
講義まとめ発達障害教育総論発達障害自立活動:心理的な安定(2)自立活動:環境の把握(2)自立活動:人間関係の形成(3)
講義まとめ講義まとめ・発達障害教育総論学び方は一人一人違う ― 発達障害の定義、認知の個人差、行動の後に返すこと
発達障害教育総論で学んだ、発達障害の定義と診断名の考え方、感覚・知覚・認知の個人差、同じ学年の中にある発達の差、支援と援助の違い、行動の後のフィードバックを重く見る応用行動分析の考え方をまとめる。
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発達障害教育総論の講義では、発達障害の定義から、認知の発達、言葉の発達、応用行動分析、インクルーシブ教育まで幅広く学んだ。テキストは西永堅『基本から理解したい人のための 子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本』(日本実業出版社、2017年)である。講義を通して繰り返されたのは、人はそれぞれ学ぶ速さも学び方も違う、ということだった。
発達障害とは
発達期に現れる、発達の偏りや遅れ
発達障害は、発達期(低年齢のうち)に現れる障害をまとめて呼ぶ言葉である。身長や体重に個人差があるように、脳の発達にも個人差がある。講義では、発達障害を、誰にでもある発達の個人差の延長として考えるよう説明された。ただし、発達の速さだけで判断するものとは違い、学習や行動、対人関係などに特有の困難が現れる。
日本の法律では、発達障害者支援法(2004年成立、2005年施行)が、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能の障害で、症状が通常低年齢で現れるものを発達障害と定めている。この法律の定義には知的障害は含まれないが、医学や心理学では、知的障害も発達障害の一つとして扱うことが多い。
教育で使われてきた定義
文部科学省の報告では、主な発達障害が次のように定義されてきた。これは当時の教育上の定義で、現在の医学の診断基準とは違う点がある(例えばADHDは、現在の診断基準では「12歳になる前から」とされている)。また、学習・行動・社会性の困難は互いに重なることも多い。
| 名称 | 定義の要点 | 困難が出やすい面 |
|---|---|---|
| 学習障害(LD) | 全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するのうち特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す(1999年の報告) | 学習面 |
| 注意欠陥/多動性障害(ADHD) | 年齢や発達に不釣り合いな注意力、衝動性、多動性を特徴とし、社会的な活動や学業に支障をきたす。7歳以前に現れる(2003年の報告) | 行動面 |
| 自閉症 | 3歳くらいまでに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする(2003年の報告) | 社会性 |
医学では、アメリカ精神医学会のDSM-5-TR(2022年)や世界保健機関のICD-11が使われ、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、限局性学習症などの名称になっている。アスペルガー症候群や広汎性発達障害という区分は、DSM-5(2013年)以降は自閉スペクトラム症にまとめられた。
「症状があるから、その名前で呼ぶ」
発達障害の診断は、原因を検査で確かめて付けるものとは違い、決められた行動の特徴が当てはまるかどうかを中心に付ける。実際の診断では、特徴の数に加えて、続いている期間、複数の場面で見られるか、生活への影響、ほかの要因で説明できないかなどを医師が総合的にみる。このように、観察できる特徴によって定める定義の仕方を操作的定義という。講義ではこれを「逆さ認知」という講義独自の言い方で説明し、ADHDだから多動・衝動性・不注意があるのではなく、多動・衝動性・不注意があるからADHDと呼ぶのだと説明された。
この見方に立つと、診断名は子どもの全体を説明するものではない。同じ診断名でも困難の中身は一人一人違い、複数の診断が重なることもある。支援を考える手がかりは、診断名よりも、その子が何に困っているかになる。
感覚・知覚・認知の個人差
見えている、聞こえているのに、分からない
人が周りの世界をとらえるときには、次の3つの段階がある。
- 感覚:目や耳、皮膚などで刺激を受け取る
- 知覚:刺激を、ひとまとまりの意味のある対象としてつかむ
- 認知:知覚したものを、過去の記憶や経験と照らし合わせて意味づける
ふつうの視力や聴力の検査には通るのに、知覚や認知の段階でつまずく子どもがいる。怠けているように見えても、部分的な困難を抱えていることがある。
例えば、音に敏感な子どもにとって、掃除機の音は大きな苦痛になることがある。講義では、何の音か、いつ終わるのかが分からないと怖くて我慢できないが、「掃除機の音で、長くても10分くらいで終わる」と分かれば、我慢しやすくなることがあると説明された。音そのものは変わらなくても、意味が分かると受け止め方が変わる。ただし、意味が分かっても音そのものが苦痛な子もいる。その場合は我慢させず、離れた場所に移る、イヤーマフを使うなど、音を減らす方法を本人と一緒に選ぶ。
言葉の通じない国にいるとしたら
講義では、言葉が通じず、文字も読めない外国に一人でいる場面を想像した。電車の乗り方も分からず、そわそわして不安になり、泣きたくなったり怒りたくなったりする。不注意や衝動性に見える姿が、分からなさと不安から生まれることが実感できる。
