
わり算 ― 同じ式に隠れた「2つの分け方」をどうつなぐか
3年「わり算」の教材研究。等分除と包含除の違いと、それが同じ式12÷3になるわけを、かけ算の逆算・累減・「1こずつ配る」操作から整理する。単元計画、第1時の展開、発問、つまずき、評価規準、板書計画まで。
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目次
1. 単元の位置づけ
学習指導要領のねらい
第3学年「A数と計算」(4)除法。示されている内容を整理すると次のようになる。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 知識及び技能 | 除法の意味について理解し、それが用いられる場合について知る。また、余りについて知る |
| 知識及び技能 | 除法が用いられる場面を式に表したり、式を読み取ったりする |
| 知識及び技能 | 除法と乗法や減法との関係について理解する |
| 知識及び技能 | 除数と商がともに1位数の除法の計算が確実にできる |
| 知識及び技能 | 簡単な場合について、除数が1位数で商が2位数の除法の計算の仕方を知る(80÷4、69÷3 など) |
| 思考力、判断力、表現力等 | 数量の関係に着目し、計算の意味や仕方を考え、計算に関して成り立つ性質を見いだして活用する。計算を日常生活に生かす |
| 用語・記号 | ÷ |
解説では、とくに次の3点が強調されている。
- 2つの場面:包含除は操作が易しく、「除く」という意味に合う。等分除は「割り算」という言葉の意味から分かりやすい。導入ではこの特徴を踏まえて扱う。
- 統合的に捉える:等分除の「1こずつ配る」操作は、包含除の「3こずつ配れる回数」とみることができる。だから、どちらも同じ式で表せることが分かるようにする。
- 式と場面をつなぐ:言葉・図・具体物の操作と式を関連付け、÷を使った式の簡潔さを味わわせる。反対に、15÷3 の式から問題場面をつくるなど、式を読む活動も大切にする。
学習の系統
| 学年 | 学ぶこと | わり算とのつながり |
|---|---|---|
| 2年 | かけ算の意味、九九 | (1つ分)×(いくつ分)=(全体)。この式の□を求めるのがわり算 |
| 3年 | わり算(除数・商が1位数) | 等分除と包含除、かけ算の逆算、累減。教科書では0や1のわり算も扱う |
| 3年 | 簡単な、商が2位数のわり算 | 80÷4(10が8こ÷4)、69÷3(60÷3と9÷3)のように、単位の考えや分けて考える |
| 3年 | あまりのあるわり算 | 13÷4 のように割り切れない場合。あまりは除数より小さい |
| 3年 | 何倍かを求める・基にする大きさを求める | 何倍かを求める場合は包含除、基にする大きさを求める場合は等分除とみて、同じわり算で求める |
| 4年 | 2位数・3位数÷1位数、÷2位数、小数のわり算 | 3年の「九九1回で商を求める計算」が土台になる |
3年のわり算で、たし算・ひき算・かけ算・わり算の四則がそろう。ここで身に付けた「九九を1回使って商を求める計算」は、4年以降の筆算や小数のわり算の土台になるため、確実にできるようにしておく必要がある。
この記事の単元計画・評価規準は、余りのないわり算の導入単元を対象にしている。余りのあるわり算や商が2位数のわり算は、後の単元として扱う教科書が多い。
2. 教材の本質
2-1. 同じ式、違う意味
「12このあめを3人で同じ数ずつ分けると、1人何こ?」 「12このあめを1人3こずつ分けると、何人に分けられる?」
どちらも答えは4、式はどちらも 12÷3=4 になる。けれど、求めているものが違う。
| 等分除 | 包含除 | |
|---|---|---|
| 場面 | 12こを3人で同じ数ずつ分ける | 12こを1人3こずつ分ける |
| 先に分かっているもの | 分ける人数(3人) | 1人分の数(3こ) |
| 求めるもの | 1人分の数 | 分けられる人数(いくつ分) |
| 答え | 4こ | 4人 |
| かけ算で表すと | □×3=12 | 3×□=12 |
