
講義まとめ肢体不自由教育指導法肢体不自由自立活動:身体の動き(1)自立活動:身体の動き(2)自立活動:環境の把握(5)自立活動:コミュニケーション(4)
講義まとめ講義まとめ・肢体不自由教育指導法学ぶための姿勢と手段を整える ― 肢体不自由教育の指導法:教育課程、教科指導の5つの配慮、自立活動
肢体不自由教育指導法で学んだ、一人一人に合わせた教育課程の選び方、学習指導要領が示す各教科の指導の5つの配慮事項、知的障害を併せ有する子への各教科等を合わせた指導、養護・訓練から自立活動への歩みと「身体の動き」の指導、医療的ケアと多職種との連携をまとめる。
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肢体不自由教育指導法の講義では、体の動きに困難のある子どもの学びを、教育課程・各教科の指導・自立活動の三つの面から組み立てる方法を学んだ。テキストは『よくわかる肢体不自由教育』(丹野傑史・下山直人・安藤隆男編、ミネルヴァ書房、2022)で、学習指導要領とその解説も合わせて読んだ。
肢体不自由のある子どもの困難は、体が動きにくいことだけにとどまらない。動けないために体験が少ないまま言葉を覚えていたり、脳性まひに伴う見え方の特性で板書や図を読み取りにくかったりする。指導法の講義は、こうした困難を前提に、何を、どの順で、どんな手段で学ぶかを決める話だった。
教育課程を一人一人に合わせて組む
四つの選び方
特別支援学校(肢体不自由)の小学部・中学部は、小学校・中学校の各教科等に「準ずる」教育課程が基本になる。そのうえで、重複障害者等に関する教育課程の取扱いとして、子どもの実態に合わせて次のような特例が認められている。四つから一つを一律に選ぶわけではなく、各教科等の習得の状況をふまえて、教科ごとに、あるいは目標と内容の一部に限って適用することもある。
| 教育課程 | 内容 | 主に対象となる子ども |
|---|---|---|
| 準ずる教育課程 | 小学校・中学校と同じ各教科の目標と内容で学ぶ | 当該学年の内容を学べる子 |
| 下学年・下学部の内容に替える | 各教科の目標と内容の一部または全部を、当該学年より前の学年の目標と内容に替える。中学部では小学部の目標と内容に替えることもできる | 障害の状態により特に必要がある子 |
| 知的障害の各教科に替える | 各教科の目標と内容の一部または全部を、知的障害の特別支援学校の各教科に替える | 知的障害を併せ有する子 |
| 自立活動を主とする | 各教科等の目標と内容の一部などに替えて、自立活動を主として指導する。道徳科や特別活動は、目標と内容の一部に限って替えられる | 重複障害があり、障害の状態により特に必要がある子 |
どの教育課程を選んでも、自立活動の指導はある。そのため特別支援学校では、総授業時数は原則として小学校・中学校に準じつつ、各教科の授業時数は各学校で適切に定めることになっている。重複障害者を教育する場合や訪問教育の場合などには、特に必要があれば、実情に応じた授業時数を定めることもできる。
同じ教室に、違う目標の子がいる
特別支援学校(肢体不自由)の授業では、同じ学年の集団の中に、当該学年の目標を目指す子と、下学年の目標で学ぶ子が一緒にいることが少なくない。一人一人に別々の課題を配って個別に回るだけだと、待ち時間が増え、集団で学ぶよさも生かせない。そこで、同じ単元や題材の中で一人一人に合った目標を立て、その子から引き出したい姿を具体的にしておく「同単元異目標」の授業づくりが、集団で学ぶ機会を生かす方法の一つになる。目標を一人一人に分けるには、教師が各教科の目標と内容の系統を正確に知っている必要がある。
各教科の指導で配慮すること
特別支援学校小学部・中学部学習指導要領は、肢体不自由者である児童生徒に各教科を指導するときの配慮事項を五つ示している。
| 配慮事項 | 学習指導要領解説が挙げる具体例 |
|---|---|
| (1) 体験的な活動を通して言語概念等の形成を的確に図り、思考力、判断力、表現力等を育成する | 具体物を見る・触れる・数える、実物を観察する・測るなどの活動を取り入れ、気付いたことを言葉にして、言葉の意味付けを確かにする |
