
盲学校から地域へ ― 視覚障害教育総論:歴史、4つの学びの場、専門性をどう支えるか
視覚障害教育総論で学んだ、明治の盲唖院から点字の誕生、弱視教育の始まり、特別支援教育への移行までの歩みと、特別支援学校・弱視特別支援学級・通級による指導・通常の学級という学びの場の現状、在籍者の減少や専門性の継承といった課題、特別支援学校のセンター的機能をまとめる。
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目次
視覚障害教育総論の講義では、視覚障害教育がどのように始まり、どんな学びの場で行われているのか、そしてどんな課題を抱えているのかを学んだ。テキストの一つは小林秀之・澤田真弓 編著『特別支援教育のエッセンス 視覚障害教育の基本と実践』(慶應義塾大学出版会、2023年)の第1章「視覚障害教育の現状と歴史」である。指導法の講義で学んだ教科指導や点字の話を、制度と歴史の面から見直す内容だった。
視覚障害教育の歩み
盲唖院から始まった
明治より前、視覚障害のある人の間では、当道座や瞽女のような職能の組織の中で、琵琶・三味線・琴などの音曲や、はり・あんまが師から弟子へ伝えられていた。江戸時代には、寺子屋で学んだ例もあったとされる。
学校としての視覚障害教育は、明治に始まった。1878(明治11)年に古河太四郎らが京都盲唖院(現在の京都府立盲学校)を開き、1880(明治13)年には楽善会が東京に楽善会訓盲院(現在の筑波大学附属視覚特別支援学校)を開いた。その後、明治から大正にかけて、各地に盲学校の前身が作られていった。
点字という「自分で書ける文字」
初めのころの盲唖院には、まだ点字がなかった。こよりで形を作った文字や、木の板に文字を浮き出させた凸字などが使われていたが、読むのに時間がかかり、何より視覚障害のある人が自分で書ける文字ではなかった。
点字は、1825年にフランスのルイ・ブライユが考えた文字である。ブライユ自身も視覚障害があった。日本では、東京盲唖学校の教員だった石川倉次が、ブライユの6点の点字を基に日本語の点字を作り、1890(明治23)年に採用された。テキストはこれを、視覚障害のある人が自由に読み書きできる文字を手に入れた出来事として位置づけていた。
義務制と弱視教育
1923(大正12)年の盲学校及聾唖学校令で、道府県に盲学校を置く義務が定められた。戦後、1948(昭和23)年から盲学校・聾学校の小学部の義務制が学年進行で始まり、中学部も1954(昭和29)年から学年進行で義務制になった。養護学校の義務制(1979年)より30年ほど早い。
弱視の子どもの教育は、1933(昭和8)年に東京の小学校に置かれた視力保存学級が始まりとされる。当時は、残っている視力を使いすぎないように守ることが一番の目標だった。戦後は盲学校の中で弱視教育が進み、目標は視力を守ることから、見る力を有効に使うことへ移っていく。1963(昭和38)年には大阪の小学校に弱視学級ができ、各地の小・中学校に広がった。
平成に入ると、子どもを盲学校に集めて教えることに加えて、地域の子どもを支える拠点になろうという「盲学校のセンター化構想」が出てくる。1993(平成5)年に通級による指導が制度になり、2007(平成19)年には特殊教育から特別支援教育へ移った。2013(平成25)年には、学校教育法施行令第22条の3に当てはまる子どもは原則として特別支援学校に就学する、という仕組みが改められた。今は、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、専門家の意見、学校や地域の状況などを踏まえて、市町村の教育委員会が総合的に判断する。
4つの学びの場
視覚障害のある子どもの学びの場は、特別支援学校(視覚障害)、弱視特別支援学級、通級による指導(弱視)、通常の学級の4つである。通級による指導は、通常の学級に在籍したまま一部の時間に受ける指導なので、在籍する場としては通常の学級と重なる。下の表の「対象のめやす」は就学先を考える目安であり、2013年からは、これだけで就学先が決まるわけではない。
| 学びの場 | 対象のめやす | 特徴 |
|---|---|---|
| 特別支援学校(視覚障害) | 両眼の視力がおおむね0.3未満、または視力以外の視機能の障害が高度で、拡大鏡などを使っても普通の文字・図形を見て認識することが不可能か、著しく困難な程度(学校教育法施行令第22条の3) | 幼稚部・小学部・中学部・高等部を置くことができ、高等部では理療科などの職業教育も行われる。多くの学校に寄宿舎がある |
| 弱視特別支援学級 | 拡大鏡などを使っても、普通の文字・図形を見て認識することが困難な程度 | 小・中学校に置かれる。見やすい環境を整え、保有する視覚を活用する指導や教科の指導を行う。通常の学級との交流及び共同学習もある |
| 通級による指導(弱視) | 上の程度で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導が必要な程度 | 大部分の授業を通常の学級で受け、一部の時間に弱視通級指導教室で、障害による学習上・生活上の困難の改善・克服を目的とする指導(視覚補助具の使い方など)を受ける |
