
講義まとめ肢体不自由の心理・生理・病理肢体不自由自立活動:身体の動き(1)自立活動:身体の動き(2)自立活動:環境の把握(2)自立活動:心理的な安定(3)
講義まとめ講義まとめ・肢体不自由の心理・生理・病理体が思うように動かない子どもを理解する ― 原因となる病気、見え方と考え方の特性、障害受容
肢体不自由の心理・生理・病理で学んだ、運動が起こる仕組みと肢体不自由の主な原因(脳性まひ・二分脊椎・筋ジストロフィーなど)、脳性まひに伴いやすい視知覚の困難、障害受容の考え方、授業での姿勢の工夫をまとめる。
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肢体不自由の心理・生理・病理の講義では、体の動きに困難のある子どもについて、原因となる病気の仕組みと、それに伴う心理・認知の特性を学んだ。テキストは『肢体不自由児の教育』(放送大学教育振興会)で、肢体不自由児の理解と指導をまとめた章を含む『特別支援教育の基礎』も参考にした。
肢体不自由とは
肢体不自由は、身体の動きに関わる器官が病気やけがで損なわれ、歩く、書くといった日常生活の動作に困難がある状態をいう。「肢体」は手足(上肢・下肢)と胴体(体幹)を指す。
運動が起こる仕組みと、障害の起こる場所
体を動かすとき、脳で計画された運動の指令は、神経を通って脊髄に届き、末梢神経を経て筋肉に伝わる。筋肉が縮んだりゆるんだりすると、骨と関節が動く。テキストはこの道筋のどこが損なわれたかで、肢体不自由の原因を整理していた。
同じ「歩けない」でも、脳からの指令がうまく出ないのか、筋肉そのものが弱っていくのかで、体に起きていることも、配慮することも違う。
運動以外の困難をあわせ持つことが多い
肢体不自由のある子どもは、運動の障害に加えて、視覚や聴覚の障害、知的障害、言葉の障害、てんかん、食べ物を飲み込む嚥下の障害などをあわせ持つことが少なくない。痰の吸引や経管栄養など、医療的ケアが必要な子どももいる。
テキストは、子どもを理解するために確かめておくこととして、次の4つを挙げていた。
- どのような病気や障害か(本人に病名が知らされていない場合があるので注意する)
- 日常生活・学校生活でどのような困難があるか
- どのような支援が必要か
- 健康上の注意点と、してはいけないこと(禁忌)は何か
これに加えて、本人の希望や困りごと、意思の伝え方も、本人が答えやすい方法と時間を用意して本人から聞いておきたい。
主な原因となる病気
脳性まひ
脳性まひは、肢体不自由の特別支援学校に通う子どもの中で最も多い病気で、テキストでは在籍者のおよそ40%とされていた。日本で広く使われている定義は、1968年の厚生省の研究班によるもので、受胎から生後4週間までに生じた脳の病変による、運動と姿勢の異常とされる。病変そのものは進行しないが、症状は年齢とともに変わり得る。
体の動きの特徴から、主に次の型に分けられる。
| 型 | 主な特徴 |
|---|---|
| 痙直型 | 筋肉がこわばりやすく、動かそうとすると抵抗が強くなり、滑らかに動けない。関節の動く範囲が狭くなる拘縮や変形が起こりやすい |
| アテトーゼ型(不随意運動型) | 筋肉の緊張が変動し、意図しない動きが出る。姿勢が崩れやすく、緊張したときに体がこわばりやすい。話すときの発音にも困難が出やすい |
| 失調型 | バランスを取ることや、動きの距離・力の加減が難しい |
まひのある部位によって、四肢まひ(両手両足)、両まひ(両手より両足が重い)、片まひ(体の片側)にも分けられる。
痙直型両まひは、早産で生まれた子どもに多い。脳の中心近くにある脳室の周りの組織が傷つく脳室周囲白質軟化症(PVL)が原因になりやすく、ここには足と体幹への運動の経路が脳室に近い側を通っているため、手よりも足のまひが強く出る。後で述べる視知覚の困難も、このPVLと関係があるとされる。
二分脊椎
二分脊椎は、生まれる前に背骨(脊椎)と、その中の脊髄がうまく作られない先天性の病気である。いくつかの型があり、症状は型や部位によって違う。ここでは、学校で配慮が必要になることの多い、脊髄が損なわれる型について述べる。損なわれた高さより下で、運動と感覚の両方がまひする。腰のあたりに起こることが多く、主に足の動きに影響する。
学校生活で特に気をつけることがいくつかある。
- 感覚がまひしているので、けがや、やけどに本人が気づきにくい。長い時間同じ姿勢で座っていると、皮膚が傷つくこともある
- 多くの子どもに、膀胱と直腸の働きの障害がある。カテーテルで尿を出す導尿が必要なことが多く、学校では医療的ケアとして支援する。プライバシーを守れる場所も要る
