
学校を動かす計画と、事故の日の動き ― 教育経営・学校安全論:特色ある学校づくり、学校安全の枠組み、重大事故への対応
教育経営・学校安全論の講義で学んだ、学校の自主性・自律性と特色ある学校づくり、学校評価とカリキュラム・マネジメントのつながり、学校安全の三つの領域と三つの活動、学校保健安全法が求める計画、重大な学校事故が起きたときの対応の流れと記者会見の想定問答をまとめる。
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目次
教育経営・学校安全論の講義では、学校という組織をどう運営していくか(学校経営)と、子どもの安全をどう守るか(学校安全)を学んだ。テキストは小島弘道 編『学校経営』(学文社)である。課題のレポートは二つで、一つは「特色ある学校づくり」とカリキュラム・マネジメントを説明して自分なりの学校づくりを構想するもの、もう一つは重大な学校事故を想定して、記者会見で使う想定問答集を作るものだった。
学校経営と特色ある学校づくり
学校の自主性・自律性
学校経営は、校長だけの仕事に見えやすい。しかし講義では、学校の目標を立て、教育課程を組み、人や時間、施設をどう使うかを決めて実行し、その結果を確かめて直していく一連の営みとして扱った。担任が学級で行う工夫も、その一部になる。
「特色ある学校づくり」が強く言われるようになった背景には、学校の自主性・自律性を高める方向への制度の変化がある。1998年(平成10年)の中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」は、公立学校が家庭や地域の要望に応え、できる限り各学校の判断で特色ある教育活動を展開できるようにすることを求めた。その後、学校評議員の制度(2000年)や、保護者・地域の人が学校運営に参加する学校運営協議会(コミュニティ・スクール)が作られていった。
学校が自分で決める範囲が広がれば、その結果を示す責任も生まれる。2007年の学校教育法の改正で、学校評価の規定が置かれた(第42条)。学校教育法施行規則は、教職員による自己評価とその結果の公表を義務とし(第66条)、自己評価の結果を踏まえて保護者や地域の人などが行う学校関係者評価と、その公表を努力義務としている(第67条)。結果は設置者に報告する(第68条)。
カリキュラム・マネジメントとつなぐ
レポートでは、特色ある学校づくりを「学校が独自の教育ビジョンをもち、教育課程の運営や教育環境の整備を通じて具体化していく取り組み」と捉え、それを支える方法としてカリキュラム・マネジメントを位置づけた。目指す学校の姿を掲げても、教育課程の中に時間と内容が用意されなければ、行事の一つで終わってしまうからである。
構想として、地域の自然環境を生かした環境教育を学校の特色にする案を考えた。
| 取り組み | 内容 | カリキュラム・マネジメントとの関係 |
|---|---|---|
| 自然体験学習プログラム | 全学年で、地域の森林や川での観察や清掃活動を行い、生き物のつながりや環境を守る活動を学ぶ | 生活科・理科・社会科・総合的な学習の時間をつないで、学年ごとの系統を組み立てる |
| 地域との連携 | 地域の環境保護団体と連携し、外部講師による授業を行う | 学校の外の人材を、教育課程の実施に必要な体制として確保する |
| 環境フェスティバル | 保護者や地域の人を招き、子どもが学んだことを発表する | 子どもの発表や参加した人の声を、翌年の計画を直す材料にする |
ここで気をつけたいのは、特色を学校の看板にすることが目的になってしまうことである。子どもや地域の実態から出発し、学校評価で成果と課題を確かめ、教育課程を直していく。特色ある学校づくりは、カリキュラム・マネジメントと学校評価の循環の中で続いていくものだと考えた。
学校安全の枠組み
三つの領域と三つの活動
学校安全は、生活安全・交通安全・災害安全の三つの領域で整理される。そして、子どもが自分で危険に気づいて安全に行動できる力を育てる「安全教育」、子どもの心身の状態や行動、施設・設備を確かめて危険を取り除き、事故が起きたときに対処する「安全管理」、その二つを校内の体制や家庭・地域との連携でつなぐ「組織活動」の三つの活動で進める。国は学校保健安全法に基づいて「学校安全の推進に関する計画」を定めており、現在は第3次の計画(2022年度から2026年度)が進められている。
学校保健安全法が求めること
学校安全の法的な土台は、学校保健安全法の第3章(第26条〜第30条)にある。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 第26条 | 学校の設置者は、事故や災害などから子どもを守り、危険が生じたときに適切に対処できるよう、施設・設備や管理運営体制を整えるよう努める |
| 第27条 | 学校は、施設・設備の安全点検、通学を含む安全指導、職員の研修などについて「学校安全計画」を作り、実施する |
| 第28条 | 校長は、施設・設備に安全上の支障があれば、改善の措置をとる。できないときは設置者に申し出る |
| 第29条 | 学校は、危険が発生したときに職員がとる措置の内容と手順を定めた「危険等発生時対処要領」を作る。校長はそれを職員に周知し、訓練を行う。事故などで心身に影響を受けた子どもや関係者には、回復のための支援を行う |
| 第30条 | 学校は、保護者と連携し、地域の警察署などの関係機関、安全のための活動を行う団体、住民などとの連携を図るよう努める |
危険等発生時対処要領は、一般に「危機管理マニュアル」と呼ばれる。作っただけでは、いざというときに体は動かない。不審者の侵入、地震、プールや体育の事故など、場面ごとに誰が何をするかを決め、訓練で確かめておく。移動に介助が必要な子どもや、口頭の指示が伝わりにくい子どもについては、誰が付き添い、どの経路で、どんな合図で伝えるかも決めておく。
