
なすことによって学ぶ ― 特別活動の指導法:三つの視点、学級会の合意形成、当番と係、学級開き
特別活動の指導法の講義で学んだ、特別活動の性格と四つの内容、目標を整理する「人間関係形成・社会参画・自己実現」の三つの視点、学級活動の合意形成と意思決定の違い、当番活動と係活動、朝の会・帰りの会、学級開きから学級目標づくりまでの進め方をまとめる。
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目次
特別活動の指導法の講義では、学級活動・児童会活動・クラブ活動・学校行事の目標と内容、そして担任として学級をどう育てていくかを学んだ。主な教材は『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編』で、スクーリングでは学級開きの挨拶文や、新しい学級の二日目の過ごし方を考える演習もあった。
特別活動とは
教科書のない時間
解説は特別活動を、様々な集団活動を通して課題を見つけて解決し、よりよい集団や学校生活を目指して行われる活動の総体だとしている。そして、人間形成を実践的に統合する全人教育としての役割を、その基本的な性格に挙げている。
特別活動には教科書がない。方法の原理は「なすことによって学ぶ」で、集団活動と実践的な活動が二つの大きな特質である。子どもが実際に話し合い、決め、協力してやり遂げる経験そのものが学びになる。
講義では、特別活動が学級経営と深く結び付いていることが繰り返し強調された。解説も、学級活動での自発的・自治的な活動が学級経営の充実につながり、各教科の学びを支える基盤になるとしている。
四つの内容
特別活動は四つの内容でできている。集団の構成や活動の目的が違い、それぞれ育てたい力にも特徴がある。
学級活動は四つの中心で、ここで身に付けた力が児童会活動・クラブ活動・学校行事で発揮され、そこで育った態度がまた学級活動に返ってくる。学級活動の年間の標準授業時数は35単位時間(1年生は34単位時間)である。
目標と三つの視点
平成29年告示の学習指導要領では、ほかの教科等と同じく、特別活動で育てる資質・能力が「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱で示された。それとは別に、資質・能力と学習過程を整理するための考え方として、「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」の三つの視点が示されている。三つの視点は互いに関わり合い、はっきり分けられるものではない。
| 視点 | 意味 |
|---|---|
| 人間関係形成 | 年齢や性別、考え方の違いを認め合い、互いのよさを生かしてよりよい人間関係を作る |
| 社会参画 | 学級や学校をよりよくする活動に参加し、集団の問題を主体的に解決しようとする。それが地域や社会への参画につながる |
| 自己実現 | 現在や将来の自分の生活の課題を見つけ、よりよく改善しようとする。自分のよさや可能性を生かす力を育てる |
旧目標の「望ましい集団活動を通して」は、新しい目標では「互いのよさや可能性を発揮しながら」と具体的に書き直された。過度な競争や同調圧力は、互いのよさの発揮とは逆の方向を向いている。いじめや不登校の未然防止という点からも、一人一人を大切にし、互いのよさを生かし合う集団活動にすることが求められている。
また、学級活動に「一人一人のキャリア形成と自己実現」が新しく加わり、特別活動は学校のキャリア教育の要として位置づけられた。
学級活動の合意形成と意思決定
議題と題材
学級活動の内容は三つある。(1)「学級や学校における生活づくりへの参画」、(2)「日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全」、(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」である。
(1)では、子どもが自分たちで生活上の課題(議題)を見つけ、学級会で話し合って、学級としての合意形成を図る。(2)(3)では、教師が年間指導計画に沿って課題(題材)を設定し、話合いを参考にしながら、一人一人が自分の取り組み方を意思決定する。
どちらも話合いが中心だが、決めるのが「学級全体」か「一人一人」かが違う。(2)の題材には、基本的な生活習慣、よりよい人間関係、健康で安全な生活、食育などがある。
多数決で終わらせない
(1)の学級会では、合意形成の意味を取り違えないようにする。合意形成では、少数意見の理由も検討し、異なる意見を基に折り合いを付けて、互いが納得して協力できる集団としての考えをまとめる。最後に多数決を使う場面があっても、理由を話し合わずに票の数だけで決めることは避ける。ほかの意見に迎合するのでも、意見をねじ伏せるのでもない形を探す。
