
聴くことから始める ― 教育相談:受容と指導の二つの態度、傾聴の技法、チーム学校での連携
教育相談の講義で学んだ、教師が行う教育相談とスクールカウンセリングの違い、指導的な態度と受容的な態度、傾聴の技法(うなずき・くり返し・要約・質問・沈黙)、相談の場の作り方、チーム学校とコンサルテーション、連携するときの情報の扱いをまとめる。
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教育相談の講義では、教師が子どもの悩みにどう向き合うか、そして教師一人では抱えきれない問題を学校全体や校外の機関とどう支えるかを学んだ。テキストは、会沢信彦 編著『教育相談の理論と方法』(北樹出版)と、森田健宏・吉田佐治子 編著『よくわかる!教職エクササイズ 教育相談[第2版]』(ミネルヴァ書房、2024年)である。
教師の教育相談と、スクールカウンセリング
学校で行われる相談には、教師が行う教育相談と、スクールカウンセラー(SC)が行うスクールカウンセリングがある。
文部科学省は教育相談を、一人一人の子どもの教育上の問題について、本人や保護者に望ましいあり方を助言することだと説明している。そして、1対1の相談に限らず、全ての教師が子どもに接するあらゆる機会をとらえて、教育相談的な配慮をすることが大切だとしている(中学校学習指導要領解説 特別活動編、2008年)。面談の時間だけでなく、普段から目をかけ、声をかけること自体が教育相談になる。
スクールカウンセラーは心理の専門家として、子どもや保護者の心理的な見立て(アセスメント)とカウンセリング、教師への助言(コンサルテーション)、学級や学校の集団に向けた心理教育を行う。相談できる相手が担任のほかにもいることは、子どもにとって心強い。担任には話せないこともあるからだ。
指導的な態度と受容的な態度
テキストは、教師が子どもの悩みに関わるときの態度を二つに分けていた。
一つは指導的な態度である。言い聞かせる、説得する、生活の改善を指導する、励ます、忠告するなど、教育の専門家として能動的に関わる。問題行動を抑えることに加えて、学校生活に適応していく助けにもなる。
もう一つが受容的な態度で、ロジャーズが始めた来談者中心療法が基礎になっている。ロジャーズは、人には自分で問題を解決していく力があると考えた。相談する人が自分の悩みにどう向き合いたいかに真剣に取り組めば、聴き手が無条件に肯定的な関心を向けることで自己理解が進み、成長していける、という考え方である。
二つは場面に応じて使い分ける。ただし、気持ちを受け止めることと、行動を認めることは違う。テキストが挙げていたのは、イライラして同級生に暴力をふるってしまった子どもの例である。受け止めるのは、暴力をふるうところまで追い詰められた辛さであり、暴力そのものではない。もちろんその場では、まず暴力を止め、けがをさせられた子どもの安全とケアを確保する。そのうえで、ふるった子どもの話を聴く。
傾聴の技法
信頼関係を作る話の聴き方が、傾聴(アクティブリスニング)である。子どもは気持ちを受け止めてもらうことで、自分の気持ちに向き合い、話しながら問題を整理していく。
言葉以外の様子を見る
傾聴では、話の内容と同じくらい、話している様子から分かることも大切にする。目が合わない、うつむいたまま話す、辛い話を笑いながら話す、声がか細い、教師に頼りきる・反発する、服装や清潔さが気になる、といった様子を、普段の姿と比べて見る。服装や身だしなみからは、家庭での生活がうかがえることもある。ただし、同じ様子にもいろいろな理由がありうるので、見た事実と自分の推測を分けて記録し、一つの様子から原因を決めつけない。
話を引き出す技法
| 技法 | やり方 | ねらい |
|---|---|---|
| うなずきと相づち | うなずく、「うん」「なるほど」と返す。楽しい話には微笑み、悲しい話には困った顔をするなど、表情も合わせる | 聞いている、分かろうとしていることを伝える |
| くり返しと感情の反射 | 大切な言葉や、気持ちを表す言葉を短くくり返す(「寂しかったんだね」) | 分かってもらえた安心感が生まれ、自分の気持ちを少し離れて見られる |
| 確認と要約 | 「それは……ということ?」と確かめる。話があちこちに飛ぶときは「今の話を整理すると……」とまとめる | 分かったつもりで食い違うのを防ぎ、話を一緒に整理する |
| 質問 | 閉じた質問(はい・いいえで答えられる)と、開かれた質問(いつ・何が・どんなふうに)を使い分ける | 関心を伝え、子どもが気づいていなかった面に目を向ける |