体育の授業は、安全教育と安全管理が重なる場面である。跳び箱なら、授業の前に子どもの体調を確かめ、器具やマットにがたつきやずれがないかを点検する。子どもの運動経験に合わせて段の高さや課題を選べるようにし、跳ぶ子どもの横に教師が立って補助できる位置を取る。待っている子どもには、跳ぶ子どもとの間をあけて並ぶ理由を伝え、自分たちで安全を保てるようにする。

重大な学校事故が起きたとき
対応の流れ
レポートでは、5年生の体育の授業中、跳び箱の練習で子どもが跳躍に失敗して頭を強く打ち、救急搬送されたが意識が戻らない、という事故を想定した。こうした重大事故への対応は、文部科学省の「学校事故対応に関する指針」(2016年策定、2024年改訂)に、基本的な考え方がまとめられている。
発生直後は、応急手当を最優先する。反応と呼吸を確かめ、普段どおりの呼吸がないときや判断に迷うときは、通信指令員の指示を受けながら心肺蘇生を行い、AEDを使う。頭や首を強く打った子どもは、不用意に動かさない。一人で全てを抱えず、複数の教職員で分担し、指揮をとる人をすぐに決める。119番通報は第一発見者を含めて誰でもすぐにかけられるようにしておき、通信指令員の指示は応援に来た教職員とも共有する。記録の係を決めて、時刻と対応を書き留めていく。その場にいたほかの子どもは安全な場所に移し、別の教職員が付く。保護者には、できるだけ早く第一報を入れる。
指針は、学校の管理下(登下校中を含む)での死亡事故や、治療に30日以上かかる負傷・疾病、意識不明、身体の機能の喪失などの重篤な事故を、学校の設置者に報告する対象としている。治療期間がまだ分からなくても、30日以上になる可能性が高ければ報告する。死亡や意識不明など命に関わる事案は、都道府県などを通じて国にも一報を入れる。調査の結果を待たず、危険が分かった器具や活動は、すぐに使うのをやめるか方法を変える。
指針のQ&Aによれば、その後の基本調査は、基本的な事実関係を整理するための調査である。およそ3日以内を目途に関係する全ての教職員から聞き取り、調査を始めてから1週間以内を目安に、保護者に経過と整理した情報を説明することが望ましい。要因の分析は、外部の専門家が加わる詳細調査で行う。改訂版の指針は、原則として基本調査を行った全ての事案で詳細調査を行うことが望ましいとし、教育活動や事故直後の対応に問題があった場合、要因が特定できない場合、保護者が望む場合などは、少なくとも移行するとしている。移行するかは、保護者の意向を十分に確かめながら設置者が判断する。同じQ&Aは、これらの調査は民事・刑事上の責任を追及するためのものではなく、学校と設置者が事故の当事者として事実に向き合い、再発防止に生かすためのものだと説明している。
記者会見の想定問答
重大事故では、記者会見を開くことがある。レポートでは、①事故の種類、②発生時の状況、③発生時の対応、④今後の対応をまとめたうえで、⑤記者から出そうな質問を五つ考え、回答を作った。講義を振り返ると、回答の中には、調査の前に学校が評価を言い切ってしまっているものがあった。直すなら次のようにしたい。
| 想定される質問 | レポートの回答 | 見直した考え方 |
|---|---|---|
| 事故の原因は何か | 原因は特定していないが、器具使用時の安全管理の見直しが必要と認識している | 確認できた事実(時刻、場所、活動の内容、その場の指導体制)と、調査中のことを分けて答える |
| 教員の監督が不十分だったのではないか | 現時点では、監督不足が直接の原因とは言えない | 否定も肯定もせず、当時の指導体制を事実として示し、要因は調査で明らかにすると答える |
| 救急対応は適切だったか | 迅速な対応ができたと考えている | 通報や手当の時刻を時系列で示し、適切だったかの判断は調査に委ねる |
| 学校としての責任をどう考えるか | 重く受け止め、責任を痛感している | 重く受け止めていることに加え、調査と再発防止に何をいつまでに行うかを示す |
| 保護者や地域にどう説明するか | 個別に連絡しており、説明会を開く予定 | 被害を受けた子どもの保護者への説明を先にし、その意向を確かめてから公表する範囲を決める |
想定問答を作る前提として、教職員それぞれの記録を残し、確認できた事実、証言が食い違っている点、まだ確かめていない点を分けて整理する。説明する窓口を決め、誤りが分かったら速やかに訂正する。分からないことは分からないと言い、いつ、どのように説明するかを示す。被害を受けた子どもの名前や病状は、保護者の意向を確かめないまま話さない。
教員として考えたいこと
学校経営も学校安全も、校長や管理職の仕事として遠くに感じやすい。けれども、保護者や地域の人が学校を評価するときに目にしているのは毎日の授業と学級であり、事故の第一発見者には、担任を含めてどの教職員もなりうる。
年度の初めに、勤務校の危機管理マニュアルを読み、体育の授業中に子どもが頭を打って意識がない場合、自分が何をし、誰に何を頼むか(119番、AED、ほかの子どもの誘導、管理職への連絡、記録)を1枚の紙に書き出しておく。その紙を学年の先生と見せ合えば、分担の抜けにも気づける。
参考:小島弘道 編『学校経営』(学文社)/学校保健安全法 第26条〜第30条/学校教育法 第42条、学校教育法施行規則 第66条〜第68条/文部科学省「学校事故対応に関する指針【改訂版】」(2024年3月)と同Q&A/文部科学省「第3次学校安全の推進に関する計画」(2022年)/中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」(1998年)


