教材研究ラボ
明るい教室で、5年生の子どもたちがタブレットに映った三角形や長方形を指で切ったり動かしたりしている。前の大きな画面には、直角三角形が長方形に変わる様子が映り、男性の先生が机の間を歩いて女の子のタブレットをのぞき込んでいる

講義まとめ生徒指導・教育相談教育方法・技術論(情報通信技術の活用を含む)

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出口から授業を組み立てる ― 教育方法・技術論:学習目標と評価、協同学習の条件、ICTの使い分け、情報モラル

教育方法・技術論(情報通信技術の活用を含む)の講義で学んだ、学習分析から目標・評価・活動の順に授業を設計する考え方、話し合いが成り立つ協同学習の条件、一斉・個別・協働の学習でのICTの使い方、情報の確かめ方と著作権の扱いを、5年算数「面積」の指導案を例にまとめる。

作成

目次
  1. 授業は「出口」から設計する
  2. 学習分析と学習目標
  3. 目標・評価・活動をかみ合わせる
  4. 話し合いが成り立つ条件
  5. ICTの使い分け
  6. 情報モラルと著作権
  7. 情報を確かめる力
  8. 教材と著作権
  9. 教員として考えたいこと

教育方法・技術論の講義では、授業をどう設計し、その中で情報通信技術(ICT)をどう使うかを学んだ。テキストは稲垣忠 編著『教育の方法と技術 Ver.2 ― IDとICTでつくる主体的・対話的で深い学び』(北大路書房)である。書名にあるIDは、インストラクショナルデザイン(授業や教材を効果的に設計するための考え方)のことだ。講義の課題として、小学5年算数「面積」の学習指導案や、1年生の道徳の指導案も作った。

授業は「出口」から設計する

学習分析と学習目標

テキストは学習指導案を、どんな授業や単元を行うのか、その背景やねらい、教材の捉え方、授業の展開をまとめた「授業の設計書」と説明していた。指導案には、基本情報、児童、教材、指導、単元、本時、評価の項目が並ぶ。

設計の出発点は二つある。一つは、学習者が今どんな状態にあるかを調べる学習分析、つまり「入口」の確認である。もう一つは、単元や授業の終わりに学習者にどうなっていてほしいかという「出口」、つまり学習目標をはっきりさせることだ。

5年算数「面積」の第1時で考える。指導案では、4年で長方形と正方形の面積の公式を学び、5年で合同な図形を学習済みの学級を想定した。ただ、学習したことと今使えることは違うので、導入で長方形の面積を求められるかを確かめるのが入口の確認になる。出口は、指導案の評価規準を基に「長方形や正方形に帰着させて、直角三角形の面積を求めることができる」と整理した。

目標・評価・活動をかみ合わせる

出口を決めたら、そこに着いたことをどう確かめるかを考える。評価規準(何ができればよいか)と、到達したと判断する具体的な姿を、目標と一緒に決めておく。この例なら「変形した図と式を対応させて、長方形の面積を使える理由を説明できる」が到達の姿で、答えは合っていても変形の理由を説明できない子どもには、図のどこが長方形のどこに移ったかを指でたどらせる、といった支援を考えておく。学習活動は、その後で「出口にどうたどり着くか」として考える。

授業を設計する順序の図。①学習分析(入口:今どこにいるか)は、既習の内容(想定)として長方形・正方形の面積、合同な図形で、長方形の面積を求められるかを確かめる。②学習目標(出口:どうなってほしいか)は、長方形などに帰着させて、直角三角形の面積を求めることができる。③評価(出口に着いたと分かる方法)は、到達と判断する姿として変形した図と式を対応させて求め方を説明できることを挙げ、ノート・タブレットで確認する。④学習活動(出口へのたどり着き方)は、自力解決・グループ交流・全体交流で、ICTの使い方もここで決める。③から④へ点線の矢印があり、授業中の評価を見て支援や活動を調整する、とある。下に、目標・評価・活動の3つがかみ合っているかを確かめる、とある

授業中に評価して、到達していない子どもがいれば支援や活動を調整する。活動から先に考えると、楽しい活動ができても、何が身に付いたのかを確かめられないことがある。目標・評価・活動の三つがかみ合っているかを見直すことが、設計の中心になる。ICTも同じで、使うこと自体を目的にしない。ICTは、目標にたどり着くための道具の一つとして、学習活動を考える段階で選ぶ。

話し合いが成り立つ条件

主体的・対話的な学びを目指してグループ活動を入れても、話し合いが進まないことがある。講義のグループワークでも「なかなか話が進まない」「言葉だけでは十分に理解できない」という声が出た。

テキストは、協同学習が成り立つための要素として次のものを挙げていた(ジョンソンらによる整理)。

要素 意味 授業での手立ての例
互恵的な協力関係 自分の成功が仲間の成功につながり、互いに必要としている 「全員が求め方を説明できる」をグループの目標にし、互いの説明を確かめ合う
個人の責任 一人一人が自分の役割を果たし、自分も学ぶ 話し合いの前に各自の考えをノートに書かせ、交流の後に一人で類題を解いて説明を書く
相互作用の促進 説明し合い、助け合う 自分の図を見せながら説明する時間を取る
社会的スキル 聴く、質問する、意見をまとめるなどの技能 話し合いの仕方を、事前に教えて練習する
グループの改善手続き 話し合いの進め方を振り返って改善する 終わりに、グループの話し合い方を振り返る

また、主体的に学ぶには、学習に興味・関心をもてること、取り組む価値を感じられること、何をどのように学ぶか、次にどうしたいかを自分で決められる「学びのコントロール権」をもつことが大切だとしていた。