開かれた質問は話を深められるが、答える負担が大きい。テキストでは、教師から呼び出した相談などで話が続かないときは、答えやすい閉じた質問を中心にし、自分から話すようになってから開かれた質問に移るとよいとしていた。ただし、閉じた質問を重ねると、こちらの思い込みに沿った答えを引き出してしまうことがある。いじめや家庭のことを聞くときは特に、「そのとき何があったの?」のように本人の言葉で話せる聞き方を大切にし、答えを誘導しない。
来談者中心療法では、相談する人から「どうしたらいい?」と聞かれても、すぐに答えを与えず、そう聞かずにいられない気持ちを受け止めるのが望ましいとされる。聴き手が代わりに結論を決め続けると、自分で考える機会が減り、頼る気持ちが強まることがあるからだ。ただ、本人が答えを見つけられず、教えることがその子のためになる場合は、指導的な態度で答えることもある。子どもが相手なら、必要な情報や選択肢は伝え、一緒に考える場面も多い。
沈黙を怖がらない
話の途中で沈黙が起きることは珍しくない。テキストは沈黙の理由として三つを挙げ、理由によって対応を変えるとしていた。どれに当たるかはすぐには分からないので、様子を見ながら判断する。
| 考えられる理由 | 様子 | 対応の例 |
|---|---|---|
| 考えている沈黙 | 質問を受けて、自分の中で考えを巡らせている | 邪魔をせず、話し始めるまで待つ |
| 話が途切れた沈黙 | 話が一段落し、お互い相手が話すのを待っている | 教師から、最後の話題をくり返して発言を待つ |
| 話すことへの抵抗 | 相談の必要を感じていない、まだ信頼できていない、知られたくない、言葉にしにくい | 話したくない気持ちも尊重する。閉じた質問を使い、結論を急がない。早めに切り上げて次の機会につなげる |
考えている沈黙を、気まずさから教師が破ってしまうのは、慣れないうちに起きやすい失敗だとテキストは述べていた。
相談の場を作る
子どもは、悩みがあってもいつも教師に相談したいと思っているわけではない。廊下での立ち話や短い休み時間でも、こちらから声をかける。そのときは、周りの子どもに悩みや相談していることを知られないよう気をつける。廊下では話のきっかけを作るだけにして、詳しい話は落ち着いて話せる場所に移るのもよい。
子どもから「先生だけの秘密にして」と言われることもある。命や安全に関わる話だった場合、その約束は守れない。秘密を無条件に約束せず、「あなたを守るために、ほかの先生に相談することがある」と、年齢に合った言葉で伝えておく。

テキストでは、相談に乗るのが上手な教師は、何気ない会話から悩みを見つけ、深刻になる前から子どもの変化を見ているとされていた。反対に、忙しさを理由に子どもに関心を向けず、問題が起きてからの相談しかしないと、日常の小さな変化や、早めに相談できる機会を見逃しやすい。
面談をするときは、座り方と距離にも気を配る。向かい合う対面式は表情を観察しやすいが、初めは緊張しやすい。横に並ぶ並行式は緊張が生まれにくいが、様子は見にくい。机の角を挟んで斜めに座る直角式は、その中間になる。子どもの緊張の程度や、本人が座りやすい位置に合わせて選ぶ。
記録を取ることに気を取られて、表情や身振りのような言葉以外のサインを見逃さないようにする。
チーム学校で支える
一人で抱え込まない
子どもが抱える問題は複雑になり、担任だけでは解決できないものも多い。中央教育審議会の「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」(2015年)は、校長のリーダーシップの下で、教員と、心理の専門家であるSC、福祉の専門家として家庭や関係機関との調整を担うスクールソーシャルワーカー(SSW)などの専門スタッフが、それぞれの専門性を生かしてチームとして子どもを支える学校の姿を示した。2017年の報告「児童生徒の教育相談の充実について」では、校内の調整役と校外との窓口を担う教育相談コーディネーターを置くことが提言されている。
チームとして支えるときの留意点として、テキストは次のことを挙げていた。
- 一人で抱え込まず、ケース会議などで同僚や管理職と情報を共有する。危険がありそうなときは、自分で対応しきれるかどうかにかかわらず、早い段階で管理職などに伝える
- 会議録や支援計画シートを作り、決まりに沿って保管する。校外への情報の漏れに注意する
- チームの中で役割と責任をはっきりさせ、情報が止まらないようにする
- 気になる子どもの情報は定期的に見直し、支援の検討に生かす
コンサルテーション
コンサルテーションは、ほかの専門分野の立場から、教師などに子どもの支援方法について助言する相談関係である。助言する側をコンサルタント、受ける側をコンサルティと呼ぶ。たとえば、担任(コンサルティ)に対して、SCや特別支援教育コーディネーター(コンサルタント)が新しい見方や情報を伝える。保護者が家庭での関わり方を担任に相談するときは、保護者がコンサルティ、担任がコンサルタントになる。