| 操作 | 3人に同じ数ずつ配っていく(1こずつ配るなど) | 3こずつ取っていく |
スプレッドシートに =12/3 と入力すれば、4 が返ってくる。けれど、数と記号だけの式からは、その4が「1人分の数」なのか「分けられる人数」なのかは分からない。問題文や図に戻って初めて決まる。式は文脈を記憶しない。 だからこそ、式の裏にある場面を読み取る力と、答えに単位(こ・人)を付けて場面に戻す習慣が必要になる。
2-2. どちらから導入するか
解説は、2つの場面の特徴を次のように整理している。
| 等分除 | 包含除 | |
|---|---|---|
| 操作 | 少し複雑(何人に配るかを考えながら、同じ数になるように配る) | 易しい(3こずつ取っていけばよい) |
| 言葉との対応 | 「割る」「分ける」に合う | 「除く」に合う |
どちらから入るかは、使う教科書の構成を確かめておきたい。どちらから入るにしても、2つめの場面に出会ったときに「さっきと何が違う?」と短く比べ、のちの時間に「これも同じわり算でいいの?」と操作から確かめる。2つの場面を同じ式でつなぐ時間が、この単元のいちばんの山場になる。
2-3. 「1こずつ配る」操作が2つをつなぐ
等分除の場面で、12このおはじきを3人に1こずつ配っていく。ここでは、3人全員に1こずつ配る一巡を「1回」と数える。1回配るたびに、残りは3こずつ減っていき、4回配ったところでちょうどなくなる。
このとき「配れた回数(4回)」は「1人分の数(4こ)」と同じである。そして、1回ごとに減った「3こ」をひとまとまりと見れば、12こは3このまとまり4つ分になる。これは包含除の「3こずつ分けると4人」と同じ構造である。
2-4. かけ算の逆算としてのわり算
2年では、かけ算を(1つ分の大きさ)×(いくつ分)=(全体)と学んできた。わり算は、この式の□を求める計算とみることができる。
| 型 | 式 | 求めるもの |
|---|---|---|
| 等分除 | □×3=12 | 1つ分の大きさ |
| 包含除 | 3×□=12 | いくつ分 |
どちらの場合も、答えはわる数(3)の段の九九で見つけられる。等分除の□×3=12は、4の段で「4×3=12」と見つけてもよい。かけ算のきまり(かける順番を入れかえても答えは同じ)を使えば3×□と同じになるので、どちらの場合も3の段で効率よく見つけられる、と整理していく。
「わり算の答えは、わる数の段の九九で見つかる」ことは、計算の確かめ(4×3=12 になるか)にもつながる。ただし0÷3のように、わられる数が0の場合は、九九ではなく場面やかけ算との関係(□×3=0)から考える。
2-5. ひき算とのつながり(累減)
12÷3 の答えは、12から3を何回ひけるか、ともみられる。
12 − 3 − 3 − 3 − 3 = 0 (3を4回ひけた)
これは包含除の「3こずつ取っていく」操作をそのまま式にしたものである(上の図の数直線)。九九がまだ不安定な子にとっては、答えを見つけるための手がかりにもなる。
2-6. 式を読む・式から問題をつくる
学習指導要領は、式に表すことと同じくらい、式を読み取ることを重視している。
- 15÷3 の式から、「みかんが15こあります。1人に3こずつ分けると何人に分けられますか」という問題をつくる。
- 同じ 15÷3 で、等分除の問題もつくれるか考える。
式から場面をつくる活動は、子どもが等分除と包含除の違いを理解しているかを見取る評価の場面にもなる。ただし、書いて問題をつくることが難しい子もいる。いくつかの場面カードから「15÷3になる場面」を選ぶ、口で説明する、などの方法でも理解を見取れるようにしたい。
2-7. 0や1のわり算
| 式 | 場面の例 | 答え |
|---|---|---|
| 6÷6 | 6このあめを6人で同じ数ずつ分ける | 1 |
| 6÷1 | 6このあめを1人で分ける | 6 |
| 0÷3 | 0このあめを3人で同じ数ずつ分ける | 0 |
形式的に覚えさせるのではなく、場面を思い浮かべて答えを考えさせたい。とくに 0÷3 は、空の皿を3枚並べ、「あめがない」場面を想像すると納得しやすい。なお、ここで扱う0は「わられる数」である。0でわる計算は、ここでは扱わない。
