ける学習活動として位置づけられている。

カリキュラム・マネジメント

三つの側面

教育課程は、一度作れば終わりではない。総則は、教育課程に基づいて組織的・計画的に学校の教育活動の質を高めていくことを「カリキュラム・マネジメント」と呼び、三つの側面から整理している。一つ目は、子どもや学校、地域の実態をつかみ、目標の実現に必要な内容を教科等横断的な視点で組み立てること。二つ目は、教育課程の実施状況を評価して改善すること。三つ目は、実施に必要な人や物の体制を確保し、改善することである。

カリキュラム・マネジメントの三つの側面の図。①組み立てる:児童・学校・地域の実態をつかみ、目標の実現に必要な内容を教科等横断的な視点で組み立てる(例:総合的な学習の時間と社会科・国語科をつなぐ)。②評価して改善する:教育課程の実施状況を評価し、改善する(例:学期末に単元の配列や時数の配当を見直す)。③体制を整える:実施に必要な人や物の体制を確保し、改善する(例:地域の人材や施設、ICT環境、校内の役割分担)。三つが、教育課程に基づき、組織的・計画的に学校の教育活動の質を高めることにつながる。下に、管理職だけの仕事ではなく、全ての教職員が関わる、とある

三つは別々に働くわけではない。たとえば、地域の川について学ぶ単元を、社会科・国語科・総合的な学習の時間をつないで組み立て(一つ目)、地域の協力者と調べ学習の時間を確保し(三つ目)、子どもの作品や発表から目標の達成状況を確かめて翌年の計画を直す(二つ目)。教科をつなぐときも、それぞれの教科の目標がはっきりしていることが前提になる。

解説は、自校の教育課程の課題がどこにあるかをはっきりさせ、教職員の間で共有して改善していくことを求めている。学級担任にとっても、年間指導計画を見直したり、教科と教科のつながりを考えたりすることは、カリキュラム・マネジメントの一部である。

社会に開かれた教育課程

平成29年告示の学習指導要領の前提にあるのが、「社会に開かれた教育課程」という考え方である。よりよい学校教育を通じてよりよい社会を作るという目標を学校と社会が共有し、これからの時代に求められる資質・能力を、家庭や地域と連携・協働しながら子どもに育む。学習指導要領は、学校、家庭、地域の人たちが共有できる「学びの地図」としての役割を担うとされている。

学校の隣の畑で、麦わら帽子をかぶった地域のお年寄りが、子どもたちにさつまいもの掘り方を教えている。子どもたちはしゃがんで囲み、掘り出したいもをうれしそうに持ち上げている。少し後ろで男性の先生が笑顔で見守っている

総合的な学習の時間で地域の素材を扱うときに、地域の人の協力を得ることは、この考え方の具体的な形の一つである。そのときは人手を借りるだけで終わらせず、学校の目標も協力者と共有する。たとえば「地域について調べ、根拠を基に自分の考えを伝える力を育てたい」という学校のねらいを協力者に伝え、子どもにどんな関わり方をしてもらうかを一緒に考える。

小学校の教育課程編成の課題

レポートでは、小学校の教育課程編成の課題として、次の四つを挙げた。

課題 内容
新しい内容と時数の配分 外国語は標準授業時数が増えて時間割が詰まり、予備の時数を確保しにくい。プログラミング教育は既存の教科等の中で行うので、各教科等の目標を満たしながら、年間計画のどこに位置づけるかが課題になる
多様な学習ニーズ 一人一人の学び方や進度の違いに対して、一斉指導を中心とした計画だけでは応えきれない
ICTの活用 教員のICTの扱いへの慣れや設備の状況に差があり、教材作りや機器の管理にも時間がかかる
教員の多忙と支援体制 授業以外の業務が多く、教育課程を見直す時間を確保しにくい。特別な支援が必要な子どもや外国につながる子どもへの対応の体制づくりも求められている

レポートでは、特に四つ目に注目した。ほかの三つの課題に対応するにも、教員の時間と支援体制が必要になると考えたからである。子どもの数が減る中でも、特別支援学級に在籍する子どもや通級による指導を受ける子どもは増え続けており(文部科学省「特別支援教育資料」)、特別支援教育に関わる教員の力も求められている。

講義を通して、子どもの幸福(ウェルビーイング)を目指す教育課程を作るには、それを担う教員の側の働き方や学ぶ機会にも目を向ける必要があると考えるようになった。若い教員が指導の仕方を学び合える校内の研修や、教員同士のチームティーチング、地域の人の協力などは、カリキュラム・マネジメントの三つ目の側面として計画に組み込んでおくことができる。

教員として考えたいこと

教育課程というと、校長や教務主任が作る大きな計画を思い浮かべがちだが、担任が毎週立てる週の指導計画は、学校の教育課程を日々の指導へ具体化したものである。

単元を一つ終えたら、子どもの作品や発言から目標がどこまで達成できたかを確かめ、計画していた時数と実際にかかった時数、子どもがつまずいた所と合わせて、年間指導計画の余白に書き込んでおく。それを学年会で共有し、次の単元や翌年の計画で指導方法や単元の配列、時数の配当を直せば、教育課程の「評価して改善する」側面になる。

参考:文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)』総則/『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編』第2章・第3章/学校教育法施行規則 第50条〜第52条・別表第1/文部科学省「特別支援教育資料」