教材研究ラボ
明るい教室で、眼鏡をかけた子が書見台に立てた大きな絵本に顔を近づけて読んでいる。手元をスタンドが照らし、隣で男性の先生がしゃがんで見守っている

講義まとめ視覚障害の心理・生理・病理Ⅰ視覚障害自立活動:環境の把握(1)自立活動:環境の把握(3)自立活動:心理的な安定(3)

講義まとめ講義まとめ・視覚障害の心理・生理・病理Ⅰ

見えにくい子どもを理解する ― 眼の仕組み、見え方の違い、教室での支援

視覚障害の心理・生理・病理Ⅰで学んだ、盲とロービジョンの違い、眼の仕組みと視力・視野などの視機能、主な眼疾患と見え方、見えにくい子どもの行動と心理、通常の学級でできる見えやすい環境づくりをまとめる。

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目次
  1. 視覚障害とは
  2. 盲とロービジョン
  3. 学びの場
  4. 眼の仕組み
  5. 視機能 ― 視力だけでは分からない
  6. 視力と視野
  7. 見えにくさの6つの状態
  8. 主な眼疾患と見え方
  9. 見えにくい子どもの行動と心理
  10. 眼を近づける、斜めから見る
  11. 見えにくさを言わない理由
  12. 通常の学級でできる見えやすい環境づくり
  13. 教員として考えたいこと

視覚障害の心理・生理・病理Ⅰの講義では、眼の仕組みと見え方の多様さ、そして通常の学級にいる見えにくい子どもをどう支えるかを学んだ。テキストは青柳まゆみ・鳥山由子 編著『新・視覚障害教育入門』(ジアース教育新社、2020年)と、香川邦生ほか『小・中学校における視力の弱い子どもの学習支援』(教育出版)である。

視覚障害とは

盲とロービジョン

視覚障害は、教育では大きく「盲」と「弱視」に分けられる。テキストは、視力の値で分けるより、学び方の違いで分けるほうが適切だとしていた。

  • 盲:主に触覚や聴覚を使い、点字で学習・生活する
  • 弱視:主に視覚を使い、普通の文字で学習・生活する

視覚補助具が進歩したので、視力が0.01の子どもでも、補助具を使って普通の文字で学んでいる場合もあれば、点字を使う場合、両方を使う場合もある。どの文字が合うかは、読み書きの様子や本人の気持ちを踏まえて決める。

医学で「弱視」というと、視覚が発達する時期に適切な刺激が入らず、視力の発達が妨げられた状態(片眼の場合も両眼の場合もある)を指す。教育での「弱視」とは意味が違うので、見えにくい状態を指す言葉として「ロービジョン」も使われている。

学びの場

視覚障害のある子どもは、視覚特別支援学校(盲学校)、小・中学校の弱視特別支援学級、通常の学級で学んでいる。通常の学級に在籍しながら、通級による指導を受ける子もいる。視覚特別支援学校の対象となる障害の程度は、学校教育法施行令第22条の3で、両眼の視力(眼鏡などで矯正した視力)がおおむね0.3未満か、視力以外の視機能の障害が高度で、拡大鏡などを使っても普通の文字や図形を見て認識することが不可能または著しく困難なもの、と定められている。 ただし、この程度に当てはまれば特別支援学校に行くと決まるわけではない。障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、専門家の意見などを踏まえて、市町村の教育委員会が総合的に判断する。通常の学級で、合理的配慮を受けながら学ぶ子どもも多い。

眼の仕組み

外の光は、角膜、瞳孔、水晶体、硝子体を通って網膜に届き、網膜で電気信号に変わって、視神経乳頭から視神経を通り脳へ送られる。主な部位の働きは次のとおりである。

部位 働き
角膜 眼のいちばん前にある透明な膜。光を大きく曲げてピントを合わせる
虹彩こうさい・瞳孔どうこう 虹彩が伸び縮みして、瞳孔の大きさを変え、入る光の量を調節する(カメラの絞り)
水晶体 厚さを変えてピントを細かく合わせる(調節)
硝子体しょうしたい 眼の中を満たす透明なゼリー状の組織
網膜 光を電気信号に変える(カメラのフィルムやセンサー)。中心の黄斑おうはんは細かいものを見る力がいちばん高い
視神経乳頭 網膜の神経が束になって眼の外へ出る出口。光を感じる細胞がないので、ここに当たる部分は見えない(盲点)

網膜には2種類の視細胞があり、錐体すいたいは形や色を、桿体かんたいは暗い所での明暗を見分ける。網膜からの信号は視神経を通り、途中で左右の情報が整理されて、脳の後ろの方(後頭葉)にある視覚の中枢に届く。角膜、房水(角膜と水晶体の間を満たす液)、水晶体、硝子体は、光を通すために透明で、まとめて透光体とうこうたいと呼ばれる。視神経や脳の視覚中枢に病気があると、眼球に異常がなくても見えにくくなり、視野の半分が見えなくなる(半盲)こともある。