- 水頭症をあわせ持つことが多く、脳にたまる髄液をおなかへ流す管(シャント)を入れている子もいる。管が詰まると頭痛や吐き気、眠気が出るので、そうした様子があれば早めに保護者と医療機関につなぐ
筋ジストロフィー
筋ジストロフィーは、遺伝子の変化によって筋肉を保つタンパク質がうまく働かず、筋線維が壊れやすくなって、筋力が少しずつ弱っていく病気である。脳性まひと違い、進行する。
代表的なデュシェンヌ型は、幼児期に転びやすい、うまく走れないといった様子で気づかれ、10歳前後に歩けなくなることが多い。その後、呼吸や心臓の筋肉の働きも弱まっていく。進み方には個人差があり、治療によっても変わる。テキストによれば、かつては10代後半とされていた寿命も、人工呼吸器などの医療の進歩で、平均で30歳を超えるようになった。知的障害や自閉スペクトラム症をあわせ持つ場合もある。
テキストが強調していたのは、次の2点である。
- 筋肉に負担のかかりすぎる運動は、かえって筋肉を傷めることがある。体育や自立活動の内容は医療機関と相談して決める
- 本人に病名や今後の見通しが知らされていない場合が少なくない。保護者と、何をどこまで伝えているか、本人がどう受け止めているかを確かめてから関わる。本人から病気について聞かれたときの答え方も、家族や医療者と相談しておく
骨形成不全など
骨形成不全は、骨が弱く折れやすい病気である。学校では、骨折をできるだけ減らす活動の工夫や、疲れたときに休める時間を取ること、歩くことが難しい場合に電動車いすなどを早めに検討することが挙げられていた。難聴を伴う場合もあるので、聞こえも確かめておく。
進行しない病気と、進行する病気
講義のレポートでは、脳性まひと筋ジストロフィーを比べた。進行しない病気と進行する病気では、同じ「肢体不自由」でも支援の向きが違う。
脳性まひでは、発達を促し、できることを少しずつ増やしていく支援が中心になる。筋ジストロフィーでは、できていたことが難しくなっていく中で、手段を早めに切り替えて、学ぶことや友達と関わることを続けられるようにする支援が中心になる。
ただし、これは中心になる向きの違いで、きれいに分かれるわけではない。脳性まひでも、成長とともに拘縮や背骨の変形、痛みなどの二次的な障害が出て、動きにくくなることがある。筋ジストロフィーでも、学ぶ力や発達を伸ばす支援は欠かせない。どちらも、目指すのは本人が望む活動に参加し続けることで、体の状態は一人一人違う。型や病名だけで支援を決めることはできない。
見え方と考え方の特性
視知覚の困難
ある肢体不自由の特別支援学校で視機能を検査したところ、約7割の子どもに何らかの問題が見つかったという報告がテキストで紹介されていた。脳性まひの子どもには、斜視や近視・乱視が多いとされる。
眼の働きとは別に、見たものを形や空間として捉える視知覚の困難もある。特にPVLによる痙直型両まひの子どもに見られやすい。
- 立方体の絵が、立体として見えにくい。平面の図形としてなぞってしまう
- 線が重なった図の中から、目当ての形を見つけにくい(図と地の区別の困難)
- ノートの枠の中に文字を収めて書くことが難しい
知能検査(WISC)では、言葉で考える力や、聞いたことを覚えておく力に比べて、積木で模様を作るような、目で見て組み立てる課題や、作業の速さを見る課題の得点が低くなりやすいとされる。ただし、手の動きや見え方の制約も成績に影響するので、検査の結果は、検査の条件や普段の学習の様子と合わせて専門家が読み取るものである。
教室では、手の動きの不自由さに見えるつまずきの中に、見え方の困難が隠れていることがある。プリントの情報を減らす、マス目を大きくする、行や枠を色で区切る、書き写す量を減らすといった工夫が考えられる。
行動の特性
脳に損傷がある子どもに見られることがある行動の特徴として、テキストは古くから指摘されてきた次の4つを挙げていた。
| 特性 | 様子 |
|---|---|
| 転導性 | 学習に関係のない音や物に、すぐ注意が向いてしまう |
| 抑制困難 | 手元の教材を次々に触るなど、体の動きを止めにくい |
| 固執性 | 一つのことから次のことへ、気持ちや行動を切り替えにくい |
| 統合困難 | 部分は分かっても、まとまった全体として捉えにくい。パズルの全体を完成させる、文章全体を要約するなど |
テキストによれば、どれも幼児にはよく見られ、多くは成長とともに目立たなくなるが、続く子どももいる。どの子にも当てはまるわけでもない。痛みや疲れ、課題の難しさ、教室の刺激の多さから同じような姿が出ることもあるので、その場の様子と合わせて見る。
性格を障害のせいにしない