| (2) 身体の動きの状態や認知の特性、各教科の内容の習得状況等を考慮して指導内容を適切に設定し、重点を置く事項に時間を多く配当する | 面積の学習の前に、立方体の積み木を並べて長さを丁寧に確かめる。説明文で、段落の要旨と段落どうしの関係を丁寧に確かめる |
| (3) 学習時の姿勢や認知の特性等に応じて指導方法を工夫する | 体幹が安定し上肢を自由に動かせるよう、いすや机を本人の意見を聞いて調整する。地図やグラフは、着目させたい情報だけを取り出してから他の情報と関連付ける |
| (4) 適切な補助具や補助的手段を工夫し、コンピュータ等の情報機器を有効に活用する | つえ・車いす・歩行器、筆記用の自助具、身体の動きに合った入出力機器、滑り止めシート、身振り、コミュニケーションボード |
| (5) 自立活動の時間における指導と密接な関連を保つ | 学習上の困難を教師間で共通理解し、一貫した指導を組織的に行う |
(2)は、平成29年の改訂で「指導内容を適切に精選し」から「指導内容を適切に設定し」に改められた。解説は、授業時間が制約されることを理由に、履修できる内容を取り扱わなくてよいとする誤った解釈を避けるためだと説明している。授業時間が限られることを理由に、教えなくてよい内容が生まれるわけではない。重点を置く事項に時間を多く使い、ほかの事項は必要最小限で扱う、という配分の工夫が求められている。
(3)の姿勢には、疲れにくくなるという以上の意味がある。上下・前後・左右・遠近といった概念は、自分の体を基点にして作られる。安定した姿勢を保つことは、こうした概念を土台にした学習内容の理解にもつながる。
(4)の補助具を使う判断は、身体の動きや意思の表出の状態と、その改善の見通しに基づいて慎重に行う。補助具の使用を合理的配慮として認める場合は、個別の教育支援計画や個別の指導計画に書いておく。
(5)には注意も添えられている。教科の授業で身体の動きやコミュニケーションの改善に重点を置きすぎると、その教科の目標から外れてしまう。教科の時間は教科の目標を達成するための時間であり、自立活動の時間との役割分担をはっきりさせておく。
知的障害を併せ有する子と、各教科等を合わせた指導
知的障害を併せ有する子どもの場合、生活単元学習のように、各教科や自立活動などを合わせて生活に即した単元で学ぶ「各教科等を合わせた指導」を取り入れることがある。学校教育法施行規則第130条第2項が、知的障害者である児童生徒や複数の種類の障害を併せ有する児童生徒について、特に必要があるときに各教科等を合わせて授業を行えると定めていることに拠る。
ただし、知的障害教育で行われている活動をそのまま持ち込むと、体の動きの制約から、子どもが見ているだけになりやすい。たとえば調理の単元なら、スイッチ操作で調理器具を動かせるようにするなど、一人一人の動作の実態に合わせて、本人が自分で参加していると感じられる活動を選ぶ。そのうえで、その活動でどの教科等のどんな内容を学ぶのか(手順を理解する、量を扱う、希望を伝えるなど)を決めておき、一人一人の目標に照らして評価する。参加できたことだけで授業の成果を判断しない。
自立活動
養護・訓練から自立活動へ
障害による困難の改善を図る指導は、1971(昭和46)年の盲学校・聾学校・養護学校の学習指導要領で「養護・訓練」という領域として設けられた。それ以前の肢体不自由教育では、医師の処方に基づく機能訓練を特別な技能のある教職員が行うとされていた。養護・訓練は、障害そのものを治すことより、障害による学習上・生活上の困難を子どもが主体的に改善することを目指した点で、考え方が変わっている。
それでも「訓練」という名前からは、教師が訓練する人、子どもが訓練される人という構図が描かれやすいと指摘されてきた。1999(平成11)年の改訂で名前が「自立活動」に改められ、子ども自身の主体的な学習活動であることがはっきり示された。現在の学習指導要領は、自立活動の内容を6区分27項目で示している。27項目をすべて順に教えるわけではない。一人一人の実態を把握して個別の指導計画を作り、必要な項目を選んで相互に関連付け、具体的な指導内容を決める。個別の指導計画の書式は国が示さず、各学校が子どもの実態をふまえて決める。
