
講義まとめ病弱の心理・生理・病理病弱自立活動:健康の保持(2)自立活動:心理的な安定(1)自立活動:心理的な安定(3)自立活動:人間関係の形成(4)
講義まとめ講義まとめ・病弱の心理・生理・病理病気とともに学ぶ子どもを理解する ― 病弱・身体虚弱の意味、心の揺れ、学びをつなぐ支援
病弱の心理・生理・病理で学んだ、病弱・身体虚弱という言葉の意味、対象となる主な病気、治療や生活の制限が心に与える影響と発達段階ごとの不安、入院・退院をまたいで学びをつなぐ支援をまとめる。
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病弱の心理・生理・病理の講義では、病気のために長く医療や生活の制限が必要な子どもについて、病気の種類と、それが心や学校生活に与える影響を学んだ。テキストは国立特別支援教育総合研究所の『特別支援教育の基礎・基本』のうち、病弱・身体虚弱の章である。
病弱・身体虚弱とは
「病弱」も「身体虚弱」も、医学の診断名ではなく、教育で使う言葉である。
- 病弱:病気が長く続いている、または長く続く見込みがあり、その間、医療や生活の制限が必要な状態。テキストによれば、病状が重くても、一時的な急性の病気は含まない
- 身体虚弱:生まれつき、または後から体の機能に不調があったり、病気にかかりやすかったりして、体が弱い状態
ここでいう生活の制限は、健康を保ち回復するために、運動や歩行・入浴・読書・学習などの活動、食事の内容や量を、病状に合わせて調整することを指す。
特別支援学校の対象となる程度は、学校教育法施行令第22条の3で、慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患、神経疾患、悪性新生物(がんなど)などの状態が継続して医療または生活規制を必要とする程度のもの、身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの、と定められている。ただし、学ぶ場は病名や程度だけで決まるものでもない。本人の教育的なニーズや、本人・保護者の意見を踏まえて決められる。
対象となる主な病気
文部科学省の「障害のある子供の教育支援の手引」(2021)は、病弱教育の対象となる代表的な病気として、白血病などの悪性新生物、腎臓病、気管支喘息、心臓病、糖尿病、アレルギー疾患、てんかん、心身症、うつ病などの精神疾患などを例に挙げている。テキストの説明を基に、学校生活で気をつけたいことを整理した。
| 病気の例 | 学校生活で気をつけたいこと |
|---|---|
| 小児がん(白血病など) | 治療の時期によって感染しやすくなる。薬の副作用で髪が抜けるなど、見た目が変わることがある |
| 腎臓病(ネフローゼ症候群など) | 治療の薬で顔が丸くなる(ムーンフェイス)ことがある。運動や食事の制限は主治医の指示に従う |
| 気管支喘息 | ほこりや運動、気温の変化などがきっかけで発作が起こることがある |
| 心臓病 | 運動の強さに制限がある場合がある。学校生活管理指導表で、できる運動の範囲を確かめる |
| 糖尿病 | 学校でインスリン注射や血糖の測定をする子がいる。低血糖のとき、本人が飲み込めるならブドウ糖などをとる、飲み込めないときは緊急の対応をする、という手順を主治医の指示に基づいて養護教諭と確かめておく |
| 食物アレルギー | 原因の食べ物を避ける。重い症状(アナフィラキシー)が出たときの対応を、事前に学校で決めておく |
| 心身症・精神疾患 | 繰り返す腹痛や頭痛、食事がとれないなどの体の症状として出ることがある。不登校につながることもある |
どの病気でも、同じ病名で状態が同じとは限らない。テキストは、病名に加えて、病状、治療の段階、一日の中での体調の変化、家庭や学校の環境、本人の性格や興味まで含めて、一人一人の実態をつかむことを求めていた。
テキストによれば、慢性の病気には生涯付き合っていくものも、成長とともに良くなったり治ったりするものもある。医療の進歩で短い入院で済む場合が増えたが、入退院を繰り返したり、通院を続けたりする子どもは多い。短い入院や通院でも、学習の支援が必要になる。