過去の研究には、肢体不自由のある子どもは劣等感を持ちやすい、依存的であるといった結果もある。しかしテキストは、生活環境や養育の状況などを考えずに、障害のない子どもとの比較だけで決めつけてはならないとしていた。行動の制限が長く続くことが性格に影響する場合はあり得るが、それは障害そのものの性質ではない。
障害受容
価値観の転換としての障害受容
テキストで、日本で最も定着しているとされていたのが、上田敏(1980)による障害受容の定義である。障害受容は諦めではなく、障害に対する価値観の転換であり、障害があっても自分の人間としての価値は下がらないと分かることで、恥ずかしさや劣等感を乗り越え、積極的な生活態度に変わることとされる。
障害受容には、価値観の転換を説く理論や、ショックから回復までの段階を想定するステージ理論がある。子どもに障害があると知った親については、ドローターら(1975)の、ショック、否認、悲しみと怒り、適応、再起という段階のモデルがよく知られている。テキストによれば、障害受容の研究の多くは大人を対象にしたもので、子どもに当てはめるには無理があるかもしれない。
自己受容と社会受容
一方で、「障害受容」という考え方には批判もある。障害のない援助者が、障害のある人に期待していることにすぎないのではないか、誰もが決まった段階を順に通るわけではない、といった批判である。
南雲直二(2002)は、障害による苦しみを2つに分けて考えた。
自分の体をどう受け止めるかは本人の歩みで、周りが急がせるものではない。一方、周りの偏見や決めつけから来る苦しみは、社会の側が変わることで解消すべきものである。学校でいえば、教室の環境や周りの子どもの見方を整えることは、教員にできる社会受容の側の仕事になる。
障害が進行する場合や、病気やけがで途中から障害を負った場合は、本人も家族も受け止めるのに時間がかかることが多い。今の段階を決めつけず、話を聞き、必要に応じてスクールカウンセラーや医療機関と連携する。
授業でできること
見て、手を使える姿勢を作る
重い肢体不自由のある子どもが普段使っている車いすは、体を休め、押してもらって移動するための作りになっていることが多い。そのままの姿勢では、手元を見たり、手を思ったように使ったりしにくい場合がある。
テキストは、授業の中で、その活動に合った姿勢を整えることをポジショニングと呼び、教材の工夫や教員の関わり方と並んで大切だとしていた。姿勢を変えるときは、本人の様子(痛み、呼吸、疲れ)を確かめ、保護者や理学療法士・作業療法士と相談して決める。テキストで紹介されていた例は次のようなものである。
- 背骨が横に曲がる側弯が強く、後ろに倒した車いすを使っている生徒は、天井しか見えず手元が見えなかった。横向きの姿勢を工夫したことで、物を見ながら手で操作できるようになった
- スイッチを押してあいさつする場面で、片手を伸ばすと、反対の手や両足まで突っ張ってしまう子がいた。座る姿勢を整えて体を安定させると、見ながら押せるようになった
補助具とICTで学ぶ機会を広げる
握りを太くした鉛筆やスプーン、ノートや食器を机に固定する道具、パソコンの入力を助ける機器など、補助具には多くの種類がある。書くことが難しい子どもには、タブレット端末での入力や、写真で記録することも手段になる。道具は本人と一緒に試して、使いやすさや疲れ具合を確かめ、使いこなせるまで練習の時間を取る。
てんかんの発作に備える
脳性まひ、特に四肢まひの子どもには、てんかんをあわせ持つ子が多い。
周りの子どもの見方を育てる
テキストが紹介していた、障害のある人への態度を調べた1980年代以降の研究では、障害のある人と関わった経験がある人ほど好意的になるという結果が多い。ただし、変化がなかったり、かえって否定的になったりした研究も少なくない。テキストは、接触の量より質が問われるとし、直接の関わりを計画的に作り、障害についての知識と組み合わせることが必要だとしていた。
特別支援学校と小学校の交流及び共同学習でも、同じ場所にいるだけでは、お互いの見方は変わりにくい。同じ目当てを持って一緒に活動する時間を、計画して作ることが大切になる。
教員として考えたいこと
通常の学級にも、片まひのある子や、二分脊椎で導尿が必要な子が在籍していることがある。私がまず押さえておきたいのは、病名と、その子に必要な配慮と、してはいけないことを保護者と確かめることである。
字が枠からはみ出す、図形の問題で手が止まるといった姿を見たとき、手の動きの問題か、見え方の問題かを考えてみる。書くことに時間がかかる子なら、算数の答えを選択肢から指差したり、タブレットで入力したりできるようにして、書く速さと数の理解を分けて見取る。まずは、マス目を大きくして情報を減らしたプリントを一枚用意し、本人に使いやすいか聞くところから試したい。