議題には、学級全員で協力しなければ解決できない課題を選ぶ。一人一人が気をつければ解決するような課題は、学級会の議題には向かない。また、子どもに任せられないことは前もって示しておく。個人の情報やプライバシーに関わること、相手を傷付けるおそれのあること、教育課程の変更に関わること、金銭の徴収に関わること、健康・安全の面で教師が責任をもって判断すべきことなどである。たとえば、安全上の決まりは教師が示し、その範囲の中で休み時間の遊び方を話し合う、という形にする。
学級会の進め方は、初めは教師が手本を示し、少しずつ子どもに委ねていく。司会や記録の役は順番に回し、全員が経験できるようにする。進行の手順を書いたカードを用意する、二人で役を担う、意見をカードに書いて出せるようにする、など、子どもに合わせた支援や分担の工夫で参加の機会を保障する。低学年では教師の支援を手厚くし、高学年になるほど子どもに任せる範囲を広げる。
当番と係、朝の会と帰りの会
当番活動と係活動
当番活動と係活動は、どちらも学級の仕事を分担する活動だが、性格が違う。
| 観点 | 当番活動 | 係活動 |
|---|---|---|
| 性格 | 学級の生活を回すために必ず必要な仕事 | 学級の生活を、より楽しく豊かにする活動 |
| なくても生活は回るか | 回らない | 回るが、あると豊かになる |
| 分担の仕方 | 全員が順番に、平等に担う | 興味や関心で選び、グループで担う |
| 基本の姿勢 | 決められた仕事を確実に行う | 活動の内容を自分たちで工夫する |
| 例 | 日直、給食当番、掃除当番、配り当番 | 新聞係、レクリエーション係、生き物の観察を紹介する係 |
| 指導する主な学級活動の内容 | 当番の役割や働く意義について:(3)イ「社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解」 | (1)イ「学級内の組織づくりや役割の自覚」 |
当番では、自分がやらないとみんなが困るという責任を果たす経験を積む。係では、「こんな係があったら学級が楽しくなる」と子ども自身が発想し、工夫する楽しさを味わう。係を「黒板係」のような当番の言い換えにしないよう、二つを分けて説明する。生き物の世話のように、えさやりや水替えは欠かせない仕事として当番で回し、観察したことの紹介や生き物クイズのような工夫を係活動にする、という分け方もできる。

朝の会と帰りの会
朝の会・帰りの会や、給食・清掃の時間は、特別活動と深く関わる。給食の時間に計画的に行う指導は学級活動に位置づけられるが、学級活動の標準授業時数には数えない。朝の会は健康観察で一人一人の様子を確かめ、一日の見通しをもたせる場である。帰りの会は一日を振り返り、友達のよかったことを伝え合って、明日への意欲につなげる場になる。
日直の司会で回る型を作り、慣れてきたら運営を子どもに任せていく。帰りの会が失敗の追及や一方的な説教に偏らないようにし、うまくいったことや明日の見通しも確かめて、肯定的な言葉で締めくくる。深刻な問題は、帰りの会とは別に個別に対応する。
学級開きと学級目標
講義では、新しい学級の最初の数日を「黄金の三日間」と呼び、学級の土台を作る大切な時期として扱った。初日の担任の挨拶は、子どもが家に帰って保護者に話すことも多く、第一印象が家庭にも伝わりうる。ルールを初日にたくさん並べるより、約束はいくつかに絞り、詳しいことは最初の一週間で少しずつ伝える。
演習では、「クラス替えのあった5年生の担任になって二日目、午前中だけの日で、三日目から通常の授業が始まる」という設定で、二日目の午前中をどう使うかを考えた。自己紹介やレクリエーションで安心して話せる雰囲気を作り、当番と係の違いを説明して当番を決め、給食や掃除の動き、朝の会・帰りの会の型を体験させておく。そうすると、子どもは三日目以降の生活の見通しをもちやすくなる。もちろん、一度で定着するわけではないので、しばらくは繰り返し確かめていく。
ただし、学級目標をこの時期に急いで決めないよう指導を受けた。担任の願いも伝えたうえで、「どんな学級にしたいか」という子どもの思いを出し合い、学級活動の時間を使って、子どもと一緒に作っていく。
教員として考えたいこと
教科書がない分、特別活動では、担任がどんな学級にしたいかという願いと、子どもに何を任せるかの判断が問われる。全部を教師が決めてしまえば早いが、それでは「なすことによって学ぶ」機会がなくなる。
活動の評価では、話合いが盛り上がったか、行事が成功したかだけで判断しない。友達の理由を聞いて自分の案を修正できたか、決めた役割をどう果たしたか、振り返りを次の実践にどう生かしたか、といった姿を、目標と結び付けて見取る。
学級会で多数決に頼りたくなったら、少数意見の理由をもう一度聞き、両方のよさを生かす案がないかを学級に問いかけてみる。
参考:文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編』(2018年)