治療や制限が心に与える影響
体は動くのに、できない
テキストが紹介していた村上(1993)は、病気の子どもの行動が制限される仕組みを次のように説明している(原典は確認できていないので、テキストの説明による)。手足や感覚の器官はある程度保たれていても、何かをしようとするときに、治療や病状の管理のための決まりが、自分からも周りからもかかる。もちろん、痛みや疲れ、息苦しさなどで、活動そのものが難しい場合もある。
体は動くのに、治療や管理のためにやりたいことができない。この状態が続くことで、さまざまなストレスを感じる。テキストは、人は心と体がつながって釣り合いを保っているとし、心理的な負担が体の症状を悪くする場合もあると述べていた。
薬の副作用による脱毛やムーンフェイスなど、見た目の変化が劣等感につながることもある。通院や入院、服薬そのものも、心に影響する。
サインは生活のあちこちに出る
子どものストレスは、気分の落ち込みや不安に限らず、生活のさまざまな場面に出る。テキストには、食欲が落ちる、眠れない、成績が下がる、友達と遊ばない、トラブルを起こす、表情がかたい、ぼんやりしているといった例が挙げられていた。ただし、こうした変化は病状や治療、薬の影響でも起こる。心の問題と決めつけず、本人の話を聞き、養護教諭や医療者と確かめる。
心理的に不安定な状態にある子どもは、心の中で思っていることと、表に出る行動が大きく食い違うことがある。強い言葉や反発の裏に、不安が隠れていることもある。日々の様子の観察と、本人との面談の両方から、本人が自分の病気をどう受け止めているかをつかむ。
発達段階ごとの不安
病気への受け止め方や不安の中身は、年齢によって変わる。テキストに挙げられていた、それぞれの時期に見られやすい例を整理する。年齢できっちり区切れるわけでもない。時期が重なることも、本人の発達や経験によって違うこともある。
- 幼児期:入院で家族と離れることによる不安や、治療の痛み、遊びが足りないことによるストレスをためやすい。教師との信頼関係を築き、興味に沿った遊びや直接の体験を、病状に合わせて用意することが支えになる
- 学齢期:友達と競ったり協力したりしながら人間関係を広げる時期である。欠席が続くと、学習が遅れたり、クラスの中で孤立したりして、仲間から取り残される怖さが強まることがある。学習の機会を保障し、前籍校の友達とのつながりを保つことが支えになる
- 思春期:親から心理的に自立し、自分らしさを探す時期に、治療のために頼らざるを得ない。理想の自分と比べての劣等感、見た目の変化、病気の見通しや将来への不安が重なり、保護者や医療者への反発や、治療の拒否として表れることもある。本人の考えを尊重して話を聞き、負担に配慮しながら将来を考える機会を作ることが支えになる
思春期の反発を、わがままとだけ見ると対応を誤る。行動や体の変化の後ろにある課題に目を向けたい。
教育的なニーズをつかむ
国立特別支援教育総合研究所の「病気の子どもの教育支援ガイド」(2017)は、慢性の病気のある子どもの教育的ニーズを、学習面、自己管理、対人面、心理面、連携の5つのカテゴリー、14の項目に整理している。例えば学習面には、学習指導、前籍校、経験、進路の4項目がある。
心の病気のある子どもについては、同じ研究所の「Co-MaMe ガイド」(2024)が、心理、社会性、学習、身体、学校生活、自己管理の6つのカテゴリー、40の項目に整理している。子どもの状態に合わせて、受容期、試行期、安定期という支援の時期を考え、複数の教職員で話し合って支援をそろえていく方法である。
つかんだ内容は、授業での目標や手立てをまとめる個別の指導計画に書き、教員の間で共有する。家庭や医療機関、前籍校との連携は、個別の教育支援計画で整理する。共有する相手と情報の範囲は、本人・保護者の意向を確かめて決める。
学びの場と、学びをつなぐ工夫
学びの場は移っていく