光が眼に入り、視覚情報が脳に届くまでの道筋を、左から角膜、瞳孔(虹彩が大きさを調節)、水晶体、硝子体、網膜、視神経、脳の視覚中枢の順に箱で並べた図。角膜・水晶体・硝子体が透光体として色分けされ、網膜より先は光ではなく神経の信号として伝わることが示されている。下に、透光体が濁ると全体がかすんで見えること、網膜の中心(黄斑)の病気では見たい所が見えにくくなること、網膜の周辺の病気では周りが見えにくくなること、視神経や脳の病気では眼に異常がなくても見えにくくなることが、代表例として、それぞれの部位に対応させて添えられている

眼の病気を考えるときは、病名に加えて、どの部位の病気かを考えると見え方を想像しやすい、とテキストは述べていた。

視機能 ― 視力だけでは分からない

視力と視野

視力は、細かいものを見分ける力である。視力検査では、C の形をしたランドルト環の切れ目の向きを答える。切れ目がつくる角度(視角)が1分(1度の60分の1)まで見分けられれば視力1.0、10分までなら0.1になる。 視野は、一点を見つめたまま見える範囲である。視野の中に見えない部分があることを暗点といい、中心が見えない状態を中心暗点、周辺の視野が狭まり中心付近だけが残る状態を求心性きゅうしんせい視野狭窄という。

中心暗点と求心性視野狭窄の見え方を比べた図。左の中心暗点では、見ようとした真ん中がぼやけて欠け、周りは見えている。読む文字や人の顔など、見たい所が見えにくい。右の求心性視野狭窄では、周りの見えにくい範囲が濃く塗られ、真ん中だけが筒をのぞいたように見えている。着色は見えにくい範囲を示す模式で、本人の見え方をそのまま再現したものではない。足元の段差や人とのすれ違い、次の行を見つけることが難しい

同じ視力0.3でも、視野が狭い子と視野は保たれている子とでは、困ることがまったく違う。ほかにも、色の見え方、暗さや明るさに眼が慣れる働き(暗順応・明順応)、眼が小刻みに揺れる眼振がんしんの有無などが、見えにくさに関わる。

見えにくさの6つの状態

テキストは、見えにくさを次のような状態にたとえて説明していた。一人の子が、いくつかを重ねて抱えていることも多い。

状態 たとえ 例
ピンボケ ピントの合わないカメラ 屈折異常が眼鏡で十分に矯正できない
混濁 すりガラスを通して見る 白内障など透光体の濁り。まぶしがることが多い
暗幕不良 周りが明るすぎる映画館 瞳孔の調節がうまくいかない
光源不足 映写機の光が弱い 網膜色素変性症などで、薄暗い所が特に見えにくい
振とう 本を小刻みに揺らして読む 眼振。細かいものを捉えにくくなるが、本人には物が揺れて見えるとは限らない
視野の制限 見える範囲が欠けている 暗点、視野狭窄

主な眼疾患と見え方

眼疾患 どんな病気か 見え方と配慮
網膜色素変性症 網膜の視細胞が少しずつ減っていく進行性の病気。多くは桿体から障害が始まる 暗い所で見えにくい(夜盲やもう)、視野が周辺から狭くなるなど。症状や進み方には個人差がある。明るさの確保、周りの状況を言葉で伝える
緑内障 眼の中の圧力などで視神経が傷つき、視野が欠けていく 盲点の近くや周りから見えにくくなり、進むと視力も下がる
白内障などの透光体混濁 水晶体などが濁る かすんで見え、まぶしい。手術で濁りを取ったあとも、ピント調節の働きは補えない場合がある
未熟児網膜症 予定より早く生まれ、網膜の血管が発達する途中で異常が起こる 程度によって見え方が大きく違う
視神経萎縮いしゅく 視神経が細くなり働きが落ちる 視力の低下や、中心・周辺の視野の欠けなど、人によってさまざま

網膜色素変性症や緑内障のように見え方が少しずつ悪くなる病気では、子どもが将来への不安を抱えることがある。見え方の変化に気を配るとともに、気持ちに寄り添うことも配慮の一つになる。

見えにくい子どもの行動と心理

眼を近づける、斜めから見る

見えにくい子どもの多くは、教科書に顔がつくほど眼を近づけて読む。眼と物との距離(視距離)を縮めると、網膜に映る像は大きくなる。30cmから10cmに近づけば、網膜に映る像の大きさは3倍になる(読みやすさは、ピントや視野などにもよる)。眼を近づけて読むのは、その子が見えやすさを得るための工夫であることが多い。