コンサルテーションは、コンサルティ自身の悩みを解決するカウンセリングとは違い、コンサルティが子どもを支える仕事について一緒に考えるものである。テキストは、そこに上下関係はなく、子どもの課題に向き合う専門家同士の対等な関係だと強調していた。
連携するときの難しさと情報の扱い
見立てがずれる理由
校外の機関と連携しても、方向性がそろわないことがある。テキストは、ずれが生じる理由として、機関ごとに拠って立つ法律や専門性が違うこと、子どもや保護者が相手によって違う姿を見せること、情報を共有する時機、どの情報を出すかの選び方を挙げていた。
一つ目について、どの機関も法律の枠を越えた仕事はできない。たとえば、病名を付けて本人に伝えるのは医療行為であり、医師にしかできない。反対に、日々の授業や生活の場面で子どもを見続けているのは教師である。「学校でできないことは何か、それを補える機関はどこか」「学校だからできることは何か」と考えることが、役割を分ける出発点になる。
テキストには、授業妨害や夜のはいかいを繰り返す子どもをめぐって、学校は施設への入所を求め、児童相談所は家庭での指導が可能と判断して、対立した例が載っていた。担任と児童相談所の職員が話し合うと、両者は同じ子どもの違う面を見ていたことが分かり、「反省している面と、まだ自制が育っていない面の両方をもつ子ども」という共通理解ができた。学校での指導と、児童相談所での短期間の宿泊指導を組み合わせる方針が決まると、保護者が安心して落ち着き、子どもも落ち着いていった。その変化が教師と児童相談所の職員の自信になり、連携がさらに進んだという。テキストはこれを、出来事が互いに影響し合う循環として捉えるシステム理論で説明し、関係の一つがうまく回り始めると、ほかもつられてうまく回ることがあるとしていた。
情報の扱い
連携のとき、子どもの情報を全て渡せばよいわけではない。テキストは、情報を重要度で四つに分けておくことを勧めていた。
校外の機関に情報を伝えるときは、目的・提供先・内容をはっきりさせて、本人や保護者の同意を得るのが基本である。ただし、命に危険が及ぶおそれがある場合や、法律に基づく場合のように、同意がなくても伝えることがある。どんな場合に同意なしで提供できるかは、学校の設置者や提供先、根拠となる法令によって違うので、個人で判断せず管理職と相談する。
虐待については別に考える。児童虐待の防止等に関する法律の第6条は、虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人に、市町村や児童相談所などへ速やかに通告する義務を定めている。命の危険がはっきりしていなくても、虐待の確証がなくても、「思われる」段階で通告する。通告は守秘義務に反しないことも明記されている。
保護者と関係を作る
保護者との関係は、普段のやりとりから作られる。学校での様子と家庭での様子を伝え合い、照らし合わせることで、子どもの理解が深まる。
一方で、学校に無理な要求をしてくる保護者への対応に悩む教師もいる。テキストは春日井・伊藤(2011)の整理を紹介し、信頼関係を作るための教師の態度として、まず働きかけをねぎらって受け止めること、無理な要求の中にどんなサインがあるかを丁寧に聴き取ること、学校と家庭のそれぞれにできることとできないことを一緒に考えること、一人で抱え込まず管理職に相談すること、などを挙げていた。
強い要求の背景に、保護者自身の不安や困りごとがある場合もある。要求に応じるかどうかは事実を確かめて学校として判断するが、子どもへの傾聴と同じように、まず聴くことから関係が始まる。
教員として考えたいこと
傾聴の技法には時間がかかるし、聴くだけでは問題が解決しないこともある。だからこそ、受容的な態度と指導的な態度を使い分け、危険がありそうなときや支援が必要だと感じたときは、早めにチームや校外の機関につなぐ。その判断ができるのも、普段から子どもの話を聴き、変化に気づいているからである。
休み時間に廊下で会った子どもに一言声をかけ、返ってきた言葉の中の気持ちを表す言葉を、一つくり返してみる。教育相談はそこから始められる。
参考:会沢信彦 編著『教育相談の理論と方法』(北樹出版)/森田健宏・吉田佐治子 編著『よくわかる!教職エクササイズ 教育相談[第2版]』(ミネルヴァ書房、2024年)/中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」(2015年)/教育相談等に関する調査研究協力者会議「児童生徒の教育相談の充実について(報告)」(2017年)/児童虐待の防止等に関する法律