病気の子どもが学ぶ場には、特別支援学校(病弱)、病院の中に置かれた小・中学校の特別支援学級、小・中学校の校舎内の特別支援学級、通級による指導、通常の学級がある。病状が重くて通えない子どもには、教員が病室に出向いて授業をしたり、教室の授業をオンラインで届けたりする。よく聞く「院内学級」は、病院の中にある教育の場をまとめて呼ぶ言い方で、正式な用語ではない。
入院すると、前の学校(前籍校)から転校して病院の中の学校で学び、退院すると前籍校に戻る、という流れが一つの例である。転校せずに在籍校からオンラインで授業を受ける場合や、退院後もしばらく自宅で療養する場合もあり、入退院を繰り返す子どももいる。
場が移るたびに、学習の進み具合や人間関係が途切れやすい。前籍校と病院の中の学校が、学習の状況や友達との関係、復学後の配慮について連絡を取り合うことが欠かせない。
学習の空白を埋める
病気の子どもは、授業時数の制約、学習の空白、体を動かす活動の制限、経験の偏り、不安による意欲の低下などを抱えやすい。テキストが挙げていた工夫は次のとおりである。
- 授業時数が限られるので、基礎的・基本的な内容に重点を置いて指導内容を精選し、教科どうしを関連させる
- 実験や見学など直接できない体験は、映像やシミュレーション、オンラインでの見学などの間接的な体験で補う
- 少人数の学級では、複数の学年の合同授業や、オンラインでほかの学校の子どもとつながる授業で、話し合いの機会を作る
- 学習が負担過重にならないように、かといって必要以上に制限もしないように、医療と連携して最新の病状をつかむ
オンラインの授業については、2018年の文部科学省の通知で、小・中学校の病気療養児に同時双方向型の授業を配信した場合、一定の条件の下で指導要録上の出席扱いにできるようになった。2023年には、オンデマンド型の授業配信などについても、一定の要件の下で出席扱いにでき、学習の成果を評価に反映できることが示された。
自分の体と付き合う力を育てる
退院した後も、治療や生活の制限は続くことが多い。自分の病気の状態や、薬や食事、休むことの意味を理解し、体調を自分で管理していく力は、病状の悪化を防ぎ、主体的に社会に参加していくために必要になる。自立活動では、「健康の保持」の区分の「病気の状態の理解と生活管理に関すること」などで扱う。小学生なら、体調の変化を言葉で伝える、休みたいときに頼む、困ったら大人に相談する、といったことから、大人と一緒に少しずつ進める。きちんと管理していても病状が悪くなることはあり、悪化を本人の責任にしない。
自己管理を続けるうえで、家族や友達、医療者から、励ましや、実際の手助け、役に立つ情報を受け取れることが支えになるとテキストは述べていた。
通常の学級で気をつけたいこと
通常の学級にも、病気のために配慮が必要な子どもは多く在籍している。
- 慢性の病気には見た目では分かりにくいものがあり、周りの子どもから誤解や偏見を受けることがある
- 服薬やインスリンの自己注射など、周りと違う動きをしなければならない子がいる。どれも命を守るために欠かせないことである
- 紫外線を避ける必要がある色素性乾皮症の子どもの場合、テキストでは、教室の窓に紫外線を防ぐフィルムを貼るなどの整備で、小・中学校で学べるようにした例が挙げられていた。必要な対策は病状や校内の動線によって違うので、本人・保護者・医療者と相談して決める
周りの子どもにどこまで伝えるかは、本人と保護者の意向を確かめてから決める。主治医や学校医の意見も聞き、校内で対応をそろえておく。
教員として考えたいこと
テキストは、治る見込みのある治療がなくなり、死が近づいている時期(ターミナル期)の子どもへの支援にも触れていた。否定的な気持ちも受け止めて信頼関係を作り、その子にとって大切な人や物とのつながりを保ち、希望の実現に協力することが大切だとされていた。
小学校の担任として私がまず意識したいのは、入院した子とのつながりを切らないことである。学級の様子を伝える手紙やオンラインのやりとりを続け、復学の前には、本人と保護者、病院の中の学校の先生と、体育や給食、休み時間の過ごし方をどうするかを話し合っておきたい。