視距離と網膜に映る像の大きさの関係を示す図。光学関係を簡略化した模式図。上段では、眼から30cm離れた対象が網膜に小さく映っている。下段では、同じ大きさの対象を10cmまで近づけると、網膜に3倍の大きさで映っている。ただし、強い遠視があるなど、近づけても見えるようにならない子もいると添えられている

顔を傾けて斜めから見る子もいる。テキストは、網膜の中心や角膜の真ん中に病気がある場合、その部分を避けて見ようとするためだと説明していた。眼振のある子が、眼の揺れが小さくなる向きで見ている場合もある。どちらも、その子なりに見えやすくするための工夫であることが多い。見え方を確かめずに「眼を離しなさい」「まっすぐ見なさい」と姿勢を直させると、かえって見えにくくさせてしまうことがある。 ただし、眼を近づければ誰でも細かいものまで見えるわけではない。強い遠視がある子のように、近づけても見えるようにならない場合もある。

見えにくさを言わない理由

テキストが紹介していた事例に、次のようなものがあった。教科書に眼を近づけて読んでいたら、先生から「居眠りするな」と叱られた。仕方なく眼を離したら何も見えなくなり、それからは教科書は見えないものとあきらめた。 見えにくい子どもは、自分の見えにくさをなかなか訴えないという。テキストは、その理由を3つ挙げていた。

  • みんなと同じでいたい、見えない子として特別扱いされたくない
  • 前の席にしてもらっても、黒板の前に出てよいと言われても見えなかった経験から、言っても仕方がないとあきらめている
  • 特に低学年では、見えにくさを言葉で伝える力が十分でない

そのため、学習の遅れが見えにくさのせいだと気づかれず、力不足や努力不足と思われてしまうことがある。前の席に移すだけでは十分に見えない子が多い、という指摘もあった。配慮が本当に役に立っているかは、本人に尋ねたり、様子をよく観察したりして確かめる必要がある。

通常の学級でできる見えやすい環境づくり

テキストは、見えやすい環境の条件を次のように整理していた。

工夫 具体例
網膜に大きく映す 拡大した教材や拡大教科書を用意する。弱視レンズや拡大読書器を使う。テキストは、低学年ではレンズより教材そのものを大きくするほうが疲れにくいとしていた。実際には、読みやすさや疲れ、扱いやすさを比べて選ぶ
情報を絞る 地図のように情報が混み合った教材は、線を単純にし、必要な情報だけにして、文字や線を太く大きくする
くっきり見せる 薄いプリントや細い線を避け、背景との明暗の差をはっきりさせる。白い紙に黄色や薄い緑の文字は見分けにくいが、暗い黒板では白や黄色のチョークが見えやすい
色の使い方 似た色を隣り合わせにしない。鮮やかな色を使い、色の境目に輪郭線を入れる。色だけで区別せず、線の種類や形、記号も合わせて使う
明るさを合わせる 一般には明るいほど見やすいが、白内障などでまぶしがる子もいる。教室全体の照明に加えて、手元のスタンドや遮光眼鏡で一人一人に合わせる
疲れにくくする 眼を近づけて読むので、少し高めの机にし、机の面を少し傾けたり書見台を使ったりする。高さは本人に試させて選ぶ

照明について、香川らのテキストは、1,000ルクスくらいまでは明るくするほど見やすくなるとしつつ、明るすぎると見えにくくなる子もいると述べていた。手元の明るさや光の向き、反射やまぶしさを、本人と確かめながら調整する。 見えやすくする工夫に加えて、見る負担を減らす工夫もある。板書や配付物を読み上げる、「これ」「あそこ」と言わずに位置や名前を具体的に言う、実物に触れて確かめられるようにする、音声教材や読み上げ機能を併用する、といった方法である。弱視の子でも、場面によっては音声を使うほうが学びやすいことがある。 どの工夫も、子どもと一緒に試し、読める大きさや距離に加えて、読む速さ、内容の理解、疲れ具合まで実際の課題で確かめながら選ぶことが大切だと感じた。

教員として考えたいこと

見えにくい子どもは、見えないことを隠したり、あきらめたりしていることがある。教科書に顔を近づけている子を見たら、注意する前に、どのくらいの距離でどのくらいの大きさの文字が読めるのかを、本人と一緒に確かめたい。 そのうえで、拡大した教材や手元の明かり、席の位置などを本人と相談して決める。保護者や特別支援教育コーディネーターと情報を共有し、必要に応じて眼科や視覚特別支援学校の相談支援につなぎながら、使ってみてどうだったかをこまめに聞いていきたい。

参考:青柳まゆみ・鳥山由子 編著『新・視覚障害教育入門』(ジアース教育新社、2020年)/香川邦生ほか『小・中学校における視力の弱い子どもの学習支援 ― 通常の学級を担当される先生方のために』(教育出版)/学校教育法施行令第22条の3