そのとき助けになるのは、通訳、トイレのマーク、写真入りのメニュー、辞書、案内してくれる人である。教室に置き換えると、言葉に絵や写真を添える、見通しを示す、分からないときに聞ける相手を決めておく、といった支援になる。
同じ学年の中にある発達の差
生まれ月による差
日本の学校は4月に始まるので、同じ学年の中に、ほぼ1年分の生まれ月の差がある。低学年の1年は、発達の上では大きい。講義では、図形の模写のように就学前後にできるようになる課題でも、4月生まれと3月生まれでは、入学の時点でできる子の割合に差があると説明された。
台湾の子どもを対象にした研究(2016年)など海外の複数の研究で、同じ学年の中で年齢が低い子ほどADHDと診断されやすいことが報告されている。学年の中で幼いことによる落ち着かなさが、障害と見なされている可能性も指摘されている。診断率の差だけで誤診と決めつけることはできないが、学年内の比較だけで判断せず、月齢や場面ごとの様子も合わせて見る必要がある。学年で同じことを一斉に求める「年齢主義」が、子どもによっては無理を生むという問題提起だった。
抽象的な概念の理解
講義では、ピアジェの発達段階(具体的操作期はおよそ7〜11歳)を紹介したうえで、9歳ごろから目に見えない抽象的な概念が分かり始める子が多いと説明された。時間や分数のように目に見えないものは、低学年の子どもには理解しにくいことがある。理解の仕方には個人差があり、残り時間を色で示すタイマーのように、見えないものを見えるようにする工夫が支援になる。
支援の考え方
講義での、支援と援助の捉え方
講義で区別されたのが、支援と援助である。サッカーに例えると、援助はボールを直接届けるアシストで、支援はボールに直接触れずに周りから支えるサポートにあたる。答えを直接教えるのは援助、ヒントを出して子どもが自分で答えにたどり着けるようにするのが支援になる。主人公は子どもであり、相手が理解しやすいように支えることが支援である。眼鏡や車いす、パソコンも、本人が自分でできるようにする支援の道具といえる。実際には、直接教える、ヒントを出す、道具を使うといった関わりを、その子の必要に応じて組み合わせることになる。
していいことを、見える形で伝える
「廊下を走らない」は、絵カードにしにくい。走っている絵に×を付けても、子どもの注意は走る姿に向いてしまう。「廊下は歩きましょう」なら、歩く絵で示せるうえ、歩いているときに褒めることもできる。「静かにしなさい」より、声の大きさを数字やものさしで示すほうが伝わりやすい場合がある。
いつ、何を、どこまでやるのかが分かると、安心しやすくなる子が多い。経験したことのない場面は不安になりやすいので、一日の予定を絵カードで示したり、事前に見通しを伝えたりする。絵、写真、実物、短い言葉のどれが伝わるかは子どもによって違うので、使ってみて理解できているかを確かめる。
行動の後に返すことを重く見る
応用行動分析では、行動の前のきっかけ(先行刺激)、行動、行動の直後に起きること(後続刺激)の3つに分けて行動をみる(ABC分析)。教室では、指示や声かけといった行動の前の働きかけに目が向きがちだが、講義では、行動が繰り返されるかどうかには、行動の直後に何が起きたかが大きく関わると強調された。
「がんばれ」は行動の前にかける言葉で、「よくがんばったね」は行動の後に返す言葉である。注目されていないときに騒いで周りが反応すると、騒ぐことで注目が得られると学ぶことがある。注目を得ることがその行動を続けさせていると考えられる場合は、その行動にはなるべく反応せず、適切な行動をしたときにすぐ認める。反応を控えるのは行動に対してで、その子を無視するわけではない。危険な行動や、周りの子が困る行動を放っておいてよいわけでもない。また、同じ行動でも、課題から逃れたい、手伝ってほしいなど別の理由で起きていることがある。その場合は「手伝って」「休みたい」といった代わりの伝え方を教える。褒めることがその子にとって効果があるかも、行動が増えたかどうかで確かめる。行動の意味を探る方法は、知的障害の講義まとめでも扱った。
講義では、必要な手がかりを出して失敗させずに正しい行動を積み重ね、できるようになるにつれて手がかりを減らしていく無誤学習も紹介された。また講義では、正答率が85%くらいの課題で学ぶと伸びやすいという目安も示された。分からない課題が続くと、子どもは「できない」経験ばかりをためてしまう。集中できないように見える理由が、課題が分からないことにある場合もある。
個別の指導計画で、その子の伸びを見る
毎日一緒にいると、子どもの変化には気づきにくい。1年ぶりに会う親戚のほうが「大きくなったね」と気づくのは、1年前の記憶と比べているからである。個別の指導計画で目標と支援を決め、指示を何回出したか、一人でできた回数は何回かといった記録を残しておくと、去年の記録と比べて、その子自身の伸びを確かめられる。比べる相手は、他の子より過去のその子になる。
教員として考えたいこと
通常の学級にも、読み書きや計算、ルールの理解、気持ちの切り替えに困難のある子どもがいる。私がまず意識したいのは、指示を「〜しよう」の形で出し、できたときにすぐ短く認めることである。予定や残り時間を黒板の端に絵とタイマーで示すことは、困難のある子にも、学級の多くの子にも分かりやすい支援になる。気になる子がいたら、診断を待たずにできる工夫から始め、本人や保護者の思いを聞きながら、特別支援教育コーディネーターなど校内の先生と相談して支援を考えたい。