| 通常の学級 | ― | 一人一人の見え方に合わせた配慮や環境整備(教材の文字の大きさやコントラスト、まぶしさへの対応、板書の示し方など)を受けながら学ぶ |
名前についても学んだ。2007年の法改正で盲学校は制度上「特別支援学校」になったが、特定の障害種だけを教える学校は盲学校の名前を使ってよいとされた。そのため今も、盲学校・視覚特別支援学校・視覚支援学校などの名前が混在している。
数字から見える課題
特別支援学校(視覚障害)の在籍者の減少
テキストによると、全国盲学校長会に加盟している特別支援学校(視覚障害)は2021年時点で67校あり、2,366人が在籍している。在籍者は1959年度の10,264人を最も多い年として、減り続けてきた。都道府県に1校だけの県が多く、人口の少ない県では同じ学年の集団を作れないことも多い。
学級全体に占める重複障害の学級の割合も、1989年度の24.8%から2020年度の44.7%に上がった。ただ、別の全国調査では、減っているのは主に単一障害の子どもで、重複障害の子どもの数はほぼ横ばいだとされる。重複障害の子どもが増えたのではなく、全体の中での割合が大きくなった、という読み方が大切だと学んだ。
同年代の集団が作れないと、友達と役割を分担したり、いろいろな意見に触れたりする機会を確保しにくい。そこで、地域の学校との交流及び共同学習や、オンラインで各地の特別支援学校(視覚障害)をつなぐ取り組みが進められている。
地域で学ぶ子どもの増加と、担当教員の経験
一方、弱視特別支援学級の在籍者は増えている。小学校では2007年度の245人から2020年度の456人に、中学校では85人から187人になった。ただし、テキストが紹介する全国調査では、小・中学校とも9割以上が子ども一人の学級で、担任は校内で相談できる相手や視覚障害教育の情報を得にくい。
テキストが紹介していた国立特別支援教育総合研究所の調査(平成29年度)では、回答した弱視特別支援学級の担任のうち、視覚障害教育の経験が0〜2年の人が、小学校で83%、中学校で91%を占めていた。担任が一番欲しい支援は「指導内容・指導方法」、次が「進路等の情報」だった。

専門性をどう引き継ぐか
特別支援学校(視覚障害)の側にも課題がある。在籍者が減ると教員の数も減り、県に1校しかないところが多いので、異動すれば別の校種の学校へ移ることになる。視覚に頼らない指導法のように積み上げた専門性を発揮する機会が少なくなり、新しく赴任した教員は、経験のないところから専門性を積み上げ直すことになる。
免許の面では、特別支援学校の教員は本来、小学校などの免許状に加えて特別支援学校教諭の免許状が必要だが、教育職員免許法の附則で、当分の間は特別支援学校教諭の免許状を持っていなくても教員になれるとされている。特別支援学校(視覚障害)で視覚障害の領域の免許状を持つ教員の割合は、2004年度の44.7%から2021年度の66.2%に上がったが、知的障害の領域(89.5%)と比べるとまだ低い。
地域の拠点としての特別支援学校(視覚障害)
こうした課題に対して期待されているのが、特別支援学校(視覚障害)のセンター的機能である。1999年の盲・聾・養護学校学習指導要領で地域のセンターとしての役割が明記され、2005年の中央教育審議会の答申では、次のような働きが例として示された。
- 小・中学校などの教員への支援(指導についての助言・相談、個別の教育支援計画を作るときの支援)
- 子どもや保護者への教育相談・情報提供(幼稚園などの幼児も含む)
- 子どもへの指導・支援(通級による指導、巡回による指導、就学前の乳幼児への支援)
- 医療・福祉・労働などの関係機関との連絡・調整
- 小・中学校などの教員への研修協力、施設・設備の提供
テキストが強調していたのは、これを地域支援の担当者だけで担わず、学校全体の組織で分担することだった。支援する範囲が県全体と広く、内容も多岐にわたるからだ。また、特別支援学校(視覚障害)が中心になって、地域の弱視特別支援学級や通級の担当者と授業研究やケース検討会を開いている地域もある。在籍者が減って実践の場が少なくなった特別支援学校の教員にとっても、専門性を高める場になっているという。
教員として考えたいこと
視覚障害のある子どもは、どの学びの場を選んでも、視覚障害教育の専門的な指導を受けられる必要がある。テキストはそう述べていた。視覚障害教育の専門性は、地域の小・中学校でも求められるようになっている。
通常の学級や弱視特別支援学級で見えにくい子どもを担任することになったら、まず本人・保護者から、どんな場面で見えにくいかを聞く。それを校内の特別支援教育コーディネーターと共有し、地域を担当する特別支援学校(視覚障害)の教育相談につなぐ。ルーペの持ち方や教材の文字の大きさのように、担任一人では判断しにくいことを、一緒に確かめてくれる相手がいる。
参考:小林秀之・澤田真弓 編著『特別支援教育のエッセンス 視覚障害教育の基本と実践』(慶應義塾大学出版会、2023年)第1章/学校教育法施行令第22条の3