ICTの使い分け

テキストは、ICTの活用を学習の形態ごとに整理していた。一斉学習では、教師が図や動きを大きく示し、どこに注目するかを全員で共有する。個別学習では、一人一人が自分のペースで操作し、試す。協働学習では、考えを見せ合い、比べ、練り上げる。

学習の形態とICTの使い方の図。一斉学習(教師が全体に示す)は、大きな画面で図や動きを全員に見せる。面積の例では、三角形を切って回し、長方形にする動画で求め方を確かめる。個別学習(一人一人が自分のペースで)は、自分で操作し、試し、考えを記録する。面積の例では、タブレット上で図形を切る・動かす・線を引く、何度でもやり直せる。協働学習(考えを見せ合い、練り上げる)は、画面を見せ合う、共有して比べる。面積の例では、操作した画面を見せながら求め方を説明し合い、いろいろな方法に気づく

面積の指導案では、図形の変形を思い浮かべることが難しい子どもがいることを想定して、三つを組み合わせた。導入では画面に8種類の図形を示し、面積を求められる長方形と正方形に目を向けさせる。自力解決では、タブレット上で直角三角形を切ったり動かしたり線を引いたりして、長方形や正方形に帰着させる方法を探す。図をかき直す負担を減らし、考える時間を確保することをねらった。ただし、操作に慣れていないと紙より時間がかかることもあるので、操作の練習をしておくことや、紙の図形を切って考えることも選べるようにしておく。グループと全体の交流では、操作した画面を見せながら説明し、求め方がいくつもあることに気づかせる。まとめでは、三角形の一部を切り取って回し、長方形にする過程を動画で確かめる。

直角三角形の面積を長方形に帰着させる二つの方法の図。方法1は、同じ直角三角形を2つ合わせると、底辺×高さの長方形になり、直角三角形はそのちょうど半分なので底辺×高さ÷2。方法2は、高さの半分の所で水平に切り、上の小さな三角形を、斜めの辺の真ん中の点を中心に半回転させて移すと、底辺はそのまま、高さが半分の長方形になり、底辺×(高さ÷2)

一つ目は、長方形が対角線で合同な二つの直角三角形に分けられるという既習を使う方法、二つ目は、切って移しても面積が変わらないことを使う方法である。どちらも長方形に帰着させているので、交流ではこの共通点に気づかせたい。

グループの机で、4人の子どもがそれぞれタブレットを持ち、図形の画面を見せ合っている。男の子が自分のタブレットをほかの子に向けて身振りを交えて説明し、女の子が画面を指さしている。奥には男性の先生が立ち、教室の様子を見ている

テキストは、指導者用・学習者用のデジタル教材に加えて、VRやAR、AIなどの先端技術が学びを広げる可能性にも触れていた。ただ、どれを使う場合も、目標にたどり着く道具として選ぶことは変わらない。

情報モラルと著作権

情報を確かめる力

ICTを使う学習が広がるほど、基本的な操作の差が学習の差になりやすい。操作に時間がかかる子どももいるので、学習の初めに基本操作を体験する時間を取り、操作に慣れた子どもがペアやグループで教え合える形にする。

インターネットの情報には、誤ったものや偏ったものもある。誰が発信したか、いつ公表されたか、何を根拠にしているかを確かめる習慣を、学習の中で繰り返し身に付けさせる。

講義の課題で作った1年生の道徳の指導案では、ニュース係の子どもが、よく調べずに書いた新聞を貼り出して友達に責められる読み物を使った。道徳の時間のねらいは「みんなのために働くよさ」で、正しい情報を伝えることの大切さには、まとめの教師の話で触れる構成にした。確かめる技能そのものは、たとえば学級の係の新聞を書く前に、予定表を見たり担当の先生に聞いたりして確かめる活動として、別に経験させるとよい。

教材と著作権

教材を作るときは著作権にも気をつける。著作権法第35条は、営利を目的としない学校などで、授業を担当する教師や授業を受ける子どもが、授業の過程で使うために必要な限度で、公表された著作物を許諾なしに複製できると定めている。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合(ドリルやワークブックなど、子どもが一人一冊買うことを前提にしたものを人数分コピーするなど)は対象にならない。2018年の法改正で、オンライン授業での配信のような公衆送信も、補償金を払う仕組み(授業目的公衆送信補償金制度)のもとで許諾なしにできるようになり、2020年4月から施行された。授業の中で使える資料でも、学校のウェブサイトで誰でも見られるように公開するのは授業の過程とは言えないので、別に許諾が必要になる。

引用は、第35条とは別の第32条の決まりである。出典を書けば自由に使えるわけではなく、自分の文章が主で引用部分が従になっていること、引用部分をかぎかっこなどではっきり区別すること、目的に必要な範囲にとどめることなども求められる。子どもにも、インターネットから取った画像や文章を作品に使うときの決まりを、学年に合わせて教える。

教員として考えたいこと

ICTが一人一台になり、「何に使うか」から授業を考えたくなる場面は増えた。そんなときこそ、指導案の目標の欄に戻り、出口を一文で書けるかを確かめる。そのうえで、たとえば面積の授業なら、紙とタブレットのそれぞれで図形を変形させる時間を試してみて、変形の理由を説明し合う時間を多く残せる方を選ぶ。

参考:稲垣忠 編著『教育の方法と技術 Ver.2 ― IDとICTでつくる主体的・対話的で深い学び』(北大路書房)/著作権法第32条・第35条