3. 単元計画(例)
時間数や順序は、使用する教科書と学校の年間計画に合わせて調整する。あまりのあるわり算は、別の単元として扱う教科書が多い。
| 次 | 時 | 主な学習活動 | 押さえどころ |
|---|---|---|---|
| 1 1人分はいくつ | 1 | 12このあめを3人で同じ数ずつ分ける(おはじきで操作) | 「同じ数ずつ」の意味、いろいろな配り方 |
| 2 | 等分除の場面を÷の式に表し、答えを九九で見つける | ÷の記号、わられる数・わる数、□×3=12 | |
| 2 いくつ分はいくつ | 3 | 12このあめを1人3こずつ分けると何人に分けられるか | 3こずつ取っていく操作。第1時の場面と何が違うかを短く比べる |
| 4 | 包含除の場面を式に表し、答えを九九で見つける | 3×□=12、累減 12−3−3−3−3=0 | |
| 3 2つのわり算 | 5 | 2つの場面を比べ、同じ式になるわけを考える | 1回(一巡)で3こ減る。最後に10÷2など別の数で確かめる |
| 6 | わり算の答えの見つけ方を整理する | わる数の段の九九、答えの確かめ | |
| 4 いろいろなわり算 | 7 | 0や1のわり算 | 場面を思い浮かべて考える |
| 8 | 式から問題をつくる | 等分除・包含除の両方の問題 | |
| まとめ | 9〜10 | 練習、振り返り | 答えに単位を付けて場面に戻す |
4. 第1時の展開:12このあめを3人で分けよう
めあて:同じ数ずつ分ける方法を考えよう
| 学習活動 | 予想される子どもの反応 | 教師の手立て |
|---|---|---|
| 1. 問題場面をつかむ | 「3人で分けるんだね」「けんかにならないように」 | 「同じ数ずつ」の言葉に線を引き、全員で意味を確かめる |
| 2. 見当を付ける | 「3こくらい?」「5こかな」 | 予想を板書し、確かめたいという気持ちを引き出す |
| 3. おはじきで分ける | 1こずつ配る/2こずつ配る/まず3こずつ配って残りを配る | おはじきと3枚の皿を配る。どの分け方も取り上げるが、「全部配り切ったか」「どの皿も同じ数か」を必ず確かめる。図をかくのが負担な子には、皿の写真を撮る・指で示すなども認める |
| 4. 分け方を発表し合う | 「1こずつ配ると4回で終わった」「どの分け方でも4こになった」 | 分け方の違いと、結果が同じことを板書で並べる |
| 5. 確かめる | 「どの皿も4こ」「4こが3人分で12こ」 | 皿ごとに数を数えて同じかを確かめ、さらに 4×3=12 で全部の数とも合うことに気付かせる |
| 6. 振り返る | 「1こずつ配ると、ちゃんと同じ数になる」 | 次時は「式に表す」ことを予告する |
まとめ:同じ数ずつ分けるときは、1こずつなど、どの人にも同じ数ずつ配っていくとよい。12このあめを3人で同じ数ずつ分けると、1人分は4こ。
5. 発問集
6. 想定されるつまずきと手立て
| つまずき | 考えられる背景 | 手立て |
|---|---|---|
| 「3人で分ける」と「3こずつ分ける」を取り違える | 数だけを見て何を求めるかを読んでいない、文章の読み取りが難しい、など | 「分かっていること」「求めること」を、線を引く・カードで分けるなどして区別させ、おはじきや図で確かめる |
| 12÷3 を 3÷12 と書く | 式の順番の意味があいまい | 「わられる数は、はじめにある全部の数」と場面で確認する |
| 答えの単位を間違える(包含除で「4こ」) | 式から場面に戻っていない、助数詞の使い分けがあいまい、など | 「4って何の数?」と問い返す。答えの文は穴埋めにする、単位カードを選ぶ、口で答えるなども認める |
| 求めた答えが場面に合うか確かめられない | かけ算との関係がつかめていない | □×3、3×□ の式を横に書かせ、答えを入れて全部の数になるか確かめる。4の段で見つけた子の方法も認めたうえで、3の段でも見つけられることを整理する |