自立活動の指導は、自立活動の時間を含む学校の教育活動全体を通じて行う。時間における指導を中心にしながら、各教科等の指導とつなげて、一貫した指導にする。
「身体の動き」の指導
テキストでは、「身体の動き」の指導について次のような考え方が示されていた。
- 重力に逆らって自分で姿勢を保つ体験を大切にする。体の軸が育ち、二次障害の予防にもつながるとテキストは説明している。
- 寝返りから座位、立位へと、発達の順序を考えながら基本的な姿勢や動作を段階的に学ぶ。教師は体を支えつつ、子どもが自分でバランスを取ろうとする小さな反応を引き出す。
- 車いすや保持いす、装具は、力の入りにくいところを補って活動を広げるものだが、体の動かし方の発達を促すとは限らない。テキストでは、「身体の動き」の時間に装具などから離れ、自分で姿勢を保とうとする動きを引き出す指導も紹介されていた。
- 子どものわずかな動きや表情の変化に教師が応える、やりとりとして進める。教師が一方的に体を動かす形にしない。
- 成果は短期間では表れにくいので、年間を通した計画で取り組む。
装具を外して取り組むかどうか、どこまで支えるかは、装具を使う目的や本人の状態、医学的な留意事項をふまえ、医師や理学療法士などと検討して決める。教師一人の判断で行わない。
伝える手段を広げる
話し言葉で伝えることが難しい子どもには、身振り、コミュニケーションボード、音声出力のできる機器(VOCA)などの補助代替コミュニケーション(AAC)を使って、意思を表す手段を広げる。自立活動で身に付けた機器の操作を、国語の作文や社会の調べ学習で使う場面を作ると、教科の学習にも参加しやすくなる。
医療的ケアと、多職種との連携
肢体不自由の特別支援学校には、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な子どもも在籍している。2012(平成24)年の制度改正で、研修を修了して都道府県知事の認定を受けた教員は、たんの吸引等の五つの特定行為のうち認定を受けた行為について、医師の指示や看護師との連携など一定の条件のもとで実施できるようになった。2021(令和3)年には「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が成立し、学校での支援体制の整備が進められている。
子どもの「身体の動き」や「コミュニケーション」を理解するには、学級担任だけでは足りないことが多い。自立活動の担当者に相談する、これまでの記録を読む、本人や保護者に尋ねる、保護者の了解を得て医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士から情報を得る、といった方法で、複数の目で実態をつかむ。複数の教師で一つの集団を指導するチームティーチングも広く行われており、指導の方針を教師間でそろえておくことが欠かせない。
教員として考えたいこと
通常の学級でも、肢体不自由のある子が在籍していれば、五つの配慮事項は授業づくりを見直す手がかりになる。(5)は、通級による指導など、その子が受けている支援との連携に置き換えて考える。体験が足りないまま言葉だけを覚えていないか、姿勢は安定しているか、書く代わりの手段はあるか、を一つずつ確かめる。
補助具や ICT を使うかどうかは、楽になるかどうかだけで決めない。その教科の時間に何を学んでほしいのかを先に決め、その目標に届くために必要な手段を、本人と相談しながら選ぶ。
参考:丹野傑史・下山直人・安藤隆男編『よくわかる肢体不自由教育』(ミネルヴァ書房、2022)第3部Ⅴ「重度・重複障害児の教育基盤の形成」・Ⅵ「教育課程と教科等の指導」・Ⅶ「自立活動の指導と個別の指導計画」・Ⅷ「教員の専門性と研修」/特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(平成29年告示)解説 各教科等編 第3章 第4「肢体不自由者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校」