| 分けた結果が同じ数になっていない | 「同じ数ずつ」の意味があいまい、配る順番や配った数を覚えておくのが難しい、数え間違い、など | 1こずつ配る方法を全員で確かめる。皿を置くマットで配る先を固定し、一巡ごとに印を付ける。最後に皿ごとの数が同じか、全部で12こかを確かめる |
| 0÷3 を3、3÷3 を0 とする | 場面を思い浮かべずに形式で考える | 0÷3は空の皿3枚、3÷3は3このおはじきを3枚の皿に配る操作をして、場面に戻して考えさせる |
| 九九が出てこない | 2年の九九が定着していない | 単元前に九九の復習を入れる。九九表を手元に置き、累減で答えを確かめる方法も認める |
7. 評価規準(例)
学習指導要領の内容をもとに作成した例。
| 観点 | 評価規準 | 見取る場面の例 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 除法の意味や、除法が用いられる場合(等分除・包含除)について理解している。除法と乗法・減法の関係を理解している。除数と商がともに1位数の除法の計算が確実にできる | 等分除と包含除の文章題を立式し、答えに合う単位を付ける(第2・4時、まとめ) |
| 思考・判断・表現 | 数量の関係に着目し、等分除と包含除が同じ式で表せるわけを、操作や図、かけ算の式を用いて考え、説明している | 第5時で、配る操作の図と式を対応させて説明する。説明は口頭・指さし・図への囲みでもよい |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 答えを確かめたり、式から問題をつくったり、身の回りの「分ける」場面に当てはめたりして、学習したことを生かそうとしている | 答えをかけ算で確かめ直す様子(毎時)、式から問題をつくる活動(第8時)、教室の物を同じ数ずつ分ける場面 |
8. 板書計画(第5時:2つのわり算を比べる)
| 左:等分除 | 中央:比べる | 右:包含除 |
|---|---|---|
| 12このあめを3人で同じ数ずつ | めあて「2つのわり算をくらべよう」 | 12このあめを1人3こずつ |
| おはじきを1こずつ配る図 | どちらも 12÷3=4 | 3こずつ囲む図 |
| □×3=12 → 1人分は4こ | 3人に1こずつ配る → 1回で3こ減る → 4回 | 3×□=12 → 4人 |
| ちがい:何を求めているか(1人分/何人) |
中央に共通の式と、2つをつなぐ「1回で3こ減る → 4回」を置く(上の「1回配るたびに3こずつ減る」図のように、配る前・途中・配り終わりを並べてもよい)。求めるもの(1人分・人数)は色チョークに加えて、「分かっている」「求める」の言葉や枠の形でも示し、色が見分けにくい子にも「同じところ」と「ちがうところ」が分かるようにする。
9. 準備物
- おはじき(1人12こ以上)と皿3枚。班で使う場合は人数分
- 黒板用のマグネットおはじき、場面の絵(あめ・子ども)
- 九九表(必要な子の手元に)
- 式から問題をつくるワークシート
10. 実践に向けたメモ
小学校の実習で研究授業をした算数「重さ」の計算では、「式に800とだけ書いてあったら、800gか800kgか分かる?」と問い、式の数が何を表しているか(単位)を意識することを押さえた。わり算でも同じことが言える。12÷3=4 の「4」は、4こなのか、4人なのか。式と場面を行き来し、答えに求めた数量に合う単位を付けて場面に戻す習慣は、学年や単元をこえて大切にしたい。
わり算は、子どもにとって日常の「分ける」を数式にする初めての経験だ。たし算に「合わせる」と「増える」、ひき算に「残りを求める」と「違いを求める」があったように、わり算にも同じ式の裏に2つの分け方がある。わり算では、とくに「1つ分」と「いくつ分」のどちらを求めるかに着目させたい。だからこそ、おはじきを配る手の動きから式までを、ていねいに往復させたい。
参考:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編(文部科学省)第3章第3節「第3学年の目標及び内容」A(4)除法
